カテゴリー: 株主総会

  • 株主総会の招集手続きを省略することができますか?

    省略が可能な会社

    非公開(株式の譲渡制限がある会社)で書面投票や電子投票を採用しておらず、比較的株主数の少ない会社は株主総会の招集手続きを省略することができます。

    一般的には、株主が1人(1社)だけの会社、親族数人だけが株主の会社などが利用しています。

    省略の手続き

    株主全員の同意がある場合

    全株主が「通知なしでもよい」と同意した場合には、招集通知を出さずに総会を開催できます。中小企業や同族会社などでよく使われます。

    書面決議・みなし決議

    株主全員が「提案に賛成する」意思表示をした場合、実際に総会を開かなくても、株主総会の決議があったものとみなされます。この場合も実質的に招集通知が不要です。

    注意点

    全員の同意が必要であり、1人でも異議を唱えれば省略できません。実務では、小規模会社で取締役会で招集通知を決議して株主全員の署名捺印を議事録に残す形が見られます。

    同意書の例

    株主総会招集手続きに関する同意書

    〇〇株式会社御中

    令和〇年〇月〇日に開催予定の〇〇株式会社定時株主総会において、会社法299条第1項に定める招集通知期間を短縮し、招集手続きを省略して定時株主総会が開催されることに同意します。

    令和〇年〇月〇日

    株主住所
    株主氏名          


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  • 株主総会の招集手続き

    株主総会の招集手続きについて

    株主総会を開催する際は、原則として株主へ招集通知を送る必要があります。しかし、会社のタイプや状況によって、そのルールにはいくつかの例外や細かい違いがあります。

    招集通知が不要な場合もある

    原則としては株主総会を開くためには必ず株主に通知しなければなりませんが、例外もあります。

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    招集通知を送る期限は会社によって違う

    招集通知を発送する期限は、会社のタイプによって異なります。

    公開会社: 株主総会の2週間前までに招集通知を発送する必要があります。

    非公開会社(取締役会設置会社):

    書面投票や電子投票を採用する場合: 総会の2週間前までに通知を発送します。

    書面投票や電子投票を採用しない場合: 総会の1週間前までに通知を発送します。

    非公開会社(取締役会非設置会社):

    書面投票や電子投票を採用する場合: 総会の2週間前までに通知を発送します。

    書面投票や電子投票を採用しない場合: 総会の1週間前までに通知を発送します(定款でさらに期間を短縮することも可能です)。

    期間の数え方について

    会社法では、招集通知の期間計算に「発信主義」を採用しています。これは「株主に通知が到達した日」ではなく、「会社が招集通知を発信した日」を基準とするという意味です。

    また、期間には「発信日」と「総会開催日」は含めません。例えば、株主総会が6月30日に開催される場合、2週間前であれば6月15日、1週間前であれば6月22日、またはそれ以前に招集通知を発送する必要があります。つまり、「発信日」と「総会開催日」の間に、規定の期間(2週間または1週間)がまるまる空いている必要がある、ということです。

    基準日について

    総会で議決権を行使できる株主を確定するため、基準日を設けます。これは会社法で定められており、定時株主総会の場合は通常、事業年度末(3月決算であれば3月31日)が基準日となります。会社は、基準日時点の株主名簿を基に、議決権を行使できる株主を確定します。

    招集通知の形式と内容

    形式

    招集通知は、一部の例外を除き、書面で発送するか、株主の同意を得て電磁的方法(メールなど)で送ります。用紙のサイズや形状に法的な制約はありませんが、一般的にはA4用紙などで作成されます。

    記載事項

    株主総会の招集通知には、以下の情報を正確に記載する必要があります。

    発信日付: 招集通知を発信する日付を記載します。この発信日は、株主提案権の行使期限(原則として総会開催日の8週間前)を過ぎた日である必要があります。

    宛名: 「株主各位」と記載するのが一般的です。

    標題: 「第〇回定時株主総会招集ご通知」「第〇期定時株主総会招集ご通知」「臨時株主総会招集ご通知」など、総会の種類に応じて記載します。

    開催日時・場所: 株主総会がいつ、どこで開催されるかを明記します。

    議題・提出議案: 総会で話し合われる内容や、決議を求める議案を具体的に記載します。例えば、「利益処分案承認の件」「退任取締役に対する退職慰労金贈呈の件」などです。

