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  • OKR(Objectives and Key Results)とは?わかりやすく解説

    OKRとは

    OKR(Objectives and Key Results)のあらまし、具体的な進め方を教えてください。

    OKR(Objectives and Key Results)は、「目標」と「主要な結果」という2つの要素で構成される、組織の目標設定・管理フレームワークです。

    従来の目標管理制度(MBO)が個人の目標達成度を評価に使うことが多いのに対し、OKRは組織全体の高い目標達成と、メンバー間の連携を促進することに重点を置いています。

    OKRのあらまし:OKRの3つの特徴

    1. 挑戦的な目標設定OKRの「O(Objectives)」は、達成が難しい、意欲的な目標を設定します。達成度は60~70%が理想とされ、100%達成は非常に稀です。これにより、メンバーは現状維持ではなく、常に成長を目指すことができます。
    2. 透明性の確保OKRは、経営層から社員まで、すべてのメンバーの目標が全社で公開されます。これにより、全員が「今、会社がどこに向かっているのか」「自分の仕事がどう貢献しているのか」を理解しやすくなります。
    3. 短いサイクルでの運用OKRは、四半期(3か月)などの短い期間で設定・見直しを行います。これにより、市場や環境の変化に迅速に対応でき、計画の修正が容易になります。

    OKRの具体的な進め方

    OKRは、以下の4つのステップでサイクルを回していきます。

    ステップ1:組織全体のOKRを設定する

    まず、経営層が「今四半期で最も重要なこと」を話し合い、全社共通のOKRを設定します。

    • 【O】:例)製品Aを業界のトップに押し上げる。
    • 【KR】
      • KR1:月間アクティブユーザー数(MAU)を100万人に増やす。
      • KR2:顧客満足度調査で5点満点中4.5点を達成する。
      • KR3:製品のレビューで「使いやすさ」に関する言及を20%増やす。

    ステップ2:チーム・個人のOKRを設定する

    全社OKRをもとに、各部署やチーム、そして個人のOKRを策定します。

    • 【チームOKR】(例:マーケティングチーム)
      • 【O】:製品Aの市場での認知度を圧倒的に高める。
      • 【KR】:
        • KR1:ウェブサイトの新規訪問者数を月間50万人に増やす。
        • KR2:SNSフォロワー数を2倍にする。
        • KR3:主要メディアに製品Aに関する記事を5本掲載する。
    • 【個人OKR】(例:ウェブ担当者)
      • 【O】:ウェブサイトの新規訪問者を増やす。
      • 【KR】:
        • KR1:SEO対策で主要キーワードの検索順位を10位以内に上げる。
        • KR2:ブログ記事を週2本公開する。

    このように、上位のOKRと下位のOKRが連鎖するように設定されるのが特徴です。

    ステップ3:週次チェックイン(進捗確認)

    OKRを設定したら、週に一度、チームや個人で進捗状況を確認します。

    • 「今週の進捗はどうか?」
    • 「達成を妨げているものは何か?」
    • 「来週は何にフォーカスすべきか?」この短いミーティング(チェックイン)を通じて、目標達成に向けた軌道修正を行います。

    ステップ4:四半期ごとのレビュー(成果の振り返り)

    四半期の終わりに、設定したOKRの達成度を振り返ります。

    • OとKRはどの程度達成できたか?
    • なぜ達成できたのか? / なぜ達成できなかったのか?
    • 次の四半期の目標は何か?

    このレビューで達成度を確認し、次のOKRサイクルへとつなげます。評価はあくまで学びと成長のために行われ、報酬とは基本的に切り離して運用されます。

    なぜ週1のレビューが必要ですか?

    OKRの目標は、週1度のレビューが必要なくらいの目標を設定するのが普通ですか。短期的には動きが少ない目標設定はなじみませんか。

    OKRにおいて、目標の進捗を週1回レビューするのは、目標管理を成功させる上で非常に重要な要素です。週次レビューは、目標の達成度を測るためというよりは、目標達成に向けた軌道修正とコミュニケーションを目的としています。

    OKRの目標は、MBOと比較してより野心的で挑戦的なものです。週次で進捗を確認しなければ、四半期の終盤に「このままでは達成できない」と気づくことになり、手遅れになってしまいます。週1回のレビューは、以下のような点でOKRの目標設定と相性が良いとされています。

