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安全衛生管理

4つのメンタルヘルスケア

Last Updated on 2021年7月27日 by

メンタルヘルスケアは、以下の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要です。厚生労働省が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に沿って説明します。

1.セルフケア

心の健康づくりを推進するためには、従業員自身がストレスに気づき、これに対処するための知識、方法を身につけ、それを実施することが重要です。

ストレスに気づくためには、従業員がストレス要因に対するストレス反応や心の健康について理解するとともに、自らのストレスや心の健康状態について正しく認識できるようにする必要があります。

このため、事業者は、従業員に対して、セルフケアに関する教育研修、情報提供を行い、心の健康に関する理解の普及を図る必要があります。

また、相談体制の整備を図り、従業員自身が上司や職場内産業保健スタッフ等に自発的に相談しやすい環境を整える必要があります。ストレスへの気づきのために、セルフチェックを行う機会を提供することも効果的です。

また、上司自身にとってもセルフケアは重要です。事業者は、セルフケアの対象者として上司も含める必要があります。

例えば次のような対応を

自分のメンタル不調は自分が一番早く気がつくはずです。しかし、仕事が忙しい、休みたくない、病気が怖い、などの気持ちから先送りしてかなり悪化してから手を打つことが多いようです。悪化してからだと回復に時間がかかります。

そこで、まずメンタル不調にならないための心がけが大事です。自分はならないという気持ちを捨てて、誰でも油断すればなるという自覚をもって、下記のことを心がけることでメンタル不調を避ける可能性が高まります。

睡眠をチェック
必要な睡眠時間を確保する

飲酒をチェック
できれば飲まない、飲んでも飲みすぎない、休肝日を設定

運動をチェック
運動の習慣をつくる。毎日の散歩、ラジオ体操、スポーツジムへ通う

などなど。

職場で行われるストレスチェックを活用しましょう。調査票には正直に事実を記入しましょう。高ストレスと判定されると、面接指導を申し出ることができます。せっかくの機会だととらえて積極的に受けましょう。

2.ラインによるケア

上司は、部下である従業員の状況を日常的に把握しているので、個々の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることができる立場にあります。

したがって、上司は、職場環境等の把握と改善、従業員からの相談対応を行わなければなりません。

上司がこの役割を適切に行うことができるように、事業者は、上司に対して、ラインによるケアに関する教育研修、情報提供を行う必要があります。

なお、業務を一時的なプロジェクト体制で実施する等、通常のラインによるケアが困難な業務形態にある場合においても適切なケアが行われるように、指揮命令系統の上位にいる者等によりケアが行われることも必要です。

従業員の心身の不調に、まず対応する立場にあるのは直属の上司です。管理職に対し、部下の心身の状態をそれとなく把握することが仕事の一部であることを理解させ、まだ、どのようにコミュニケーションをとればよいか、研修などよって理解を深めていく必要があります。

基本は、よく話しを聞くことであり、決して説教をしないことです。そして、相談者のプライバシーを守ることに注意し、相談者との信頼関係を損なわないようにしましょう。そして、上司の大きな役割は、メンタルヘルス担当者へ正確に繋ぐことです。要点を記憶またはメモをして、本人と一緒に申出の要点を確認しましょう。

これから対策を始める会社であれば、まず管理職研修から入るのが一般的だと思われます。単発ではなく、定期的に、出来れば毎年実施することが望ましいのはもちろんのことです。

研修を実施しても、実際に問題に直面すると、いろいろと対応に迷う場面が出てくるものなので、管理職を支援する仕組みをつくる必要があります。具体的には、さらに上の上司への報告相談をルール化することや、上の上司にメンタルヘルス担当者を加えた3者協議の場を作ることをルール化することも考えられます。

管理職は往々にして数字をあげることが自分の役割だという意識がありますが、これからは、会社と共に従業員の健康や安全を確保することが役割の一つであることを認識する必要があります。

3.職場内スタッフ等によるケア

職場内の産業保健スタッフ等は、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、次のことを実施します。

① 従業員及び上司に対する支援
② 心の健康づくり計画に基づく具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
③ メンタルヘルスに関する個人の健康情報の取扱い
④ 職場外資源とのネットワークの形成やその窓口となる