    アクセス情報: 総会開催場所の住所だけでなく、案内図や交通機関の案内を載せることで、株主が会場にスムーズにたどり着けるように配慮します。

    添付書類:

    • 取締役会設置会社: 取締役会の承認を受けた計算書類と事業報告を添付する必要があります。
    • 取締役会非設置会社: これらは添付不要です。
    • 議決権行使書を用いる場合: 株主総会参考書類を添付する必要があります。

    議案の「要領」記載が必要な事項

    株主総会における議案の要領とは、株主総会の招集通知に記載される議題の具体的な内容を指します。株主は、総会でどのような決議が行われるのかを事前に把握し、議決権を行使するかどうかを判断するため、この議案の要領は非常に重要です。

    例えば、役員選任の議題であれば、候補者の氏名、略歴、その人物を役員として選任する必要がある理由などが記載されます。また、定款変更の議題であれば、変更する条文とその理由が明記されます。

    • 役員等の選任・報酬
    • 募集株式・募集新株予約権を引き受ける者の募集
    • 事業譲渡等
    • 定款の変更
    • 合併、吸収分割、新設分割、株式交換、株式移転など組織再編に関する事項

    招集通知の記載をウェブに記載する

    会社法では、株主総会の招集通知に記載すべき事項の一部をウェブサイトに掲載することが認められています。これにより、書面で送付する招集通知の量を減らし、印刷・郵送にかかるコストを削減することができます。

    ウェブサイトに掲載できるのは、主に以下の事項です。

    1. 計算書類および事業報告: 総会で承認を求める会社の財務状況や事業活動に関する詳細な情報です。
    2. 監査報告: 会計監査人や監査役による監査の結果です。
    3. 連結計算書類: 連結決算を行っている会社の場合、その詳細です。
    4. 議案の要領: 各議案の具体的な内容です。

    これらの情報をウェブサイトに掲載する場合、以下の要件を満たす必要があります。

    • 招集通知にウェブサイトのアドレスを記載する
    • ウェブサイトに掲載する情報の内容が、書面で記載されるべき情報と同一であること
    • 株主がウェブサイトに掲載された情報にアクセスできる環境にあること

    この制度を活用することで、会社は効率的に招集手続きを行うことができ、株主はより詳細な情報を手軽に確認できるようになります。

    議決権行使について

    議決権行使書

    株主総会に出席できない株主のために、書面で議決権を行使できる「議決権行使書」を送付する制度があります。

    株主数が1,000名以上の会社では、議決権行使書の採用が義務付けられています

    1,000名未満の会社でも、任意で書面投票制度を採用することができます。

    インターネットを用いて議決権行使を可能にする会社も増えています。その場合、議決権行使書の書面にIDやパスワードを記載して通知します。

    委任状

    株主は、代理人を通して議決権を行使することもできます。代理人が議決権を行使する際には、「委任状」が必要です。

    定款で代理人の資格を「株主に限定する」と定めている会社もあります。

    ただし、法人が株主で、その法人の従業員が代理人として出席する場合、その従業員が個人として株主である必要はありません。

    会社が株主に送付する委任状用紙で作成された委任状を提出するのが一般的ですが、株主が私的に作成した委任状であっても、会社が内容を確認できる場合は有効とされます。

    代理人が出席する場合、議決権行使書を持参するだけでは不十分で、委任状も必要となるのが一般的です。

    議決権の代理行使があった場合、会社は総会終了後3ヶ月間、委任状を本店に備え置かなければならず、株主からの閲覧・謄写請求に応じる必要があります。

    送付後にミスが見つかった場合

    招集通知や添付書類(計算書類、事業報告など)を発送した後に間違いに気づいた場合、会社のウェブサイトなどで修正内容を知らせることができます。ただし、そのためには、招集通知の段階で、修正があった場合の周知方法を記載しておく必要があります


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  • 株主総会のすべて:概要から準備、当日の流れ、事後対応まで

    株主総会の概要

    株主総会は、株式会社の最高意思決定機関であり、会社の経営に関する重要な事項を株主が話し合い、議決する場です。

    年に一度開催される「定時株主総会」と、必要に応じて開催される「臨時株主総会」があります。定時株主総会では、事業報告や決算報告、利益処分案などが承認され、取締役や監査役の選任が行われます。