    • リアルタイムな軌道修正: OKRの目標は変化が激しい市場に対応するために、3ヶ月といった短い期間で設定されます。週次でレビューすることで、計画にずれが生じた際に、迅速に戦略や行動を調整できます。
    • モチベーションの維持: 毎週の進捗確認は、小さな達成感を積み重ねる機会となります。これにより、遠い目標へのモチベーションを保つことができます。
    • 透明性の向上: チーム全体で進捗を共有することで、誰が何に貢献しているのか、誰が助けを必要としているのかが明確になり、チームワークが促進されます。

    短期的な動きが少ない目標への適用

    ご指摘の通り、短期的には大きな進捗が見えにくい目標もあります。そうした目標でも、OKRは十分に適用可能です。

    • 長期的な目標を短期的なKRに分解する: たとえば、「新規事業の立ち上げ」という長期目標は、短期的には進捗が見えにくいかもしれません。しかし、これを「市場調査を完了させる」「プロトタイプを作成する」といった、週単位で進捗を測れる具体的なKR(主要な結果)に分解することで、目標の見える化が図れます。
    • 行動や学習の進捗を測る: もし定量的な結果がすぐに得られない場合でも、目標達成に向けた「行動」や「学習」の進捗を測ることをKRに設定できます。例えば、「新しいスキルに関する研修を週1回受講する」「顧客インタビューを月5件実施する」などです。

    このように、OKRは常に「挑戦」と「学習」のサイクルを回すことを重視するため、週次レビューは目標の性質にかかわらず、その運用に不可欠な要素と言えます。

    進捗確認は会議形式が必須ですか?

    OKRの進捗確認はシンプルなので、かならずしも対面会議やテレビ会議にする必要はなく、メールのやり取りやLINEなどでできそうな気がしますが。

    進捗確認をメールやLINEで済ませたいというお気持ちはよくわかります。しかし、OKRの進捗確認は、原則として会議形式(対面またはオンライン)で行うべきです。 簡潔なやり取りでは見過ごされてしまう、OKR運用の核心部分があるからです。

    OKRの進捗確認を会議で行うべき理由

    OKRの週次レビューは、単なる進捗報告の場ではありません。その目的は、「対話」と「協働」にあります。

    1. 問題の早期発見と軌道修正:メールやLINEでは、進捗が遅れている理由や、目標達成を阻んでいる障害を深く掘り下げることができません。会議では、「なぜうまくいっていないのか?」という本質的な問いを投げかけ、チーム全員で解決策をブレインストーミングできます。これにより、軌道修正を迅速に行い、手遅れになるのを防ぎます。
    2. チーム間の連携強化:OKRは、チーム全体で共通の目標を達成することを目指しています。週次の会議では、各メンバーの進捗を共有し、お互いの状況を把握できます。これにより、「あの人がこのタスクで困っているなら、私が手伝おう」といった助け合いが自然に生まれ、チームワークが強化されます。
    3. モチベーションの維持と感謝の共有:会議では、小さな成果でも全員で共有し、称賛し合えます。これは、単なるテキストメッセージでは伝わりにくい、ポジティブなエネルギーを生み出します。誰かが大きな貢献をしたときには、それをチーム全員で認めることで、個人のモチベーションが向上し、一体感も高まります。

    メールやLINEでのやり取りは、あくまで会議で話し合った内容の補足や、緊急時の連絡手段として活用するのがよいでしょう。OKRを形骸化させず、組織の推進力として最大限に活用するためには、週に一度、数分でもよいので、顔を合わせて対話する時間を設けることを強くおすすめします。

    経営層はどのように参加しますか?

    OKR(Objectives and Key Results)の運用において、経営層が週次レベルで進捗状況を確認することは、必須ではありませんが、非常に重要です

    経営層のレビューが必要な理由

    OKRの目的は、組織全体の目標達成に向けた協調性を高めることです。経営層が定期的にレビューに参加することで、以下の効果が期待できます。

    • 全社の進捗把握と戦略調整: 経営層が各チームのOKR進捗を直接確認することで、全社の目標達成状況を把握できます。もし、特定の目標が遅れている場合は、リソースの再配分や戦略の変更といった重要な意思決定を迅速に行えます。
    • 組織のコミットメントを示す: 経営層がOKRに積極的に関わる姿勢は、社員に「この目標は会社全体で真剣に取り組むべきことだ」というメッセージを伝えます。これは、OKRが形骸化するのを防ぐ上で大きな効果があります。
    • コミュニケーションの円滑化: 経営層と各チームが直接対話することで、階層を超えたスムーズなコミュニケーションが生まれ、組織の風通しが良くなります。

