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懲戒処分

出勤停止処分をするときの注意点

Last Updated on 2023年5月21日 by

出勤停止処分とは

出勤停止処分とは、懲戒処分の一つで、一定期間、従業員の就労を禁止して、事業場へ入場させない処分です。

懲戒解雇の一つなので処分決定の手続きは厳正に行わなければなりません。例えば、本人の弁明機会を省略すれば手続きの相当性を欠くとして無効になる場合もあります。懲戒処分をするときの注意点のページの「懲戒処分の条件」の項を参考にしてください。

出勤停止の日数

出勤停止の期間については、明確な法律上の規制はありませんが、おのずと常識的な限度はあると考えられます。一般的には「7日」が多く「10日」「15日」もあるようです。

一概には言えませんが、解雇と違って、反省してもう一度会社で頑張って貰おうという趣旨ですから、長くすれば良いというものではないでしょう。数日から1週間程度が妥当ではないでしょうか。非違行為の内容に比して著しく長い出勤停止は処分が過酷すぎるとして無効になる可能性があります。

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なお、日数を指示するにあたっては、従業員が誤解しないように明確にしなければなりません。

例えば「8月1日より10日間の出勤停止を命ずる」という通知であれば、その期間中に含まれる休日をどうするのか分かりにくいため、「8月1日より会社の休日を除いて10日間の出勤停止を命ずる」などとします。

出勤停止は労働日に対して科すものであり、会社の休日のように労働義務がない日を対象するのは矛盾するからです。

出勤停止中の賃金

出勤停止処分中は賃金を支給する必要はありません。戒めるための処分なので、むしろ有給の方が問題があるでしょう。

出勤停止処分の結果により減給にっても労働基準法第91条(減給の制限)は適用されません。

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また、有給休暇を使いたいと申出があっても、そもそも有給休暇は、休養し仕事からくる疲労を回復するための制度ですから、有給休暇の趣旨を逸脱しているということで拒否できます。

控除される賃金額の計算方法について、明確な法律上の規制はありません。平均賃金を用いる場合が多い様ですが、そのことも就業規則に明記しておきましょう。

出勤停止中の行動制限

出勤停止処分は会社に来ないことを義務付けるものです。江戸時代の閉門蟄居のような謹慎を命じることはできません。

自宅待機との違い

出勤停止処分と自宅待機の違いに注意してください。

自宅待機は、懲戒相当のことをした従業員に、処分が決まるまで引き続き業務を担当させるわけにはいかない、調査を円滑に実施するために職場から引き離したい、などの理由により、処分が決定するまでのあいだ処分の調査のために出勤を禁止するものです。

この用語をあいまいに使っていると、会社の思うところは「自宅待機」であったとしても、懲戒処分の「出勤停止」と見なされることがあります。

出勤停止処分だと見なされれば、すでに処分を科したということになるので、解雇等の別な懲戒処分を科すことができなくなります。二重処分ということになるからです。自宅待機を命じるときは、調査のための待機であることを明確にしなければなりません。

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ポイントの1つは賃金です。懲戒処分の一つとして行われるの出勤停止処分の期間は賃金を支払わないのが普通ですが、自宅待機命令は不正行為の有無の調査など業務命令の一環として行うものですから賃金の支払いが必要です。

調査をしている段階では従業員に不正があると決めつけるわけにはいかないので、給与全額を支払う必要があります。

ただし、就業規則や労働契約に、調査のための自宅待機期間には休業手当相当の金額を支払う旨が明確に定められている場合には、平均賃金の60%以上の金額にすることは可能です。

懲戒処分を予定している者に賃金を支払うのは納得できないかも知れませんが、賃金を支払うことで、この自宅待機が懲戒として行ったものでない証明になります。

また、自宅待機の期間が長期間にならないように注意してください。必要以上の長期間の自宅待機は、事実上の懲戒処分とみなされる可能性があります。

また、賃金の60%を適用する場合には、安易に自宅待機を命じることがないように注意が必要です。実質40%の賃金カットをする結果になってしまうので、必要性が乏しい自宅待機を命じたと認められれば、処分無効に発展するリスクがあります。

出勤停止処分の基準

何をどれくらいすれば出勤停止処分の対象になるのかという基準を、就業規則で決めておく必要があります。

就業規則記載例
(戒告、減給又は出勤停止処分)
第〇条 会社は従業員に対し懲戒処分をすることがある。従業員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、戒告、減給又は出勤停止とする。
(1)正当な理由なく無断欠勤〇日以上に及んだとき
(2)正当な理由なくしばしば欠勤、遅刻、早退するなど勤務を怠ったとき
(3)過失により会社に損害を与えたとき
(4)素行不良で会社内の秩序又は風紀を乱したとき
(5)第〇条から第〇条の規定に違反したとき
(6)その他、前各号に準ずる不都合な行為があったとき

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