従業員が60歳になったときの社会保険手続き

社会保険

Last Updated on 2025年9月30日 by

従業員の方が60歳の誕生日を迎えた際の社会保険手続きは、その後の雇用継続の有無と、賃金の変更が最大のポイントとなります。60歳到達自体で資格を喪失する社会保険制度はありませんが、多くの企業で定年年齢となるため、その後の働き方によって必要な手続きが大きく変わります。

定年退職する場合(継続雇用なし)

定年退職日をもって雇用関係が終了する場合、通常の退職手続きを行います。

保険の種類必要な手続き提出先・期限
健康保険・厚生年金「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」の提出年金事務所 退職日の翌日から5日以内
雇用保険「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」(基本手当を希望する場合)の提出ハローワーク 退職日の翌日から10日以内

継続して再雇用される場合(60歳定年後も引き続き勤務)

定年退職後、1日の空白もなく継続して再雇用される場合(嘱託社員など)は、給与の変更の有無によって手続きが異なります。

最重要手続き:「同日得喪(どうじつとくそう)」

定年後の再雇用で給与が大幅に減額された場合(通常、標準報酬月額が2等級以上下がる場合)、この手続きを行うことで、再雇用された月から新しい低い給与に基づいた社会保険料に切り替えることができます。

  • 目的:
    • 従業員と会社双方の社会保険料負担を、下がった賃金に合わせて速やかに軽減するため。
    • 年金受給者にとっては、「在職老齢年金」の支給停止額が減り、年金を受け取りやすくなるメリットがあるため。
  • 手続き: 定年退職日をもって資格喪失届を提出し、退職日の翌日(再雇用日)に資格取得届を提出します。(資格喪失と資格取得を同日に行うイメージ)
  • 添付書類: 定年退職したことがわかる書類(就業規則の定年規定、退職辞令など)と、再雇用されたことがわかる書類(雇用契約書など)が必要です。

雇用保険:高年齢雇用継続給付(従業員本人の申請を支援)

60歳到達時の賃金と比較して、再雇用後の賃金が75%未満に低下した場合に、高年齢雇用継続給付金を申請できます。

  • 申請条件: 60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者で、被保険者期間が5年以上あり、賃金が60歳到達時の75%未満に低下したこと。
  • 会社の対応:
    1. 「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」をハローワークに提出します(60歳到達日の翌日から提出可能)。これは今後の給付金申請に備えて、60歳時点の賃金を証明するために行います。
    2. 従業員の希望に基づき、「高年齢雇用継続給付支給申請書」の提出を支援します。

その他の社会保険

保険の種類60歳到達による変更点会社の対応
健康保険・厚生年金継続加入。手続きは不要。70歳までは厚生年金、75歳までは健康保険に加入が継続します。
介護保険40歳から65歳未満は第2号被保険者として、引き続き健康保険料と一体で介護保険料が徴収されます。手続きは不要。介護保険料の徴収が停止するのは65歳からです。

【重要】年齢到達日の原則

社会保険上の「〇歳に到達した日」とは、原則として誕生日の前日を指します。(例:10月2日が誕生日の場合、10月1日に60歳に到達)ただし、75歳の健康保険喪失のみ誕生日当日です。60歳での手続きは誕生日の前日を基準に進める必要があります。