Last Updated on 2025年7月9日 by 勝
労働安全衛生法に安全衛生責任者についての定めがあります。安全管理者と混同しないように注意が必要です。
安全衛生責任者の役割は?
新任担当者(田中):
課長、来月から労務の安全衛生を担当しますが、「安全衛生責任者」というのはどのような役割なんでしょうか?
労務課長(佐藤課長):
いい質問だね。安全衛生責任者というのは、元請事業者が統括安全衛生責任者を置く現場で、その元請の指示のもとに作業する下請事業者が選任する責任者のことなんだ。労働安全衛生法第16条に定めがある。
田中:
下請が選任するんですか?
佐藤課長:
そう。大規模な建設現場や造船の現場などで、元請が現場全体を管理する「統括安全衛生責任者」を置くと、下請事業者側にも、自社の労働者の安全を守る立場として「安全衛生責任者」を置かせることが法律で決められている。
選任後は遅滞なく元方事業者に連絡しなければならない。なお、「連絡」は法律では「通報」となっている。
田中:
なるほど。下請の事業者側の責任者という位置づけですね。
安全衛生責任者の仕事は?
佐藤課長:
その通り。下請の安全衛生責任者は
自社の安全衛生に関する業務の実施
元請の統括安全衛生責任者と連絡調整
作業員への指導
などを行うことになる。詳しくは労働安全衛生規則第19条に定められているから確認してほしい。
安全衛生責任者になるには?
田中:
どんな人が選ばれるんでしょうか。
佐藤課長:
基本的には、その下請事業者の現場責任者や職長クラスが多い。管理的立場にあって、現場を把握している人が選任されるのが普通だよ。また、不在のときに備えて代理者も必要だ。
田中:
資格は必要なんですか?
佐藤課長:
法的には特別な免許は要らないけれど、選任後に安全衛生責任者教育を受けることが求められるね。
建設業では、職長と安全衛生責任者を兼任することが多く見受けられるので、厚生労働省は「職長教育」と「安全衛生責任者教育」を統合した「職長・安全衛生責任者教育」の受講を推奨している。
ただし、職長と安全衛生責任者を兼務することが多いとは言っても、それぞれに違う役割があることにも注意が必要だ。職長とは労働者に対して作業の指揮監督を行う立場の人を指し、安全衛生責任者とは労働災害防止のために統括安全衛生責任者との連絡・調整を行う人だと捉えておこう。
田中:
ありがとうございます。最初は安全管理者と混同していました。
佐藤課長:
そこはよく間違えやすいから注意だね。
統括安全衛生責任者(元請)
安全衛生責任者(下請)
安全管理者(事業場の安全担当者)
は別々の制度だから、しっかり整理しておこう。
田中:
はい、理解できました。ありがとうございます。
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