労災のケーススタディ2

Last Updated on 2021年7月28日 by

通勤災害のケース

架空の例をもとに、通勤災害が発生したときの流れを解説します。

主役は、課長のキャベツさんです。

キャベツさんマンションの階段から落ちる

郊外のマンションに住むキャベツさんは、都心の会社に電車通勤をしています。ある日、いつものように部屋を出たキャベツさんはマンションの階段から転落してしまいました。
「あ~」 ドタン・・・・・。 玄関で見送っていた奥さんがかけよりました。
「あなた、大丈夫?」
「う~ん、う~ん」
「大変。救急車呼びますね」
奥さんは持っていた携帯で救急車を呼びました。

病院で

ベッドに寝ているキャベツさんと付き添ってきた奥さんがお医者さんの説明を聞いています。
「足の骨が折れています。他にも打撲がありますが、骨折は1か所です。1週間くらいの入院が必要でしょうね。後で部屋に移動してもらいますから、それまで少しここで待っていてください」

キャベツさんと奥さんの会話

「あなた、大変なことになったわね。入院費用もばかにならないだろうし、長く休んで会社をクビになったらどうするの」
「バカだなお前、安心しろ。これはロウサイなんだ。治療費も入院費も全然かからない。休んでいても給料の8割がでるんだ。クビの心配なんか全然ない。ロウサイになった者をクビにすることはできないんだ。会社からそれなりの見舞金もあるだろうし、久しぶりにゆっくりしようかな~。」
以前の部下の労災で痛い目にあってチエがついたキャベツさんは強気です。

確かに通勤災害も業務上災害も、給付内容はほとんど変わりません。ただし、解雇制限について誤解しています。会社に責任がない通勤災害には解雇制限がありません。もっとも、ケガをしたという正当な理由があるので数週間休んだだけでクビになることはないでしょうが、これ幸いとズル休みを続ければどうなるかわかりません。

奥さんがワラビ部長に電話しました

「キャベツです。いつも主人がお世話になっております。実はキャベツが会社へ出かけるときに、マンションの階段で転んでしまって、救急車で運ばれて入院することになってしまいました」
「いや~、それは大変でしたね。それで、容体はどうですか」
「足の骨が折れているようで、長くなりそうなんです。それで、ロウサイの方よろしくおねがいしますとのことですが」
「そうですか~。わかりました。とりあえず、部下のホウレンソウ君をそちらにやります。詳しいことはホウレンソウ君に話してください」

ワラビ部長とホウレンソウ君の会話

「おい、ホウレンソウ。キャベツがマンションの階段から落ちて足の骨を折ったそうだ。ロウサイだと言っているから、すぐ行ってくれ」
「わかりました。でも行ってどうすればいいんですか」
「いや、とりあえず行くだけでいいんだ。キャベツのことだから大げさにして長く休もうとしているんだよ、きっと。退院したら車いすでいいからすぐに出てこいって言っておけよ」
「わかりました。伝えます。ところで、ワラビ部長、マンションの階段から落ちればロウサイになるんですか?」
「うん、マンションやアパートはドアを出れば通勤だって聞いたことがある。でも、出勤かどうかわからんな。キャベツはカミさんに命令されてゴミ出しに出ただけかもしれない。スーツ着ていたか、パジャマだったかも見てこいや」
「うわ、そこまで言われるんだ。ボクもアパート住まいだから、これからゴミ出しはスーツ着てからにします」

キャベツさんはマンション住まいなので、ドアを出れば通勤が始まります。もし、一軒家であれば玄関の段差で転んでも労災になりません。一軒家の場合は、敷地を出てからが通勤になります。ワラビ部長が冗談を言っていたように、パジャマ姿で倒れていれば通勤とは認められないでしょう。また、いつもの通勤時間と大幅に違う時間であれば、なぜその時間に通勤しているのか、合理的な理由が必要になります。

「あ、もう一つ気になるのはワラビの糖尿だな。健康診断のたびにひっかかっているんだ。糖尿で倒れたんじゃないのかな」
「というと、病気で目がくらんで倒れたときはロウサイにならないんですか」
「いやいや、ちょっと思っただけだ。ここだけの話だぞ」
「わかってますよ。じゃ行ってきます」

キャベツさんには糖尿の持病があるようですから、ワラビ部長がいうように問題になるかもしれません。風邪をひいた高熱で意識がもうろうとして事故になった、あるいは、心臓発作で意識を失って事故になったような場合には、その場所がたまたま通期途上、あるいは仕事場であっただけだということで、労災に認定されない可能性もあります。

ただし、その意識もうろうの原因が風邪だけでなく、仕事上の過労が重なって無理に仕事をしている場合には別です。いずれにしても労働基準監督署が総合的に検討して判断するので、会社としては予断を持たず、中立公正に対処しなければなりません。

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