特定元方事業者等の講ずべき措置

Last Updated on 2021年8月24日 by

特定元方事業者

特定元方事業者とは、元方事業者のうち、建設業または造船業を行う事業者です。特に危険が伴うので「特定作業」といい、この「特定作業」を請け負うので「特定元方事業者」といいます。

労働安全衛生法第30条 特定元方事業者は、その労働者及び関係請負人の労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、次の事項に関する必要な措置を講じなければならない。

労働安全衛生法第30条には、特定元方事業者が講ずるべき措置が列記されています。

協議組織の設置及び運営

特定元方事業者は協議組織を設置しなければなりません。

労働安全衛生規則第635条にもう少し細かく規定されています。

第六百三十五条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第一号の協議組織の設置及び運営については、次に定めるところによらなければならない。
一 特定元方事業者及びすべての関係請負人が参加する協議組織を設置すること。
二 当該協議組織の会議を定期的に開催すること。
2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が設置する協議組織に参加しなければならない。

協議組織には、全ての関係請負人を参加させなければなりません。当然、関係請負人は参加する義務があります。

協議組織は定期的に開催する必要があります。開催頻度は特に規定されていませんが、毎月1回以上が基本です。

協議内容などの詳細については、平成7年4月21日基発第267号 の2「元方事業者による建設現場安全管理指針について」に示されています。

作業間の連絡及び調整

労働安全衛生規則第636条にもう少し細かく規定されています。

第636条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第二号の作業間の連絡及び調整については、随時、特定元方事業者と関係請負人との間及び関係請負人相互間における連絡及び調整を行なわなければならない。

また、先の通達に以下の記載があります。

元方事業者は、混在作業による労働災害を防止するため、混在作業を開始する前及び日々の安全施工サイクル活動時に次の事項について、混在作業に関連するすべての関係請負人の安全衛生責任者又は
これは準ずる者と十分連絡及び調整を実施すること。
①車両系建設機械を用いて作業を行う場合の作業計画
②移動式クレーンを用いて作業を行う場合の作業計画
③機械設備等の配置計画
④作業場所の巡視の結果
⑤作業の方法と具体的な労働災害防止対策

作業場所を巡視する

現場の状況を把握するためには、実際に自分の目で確認する必要があります。

労働安全衛生規則第637条にもう少し細かく規定されています。

第637条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第三号の規定による巡視については、毎作業日に少なくとも一回、これを行なわなければならない。
2 関係請負人は、前項の規定により特定元方事業者が行なう巡視を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

この規定により、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者は毎日1回以上作業場を巡視しなくていけません。

巡視して、作業方法は適切か、危険箇所はあるか、安全対策は行われているかを確認するのですが、あらかじめチェックシートを作成しておき、巡視しながらチェックしていくと効率的です。

問題点を発見したときは、すぐに是正指示を出して改善させる必要があります。是正指示の内容を、その場でチェックシートに補記する習慣が必要です。

教育に対する指導援助

労働安全衛生規則第638条にもう少し細かく規定されています。

第638条 特定元方事業者は、法第三十条第一項第四号の教育に対する指導及び援助については、当該教育を行なう場所の提供、当該教育に使用する資料の提供等の措置を講じなければならない。

安全教育は特定元方事業者が直接行う必要はありませんが、教育を行うように指導し、場所の提供、教材や資料の提供などの援助をしなければなりません。

仕事の工程等の計画

労働安全衛生法第30条5 仕事を行う場所が仕事ごとに異なることを常態とする業種で、厚生労働省令で定めるものに属する事業を行う特定元方事業者にあつては、仕事の工程に関する計画及び作業場所における機械、設備等の配置に関する計画を作成するとともに、当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人がこの法律又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導を行うこと。

法第30条第1項第5号の厚生労働省令で定める業種は、労働安全衛生規則で建設業と定められています。したがって、この号は、建設業のみに適用されます。

労働安全衛生規則第638条の3と4にもう少し細かく規定されています。

その他

労働安全衛生法第30条第1項6に「前各号に掲げるもののほか、当該労働災害を防止するため必要な事項」とあります。

その内容は、労働安全衛生法第639条以下に定められています。

統括安全衛生管理義務者

発注者が仕事を二つ以上の元請負人に分割発注した場合、複数の特定元方事業者が存在することになるので、そのうちどの特定元方事業者が労働安全衛生法第30条1項の措置をすべきなのかを決める必要があります。

2 特定事業の仕事の発注者(注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者をいう。以下同じ。)で、特定元方事業者以外のものは、一の場所において行なわれる特定事業の仕事を二以上の請負人に請け負わせている場合において、当該場所において当該仕事に係る二以上の請負人の労働者が作業を行なうときは、厚生労働省令で定めるところにより、請負人で当該仕事を自ら行なう事業者であるもののうちから、前項に規定する措置を講ずべき者として一人を指名しなければならない。一の場所において行なわれる特定事業の仕事の全部を請け負つた者で、特定元方事業者以外のもののうち、当該仕事を二以上の請負人に請け負わせている者についても、同様とする。
3 前項の規定による指名がされないときは、同項の指名は、労働基準監督署長がする。

発注者から仕事の全部を請け負った特定元方事業者が、自身はその仕事をしないで、さらに二つ以上の下請に分割発注している場合も、同様に発注者から仕事の全部を請け負った特定元方事業者が統括安全衛生管理義務者を指名しなければなりません。

指名しないときは労働基準監督署長がすることになりますが、指名がなされない間は、労働安全衛生法第30条1項の義務はそれぞれの関係請負人の労働者に対しては、それぞれの特定元方事業者が負います

労働安全衛生法第30条2項の規定により指名された特定元方事業者が安衛法30条1項の措置を行う「統括安全衛生管理義務者」になります。

4 第二項又は前項の規定による指名がされたときは、当該指名された事業者は、当該場所において当該仕事の作業に従事するすべての労働者に関し、第一項に規定する措置を講じなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、第一項の規定は、適用しない。

この規定により統括安全衛生管理義務者が指名された場合は、統括安全衛生管理義務者が第30条第1項に規定する措置を講じることになります。

ただし、これによって責任が移動するのは、あくまでも労働安全衛生法第30条1項の措置義務だけであり、そのほかの事業者としての労働安全衛生法上の義務は残り、安全配慮義務もあると解されています。

会社事務入門事業者等の講ずべき措置>このページ