株主総会の招集手続き

株主総会

株主総会の招集手続きとは、株主総会を開催するために踏まなければならない、会社法で定められた一連の法的手続きです。この手続きは、株主が公平に経営への参加機会を得ることを保証するために厳格に定められています。

招集権者と招集決定

招集権者

株主総会を招集する権限(招集権)を持つのは、原則として取締役です。取締役が複数いる場合は、取締役会を設置している会社では取締役会の決議によって招集が決定されます。

少数株主による招集

会社の経営が適切に行われていない場合、一定の要件を満たした少数株主(総株主の議決権の100分の3以上を6ヶ月間継続して保有する株主など)も、裁判所の許可を得て総会を招集できます。

招集事項の決定(招集通知に記載する内容)

招集権者は、総会開催に先立ち、以下の事項を決定しなければなりません(会社法298条)。これらが、後に株主へ送付する招集通知の基本情報となります。

決定事項内容
日時・場所総会を開催する正確な日時と場所(会場)を決定します。
会議の目的事項総会で議論・決議する議題を決定します(例:計算書類の承認、役員の選任、定款変更など)。
書面投票株主が総会に出席せず、書面(郵送)で議決権を行使できる制度を採用するかを決定します。
電子投票株主が総会に出席せず、インターネットなどの電磁的方法で議決権を行使できる制度を採用するかを決定します。

招集通知の発送期限と方法

発送期限

決定した招集事項は、株主に通知しなければなりません。通知の方法と期限は、会社の形態や招集方法によって異なります。

会社の形態・方法発送期限(総会開催日の〇日前)
公開会社(書面投票・電子投票採用)2週間前まで
非公開会社(書面投票・電子投票不採用)1週間前まで
電子提供制度を採用3週間前までにインターネット上で情報を開示し、2週間前までにその情報を株主に通知する(上場会社等が対象)。

通知の記載事項

招集通知には、決定事項に加え、議案の内容を具体的に説明した「株主総会参考書類」や、書面投票を行うための「議決権行使書面」などを添付するのが一般的です。

招集手続の省略(例外)

全株主の同意がある場合は、招集の手続き(通知の期限など)を省略して総会を開催することもできます。

総会当日までの書類備置

招集通知を発送した後も、株主が議案を検討できるよう、会社は以下の重要書類を本店などに備え置かなければなりません。

書類の種類備置期間
事業報告、計算書類、監査報告書など総会日の2週間前の日から本店に備え置く(株主の閲覧に供する)。
議決権行使書、委任状など総会終了後、一定期間(3ヶ月間など)備え置く。

これらの手続きを厳格に履行することで、株主は招集通知を通じて事前に議題や候補者の情報を得て、総会に出席したり、書面や電子で議決権を行使したりすることが可能となります。招集手続きに法令違反があった場合、その総会決議は取り消しの対象となる可能性があります。

その他

期間の数え方について

会社法では、招集通知の期間計算に「発信主義」を採用しています。これは「株主に通知が到達した日」ではなく、「会社が招集通知を発信した日」を基準とするという意味です。

また、期間には「発信日」と「総会開催日」は含めません。例えば、株主総会が6月30日に開催される場合、2週間前であれば6月15日、1週間前であれば6月22日、またはそれ以前に招集通知を発送する必要があります。つまり、「発信日」と「総会開催日」の間に、規定の期間(2週間または1週間)がまるまる空いている必要がある、ということです。

基準日について

総会で議決権を行使できる株主を確定するため、基準日を設けます。これは会社法で定められており、定時株主総会の場合は通常、事業年度末(3月決算であれば3月31日)が基準日となります。会社は、基準日時点の株主名簿を基に、議決権を行使できる株主を確定します。

送付後にミスが見つかった場合

招集通知や添付書類(計算書類、事業報告など)を発送した後に間違いに気づいた場合、会社のウェブサイトなどで修正内容を知らせることができます。ただし、そのためには、招集通知の段階で、修正があった場合の周知方法を記載しておく必要があります