等、心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を果たします。

このため、事業者は、職場内産業保健スタッフ等によるケアに関して、次の措置を講じる必要があります。

① 職務に応じた専門的な事項を含む教育研修、知識修得等の機会の提供を図ること。
② メンタルヘルスケアに関する方針を明示し、実施すべき事項を委嘱又は指示すること。
③ 職場内産業保健スタッフ等が従業員の自発的相談等を受けることができる制度及び体制を、それぞれの職場内の実態に応じて整えること。
④ 職場内メンタルヘルス推進担当者を、職場内産業保健スタッフ等の中から選任するよう努めること。職場内メンタルヘルス推進担当者は、産業医等の助言、指導等を得ながら職場のメンタルヘルスケアの推進の実務を担当する。
⑤ 職場内メンタルヘルス推進担当者としては、衛生管理者等や常勤の保健師等から選任することが望ましいこと。なお、職場の実情によっては、人事労務管理スタッフから選任することも考えられる。
⑥ 一定規模以上の職場にあっては、職場内に又は企業内に、心の健康づくり専門スタッフや保健師等を確保し、活用することが望ましい。
⑦ 事業者は心の健康問題を有する従業員に対する就業上の配慮について、職場内産業保健スタッフ等に意見を求め、また、これを尊重する。

事業場内産業保健スタッフとは、産業医等、衛生管理者等及び事業場内の保健師等をいいます。事業場内産業保健スタッフ等とは、事業場内産業保健スタッフ及び事業場内の心の健康づくり専門スタッフ、人事労務管理スタッフ等をいいます。なお、このサイトでは「職場内」という表現を多く用いていますが、法律上は「事業場内」です。

産業医等

産業医等とは、産業医その他労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する医師をいいます。

産業医等は、職場環境等の改善、健康教育・健康相談その他従業員の健康の保持増進を図るための措置のうち、医学的専門知識を必要とするものを行うという面から、職場の心の健康づくり計画の策定に助言、指導等を行い、これに基づく対策の実施状況を把握します。

また、専門的な立場から、セルフケア及びラインによるケアを支援し、教育研修の企画及び実施、情報の収集及び提供、助言及び指導等を行う。就業上の配慮が必要な場合には、事業者に必要な意見を述べます。

専門的な相談・対応が必要な事例については、職場外資源との連絡調整に、専門的な立場から関わる。さらに、長時間従業員等に対する面接指導等の実施やメンタルヘルスに関する個人の健康情報の保護についても中心的役割を果たします。

衛生管理者等

衛生管理者等とは、衛生管理者等衛生管理者、衛生推進者及び安全衛生推進者をいいます。

衛生管理者等は、心の健康づくり計画に基づき、産業医等の助言、指導等を踏まえて、具体的な教育研修の企画及び実施、職場環境等の評価と改善、心の健康に関する相談ができる雰囲気や体制づくりを行います。

また、セルフケア及びラインによるケアを支援し、その実施状況を把握するとともに、産業医等と連携しながら職場外資源との連絡調整に当たることが効果的です。

保健師等

衛生管理者以外の保健師等は、産業医等及び衛生管理者等と協力しながら、セルフケア及びラインによるケアを支援し、教育研修の企画・実施、職場環境等の評価と改善、従業員及び上司からの相談対応、保健指導等に当たります。

心の健康づくり専門スタッフ
心の健康づくり専門スタッフとは、精神科・心療内科等の医師、心理職等をいいます。

職場内に心の健康づくり専門スタッフがいる場合には、職場内産業保健スタッフと協力しながら、教育研修の企画・実施、職場環境等の評価と改善、従業員及び上司からの専門的な相談対応等に当たるとともに、当該スタッフの専門によっては、事業者への専門的立場からの助言等を行います。

人事労務管理スタッフ

人事労務管理スタッフは、上司だけでは解決できない職場配置、人事異動、職場の組織等の人事労務管理が心の健康に及ぼしている具体的な影響を把握し、労働時間等の労働条件の改善及び適正配置に配慮する役割があります。

4.職場外資源によるケア

メンタルヘルスケアを行う上では、職場が抱える問題や求めるサービスに応じて、メンタルヘルスケアに関し専門的な知識を有する各種の職場外資源の支援を活用することが有効です。

事業場外資源とは、事業場外でメンタルヘルスケアヘの支援を行う機関及び専門家をいいいます。

また、従業員が相談内容等を職場に知られることを望まないような場合には、職場外資源を活用することが効果的です。

職場外資源の活用にあたっては、これに依存することにより事業者がメンタルヘルスケアの推進について主体性を失わないよう留意すべきです。

このため、事業者は、メンタルヘルスケアに関する専門的な知識、情報等が必要な場合は、職場内産業保健スタッフ等が窓口となって、適切な職場外資源から必要な情報提供や助言を受けるなど円滑な連携を図るよう努める必要があります。

また、必要に応じて従業員を速やかに医療機関及び地域保健機関に紹介するためのネットワークを日頃から形成しておく必要があります。

特に、小規模職場においては、職場外資源として地域産業保健センターの活用が有効です。

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