株主総会の招集決定から招集日までの事務局(会社側)の作業は、会社法上の期限厳守が求められる非常に重要なプロセスです。特に上場会社の場合、株主の数が多く、招集通知の発送期限が厳格に定められています。
招集事務は、主に「決定と準備」「通知と開示」「当日準備」の3つの段階に分けて進行します。
招集の決定と準備段階(総会日の約1ヶ月半〜1ヶ月前)
この段階では、招集手続きの開始に必要な基礎情報を固め、通知発送の準備を行います。
取締役会による招集事項の決定
株主総会の招集は、原則として取締役会決議(取締役会を設置していない会社では取締役の決定)によって行われます。
- 開催日時・場所の決定: 総会の日程と会場を確定します。
- 会議の目的事項(議題)の決定: 承認事項(計算書類、配当など)、決議事項(役員の選任など)を明確にします。
- 招集方法の決定: 書面投票制度や電子投票制度(インターネットによる議決権行使)を採用するかどうかを決定します。
- 基準日の決定(任意): 議決権を行使できる株主を確定するための日(基準日)を決定します。通常、事業年度末日(3月末など)が設定されます。
- 基準日設定の公告: 基準日を定めた場合、その日の2週間前までに公告(官報など)を行う必要があります。
招集通知・開示書類の作成
決定事項に基づき、株主へ送付する書類の原稿を作成します。
- 招集通知の作成: 開催日時、場所、議題などの法定記載事項を盛り込みます。
- 株主総会参考書類の作成: 議案ごとの具体的な内容、提案理由、取締役候補者の経歴などを詳細に記載します。
- 議決権行使書面の作成: 書面投票を採用する場合に必要となる書類を準備します。
- 法定書類の作成: 事業報告、計算書類、監査報告書(または会計監査報告書)などの法定開示書類を完成させます。
通知と開示の段階(総会日の約3週間前〜2週間前)
この段階は、会社法上の期限が最も厳格に定められており、事務局にとって最も重要な作業です。
法定書類の備置
作成した事業報告、計算書類、監査報告書などの法定書類を、株主総会の日の2週間前の日から、会社の本店に備え置きます。株主はいつでもこれを閲覧・謄写(コピー)請求できます。
株主名簿の確定
基準日時点の株主名簿を確定させ、通知を送付すべき株主の住所・氏名を確定します。
招集通知の発送(最重要期限)
招集通知は、原則として株主総会の日の2週間前までに株主へ発送しなければなりません(非公開会社や書面投票・電子投票を不採用の場合は1週間前)。
- 発送作業: 招集通知、参考書類、議決権行使書面などを封入し、期限内に郵便局に差し入れます。
- 電子提供制度の利用: 上場会社等で電子提供制度を採用している場合、招集通知を株主総会日の3週間前までにウェブサイトに掲載し、株主へそのアドレス等を通知します。
総会日までの最終準備段階(総会日の2週間前〜前日)
通知発送後は、総会が円滑に進むための実務的な準備に移行します。
議決権行使書の集計
書面投票や電子投票による事前行使の集計を行います。
- 提出期限までに返送または電子的に行使された議決権行使書を集計し、各議案に対する賛成・反対・棄権の票数を把握します。これは、総会当日までに決議成立の見込みを判断する重要な情報となります。
会場準備とリハーサル
- 会場設営: 役員席、議長席、株主席、受付、報道関係者席などのレイアウトを確定し、機材(マイク、プロジェクターなど)の手配を行います。
- 想定問答集(Q&A)の作成: 事前行使の状況や時事的なニュースを考慮し、株主から出される可能性のある質問と、それに対する役員の回答案(答弁)を詳細に作成します。
- リハーサル: 議事進行のシナリオ確認、役員の答弁練習、質疑応答のシミュレーション(想定問答集を使った練習)を行います。
当日受付・案内体制の準備
- 株主受付で使用する名簿の準備、本人確認方法、議決権行使券の配布(または確認)方法、案内係や警備体制の配置などを最終確認します。