    総会日:いつ開くか

    定時株主総会は原則として毎年一回、事業年度が終了した後に開催する必要があります。

    その時期は、通常の会社では、事業年度の末日から3ヶ月以内です。決算後3ヶ月以内に開催しなければなりません。

    しかし、その定めとは別に、税金の申告期限は事業年度の末日から2ヶ月以内と定められています。

    税務申告をする前に、定時株主総会を開催し、計算書類の承認を得なければなりません。したがって、現実的には事業年度終了後2ヶ月以内に定時株主総会を開催するところが多いようです。

    規模の大きい会社では、申告期限を1ヶ月延長できる「申告期限の延長の特例の申請書」を税務署に提出して、株主総会を3ヶ月以内に開催しています。

    総会日を決めたら、招集通知の発送日、会計監査人等に対する計算書類提出日などを考慮して、年度末から総会日に向けたスケジュールを作成します。

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    普通決議と特別決議の違い

    株主総会での議決は、議題の重要性に応じて、普通決議、特別決議、特殊決議に分かれます。

    普通決議: 議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その議決権の過半数で決議されます。事業報告の承認、役員の選任・解任、剰余金の配当などがこれにあたります。

    特別決議: 議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その議決権の3分の2以上で決議されます。会社の合併、事業譲渡、定款変更、自己株式の取得、資本金の減少など、会社の根幹に関わる重要な事項が対象となります。

    特殊決議: 会社法でさらに厳しい要件が定められている決議です。特殊決議は、株主の権利に影響を与える事項を扱うため、より厳格な決議要件が定められています。

    総会の準備と当日の仕事

    株主総会の成功は、事前の準備にかかっています。

    準備

    会場の準備: 小規模の会社では自社の会議室で開催することが多いようですが、株主の人数等によっては、ホテルなどの施設を借ります。

    議案の決定と招集通知の発送: 取締役会で議案を決定し、総会開催日の2週間前までに、株主へ招集通知と参考書類を送付します。

    議事進行の準備: 議長の選出、司会者、書記などの役割分担を決め、進行台本を作成します。

    会場の設営: 会場手配、受付、座席配置、音響・映像機器の準備を行います。

    想定問答集の作成: 株主からの質問を予測し、役員や担当者が回答できるよう準備します。

    委任状の集計: 席に集まった委任状を集計し、総会の成立に必要な議決権の数を事前に確認します。

    関連記事:株主総会の準備

    当日

    受付: 出席株主の確認、出席票や議決権行使書の交付を行います。

    総会の開始: 定刻に総会を開始し、議長が進行します。

    議事進行: 議長が議案を読み上げ、質疑応答を行い、議決をとります。

    決議の成立: 議案ごとに普通決議、特別決議の要件を満たしているか確認し、成立を宣言します。

    閉会: 全ての議案が承認されれば、議長が閉会を宣言します。

    関連記事:株主総会進行マニュアルのサンプル

    総会終了後に忘れてはならないこと

    総会が終わった後も、いくつかの重要な手続きが残っています。

    決議通知等: 株主に株主総会決議通知を発送し、配当があれば、株主配当金の支払通知書(銀行口座振込みの株主には振込通知書)も同送します。もちろん、配当金の支払も必要です。

    議事録の作成: 議事の経過や結果を正確に記録した議事録を作成し、議長と出席取締役が署名・押印します。これは、法的な記録として会社に備え置く必要があります。

    登記手続き: 役員の選任・解任など、登記が必要な事項が決議された場合は、総会終了後2週間以内に法務局で登記手続きを行います。

    株主への報告: 議案の承認状況など、総会の結果を株主へ適切に報告します。

    関係者への連絡: 決議内容に応じて、社内や関係各所へ周知します。

    これらの手続きを怠ると、法律違反となったり、会社の信用を失うことにもなりかねません。総会は、会社と株主の信頼関係を築くための重要な場であり、その準備から事後処理まで、丁寧に進めることが求められます。


