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労働者の過半数代表者とは

Last Updated on 2023年8月9日 by

過半数代表者とは

過半数代表者は、労働組合のない会社等が労使協定を結ぶときなどに必要になります。

労使協定を締結するときに、過半数で組織されている労働組合があれば労働組合の代表者が労使協定の締結者になります。労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者を選出しなければなりません。

過半数代表者は、会社に一人とは限りません。支店、工場等の複数の事業場がある場合は、それぞれの事業場ごとに選出しなければなりません。(規模の小さな事業場は除外されることがあります。)

過半数代表者の任期は、法律上の定めはありませんが、あまり長期にならない方がよいでしょう。通常は1年です。

労働基準法施行規則第六条の二
法(略)に規定する労働者の過半数を代表する者(以下この条において「過半数代表者」という。)は、次の各号のいずれにも該当する者とする。
一 法第四十一条第二号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと。
二 法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。
② (略)
③ 使用者は、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
④ 使用者は、過半数代表者が法に規定する協定等に関する事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならない。

管理職の扱いに注意

経営者や労働基準法41条2号に規定する管理監督者は過半数代表者になることはできません。

管理監督者とは、一般的には支店長や工場長など、労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある人をさします。

管理職と管理監督者は同じではありませんから、管理職であっても管理監督者ではないという理由で過半数代表者になることも可能です。ただし、一般的には、管理職は会社で指導的立場にあるので、代表にはならない方が無難です。

親睦会の代表者を自動的に過半数代表者にすることはできません。

適切な選出をして、結果として親睦会の代表者である人が選出されたのであれば問題ないという考えもありますが、やらない方が無難です。

関連記事:管理監督者の定義と役割

選出の目的を明示する

「法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして」選出することが必要です。つまり、労働基準法上のどの規定に基づく代表者の選出なのかを明らかにして選出しなければなりません。

選出してもらう前に、就業規則、36協定など対象となる労使協定等を列記した文書を作成して示したほうがよいでしょう。その際、「その他の労使協定」などという表現は適切ではありません。具体的に列記しましょう。

選出の仕方が重要です

過半数代表者の選出が適正に行われていないと、労使協定を締結しても無効になることがあるので注意が必要です。

挙手や拍手による決定が多いと思いますが、半強制的であったなど、民主的でなかったということになれば、締結した労使協定が無効になってしまうリスクがあります。

使用者が提示した候補者に対して信任するかどうかを問い、過半数が賛成すれば決定するという方法もよく見られるところですが、労働者の自薦他薦を制限しているのであれば「使用者の意向に基づき選出された」とみられる可能性があります。

いずれの方法による場合でも、代表に選出することができない管理監督者も選挙権は有します。また、正社員だけが過半数代表者を選ぶ権利を持っているわけではありません。パートタイマーやアルバイト、契約社員など名称に関係なく、全ての従業員に選挙権があります。ただし、派遣社員は対象になりません。

選出方法の例

例1 投票による選出

掲示等により一定の期間を定めて立候補(推薦を含む)を募り、無記名投票による選挙を行います。立候補者が一人の場合は〇×記載による信任投票を行います。投開票手続きは厳格に行い、投票結果を速やかに周知します。

告示の例

従業員代表の選出を次のように行いますのでよろしくお願いいたします。

1.従業員代表の役割
今回選出をお願いする従業員代表は、選任後1年間、当社の就業規則等の規程の制定や変更に関する意見の表明、時間外労働や休日労働などの会社と締結する労使協定の締結、衛生委員会等の委員推薦などにおいて、労働者の過半数を代表するものとしての役割を果たしていただくものです。

2.立候補の受付
立候補の受付は、令和 年 月 日より 日までの〇日間です。立候補される方は期間内に総務部に申し出てください。口頭、書面、メール(xx@xxxxx.co.jp)等の手段を問いません。

3.投票
投票は、令和 年 月 日に行います。投票所は下記の〇ヶ所に設置します。投票所で投票用紙を受け取り、投票箱に投票してください。同日〇時に開票します。 投票所 総務部 工場正面玄関

4.被選挙権
令和 年 月 日の時点で直接雇用されている全ての従業員は、雇用契約の内容に関わらず立候補することができます。ただし、管理監督者を除きます。

5.選挙権
令和 年 月 日の時点で直接雇用されている全ての従業員は、雇用契約の内容に関わらず、管理監督者を含めて投票することができます。

6.事務局
投票の事務は総務部〇〇〇〇を責任者として総務部が行います。不明のことがあれば〇〇〇〇へ申し出てください。

例2 挙手による選出

労働者による会議を開き、その場で話し合いをし、挙手による多数決で選出します。ただし、この方法は後日になれば民主的な方法で選出を行ったかの証明が難しいのが欠点です。

この方法による場合は、会議の日付時間、場所、出席者名、議事の進め方、出席者それぞれの発言の概要を含む議事録を作成し、複数の出席者の署名を得ておきましょう。

例3 回覧による選出

掲示等により一定の期間を定めて立候補(推薦を含む)を募り、候補者名を記載した文書を回覧し、署名をもらって決定します。決定された過半数代表者を速やかに周知します。この場合も、関係文書等を保存して将来問題にされたときも適正であったことをすぐに提示できるようにしておきましょう。

規程をつくる

適正な選出をするために、規程をつくって運用しましょう。

過半数代表者選出規程(小規模企業用)

過半数代表者選出規程(大規模企業用)


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