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  • 株主総会準備マニュアルのサンプル

    会社法の定め通りに行う

    株主総会をどのように準備し運営するかについては、会社法の定めに従って行います。

    会社法に定められたことと違う運営をすれば、せっかく開催した株主総会が、取り消され、もう一度やり直さなければならない事態もあり得ます。

    まったくの身内だけの株主総会であれば、さほど緊張することなく準備してよいと思いますが、取引先である株主、普段は会社と接点がない一般株主、投資目的で購入した株主が出席している会社だと、株式公開の有無にかかわらず、細部まで会社法を意識した運営が必要です。

    通常、次のような手順で準備します。

    スケジュール表を作成する

    株主総会の日程は、株主総会に出席することができる株主の基準日の公告、株主に対する招集通知の発送など、多くの手続が「株主総会の日から〇日前までに行わなければならない」などの、法律上の制限があります。

    また、株主総会の開催のためには、株主総会を開催するための取締役会決議や、株主総会に提出する計算書類の監査などの手続を経なければなりません。それらをスケジュールに組み込まなければなりません。

    さらに、招集通知や事業報告の作成に要する期間、その印刷に要する期間なども考慮しなければなりません。

    以上を加味すると、会社規模等にもよりますが、当期の株主総会が終わった直後に次回の総会日等のスケジュールを確定し、6ヶ月前には、準備スケジュールと社内での役割分担は、ほぼ確定していることが望ましいでしょう。

    シナリオを作成する

    議事進行のシナリオが必要です。

    シナリオの重要部分は、株主総会の成立や終了を宣言したり、議事の進め方に関するルールを説明する部分です。手慣れた議長でも、シナリオがないと言い漏らしや言い間違いが生じる部分です。

    シナリオが整備されていれば、議長は株主との質疑応答に集中することができます。

    株主総会進行マニュアルのサンプル

    想定問答集を作成する

    議事の進行に関する部分はシナリオ通りに進行させることができますが、株主からの質問を受ける質疑応答の部分については、相手があることなのですべての展開を予測することは不可能です。

    したがって、どんなに想定問答を準備してもその通りになることはほぼないのですが、準備するとしないでは大違いです。事前に作成した想定問答が頭に入っていれば、株主の正当な発言に耳を傾け、丁寧に回答する余裕が生まれます。

    できれば、想定問答を読み上げるだけでなく、議長である社長が会社の課題や展望とからめて自分の言葉で語るのが望ましいでしょう。しかし、そのようなやり取りが苦手な人が無理をすれば墓穴をほる可能性があります。想定問答を活用した方がよいでしょう。

    いざ質問があると、想定問答のどの部分が該当するか、とっさには見つけにくいものです。そのようなときは、事務局が助け舟を出すことが多いのですが、紙の差し入れが目立たないような座席配置の工夫が必要です。また、タブレットを使うこともありますが、1台のタブレットでシナリオから想定問答、伝言のすべてを伝えると、とっさのときに戸惑うようです。用途によって複数のタブレットを用意するとよいでしょう。

    リハーサルを行う

    シナリオと想定問答集があっても、ぶっつけ本番ではスムーズにいきません。

    リハーサル通りになるわけではありませんが、毎年やっていることでもリハーサルによって新たな問題を発見することがあります。

    当日の受付

    受付業務の基本は議決権行使書の集計です。受付で人の流れが滞ったりするとイライラする人が現れて険悪な雰囲気になることがあります。事前の準備とリハーサルをしっかりやってスムーズな受付運営に心がけましょう。

    株主総会の受付

    当日の総会進行

    役員は整然と入場し、自席の前で一礼し、一旦しっかりと顔を上げてから着席します。落ち着いた様子が大事です。

    議長の挨拶や冒頭の議事について説明は、株主発言を許さずシナリオ通りに読み進んでかまいません。この段階ではアドリブを控えましょう。

    営業報告や議案の説明の途中で質問があっても、説明が終わってから発言の機会を与えればよいので、かまわず進行してかまいません。

    監査役会報告は事前に原稿を決め、アドリブなしでしっかりと読み上げます。

    株主は議長の議事整理権に従わなければなりません。発言整理は議長の権限です。延々と議論を続けるのでなく、一定のやりとりをした上で、審議が尽くされたとして審議を打ち切り、決議に入っても瑕疵はありません。


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