    フィードバックは各チームに届けるか

    はい、経営層のレビュー内容は、必ず各チームにフィードバックされるべきです

    OKRの透明性という原則に基づき、経営層からのフィードバックは、チームの進捗に対する評価や、次の四半期に向けた期待、あるいは全社的な戦略変更の意図などを明確に伝える貴重な機会となります。

    このフィードバックは、チームが自分たちの仕事が会社全体にどう貢献しているかを理解するのに役立ち、次の目標設定をより効果的に行うための重要な情報となります。

    結論として、経営層がOKRに積極的に関与し、その結果を適切にフィードバックすることで、OKRは単なる目標管理ツールを超え、組織全体のコミュニケーションと戦略実行を強力に推進するフレームワークとして機能します。


    関連記事:目標管理制度とはどんな制度か?その目的は、メリットとデメリットは

    会社事務入門評価制度のあらまし>このページ

  • 目標管理制度とはどんな制度か?その目的は、メリットとデメリットは

    目標管理制度とは

    目標管理制度とはどんな制度か、目標管理制度を導入する目的、メリットとデメリットを解説してください。

    目標管理制度(MBO: Management by Objectives)は、従業員一人ひとりが自分で目標を設定し、その達成度で評価する仕組みです。

    これは、ただ上司から与えられた目標をこなすのではなく、個人の自律的な成長と組織全体の目標達成を同時に目指すことを目的としています。

    導入する目的

    目標管理制度を導入する主な目的は以下の3つです。

    1. 組織目標と個人目標の連動: 会社の大きな目標を、各部署や個人の具体的な目標に落とし込むことで、社員全員が同じ方向を向いて働くように促します。
    2. モチベーションと自律性の向上: 自分で目標を決めることで、「やらされ感」が減り、社員は主体的に仕事に取り組むようになります。これにより、モチベーションが高まり、自己成長にもつながります。
    3. 公平な評価: 漠然とした評価ではなく、設定した目標の達成度という客観的な基準で評価することで、評価の公平性と透明性を高めます。

    メリットとデメリット

    メリット

    • 従業員の主体性が高まる: 自分で立てた目標に向かって努力するため、仕事への当事者意識が向上します。
    • 評価の納得度が高まる: 評価基準が明確なので、評価結果に納得しやすくなります。
    • 組織のパフォーマンスが向上する: 全員が共通の目標に向かって努力することで、組織全体の成果が向上します。

    デメリット

    • 形骸化するリスク: 面談や目標設定が形式的になり、本来の目的が失われることがあります。
    • 短期的な成果に偏る可能性: 定量的な目標を重視しすぎるあまり、チームワークや長期的な成長といった、数値化しにくい部分がおろそかになることがあります。
    • 適切な目標設定の難しさ: 高すぎる目標はモチベーション低下を招き、低すぎる目標は成長を妨げます。適切な難易度の目標を個人や上司が設定することが難しい場合があります。

    主体的な目標設定が重要

    「自分で目標を設定し」と言いますが実際は上司との面談で決まりますよね

    ご指摘の通り、目標管理制度(MBO)の実態として、上司との面談で目標が決まることが多いのは事実です。それは決して悪いことではありません。しかし、そのプロセスには「何のために面談を行うか」という目的が重要になります。

    上司との面談は「対話」であるべき

    目標管理制度がうまく機能している企業では、上司との面談は単に上司が目標を「与える」場ではなく、「対話を通じて目標をすり合わせる」場になっています。

    1. 自己分析の共有: まず、あなたが仕事で何を目指しているのか、どんなスキルを身につけたいのかを上司に伝えます。
    2. 会社の目標との接続: 上司は、あなたの考えを踏まえつつ、部署や会社が今、何を重要視しているのかを説明します。
    3. 目標の調整と合意: お互いの考えをすり合わせ、最終的に納得できる目標を一緒に決めます。

    このように、上司が一方的に決めるのではなく、本人の意見が反映され、最終的に「自分で納得して決めた」と思えることが重要です。このプロセスを経て設定した目標は、単に上司に指示された目標よりも、はるかに高いモチベーションにつながります。

    避けるべき「いけない」面談

    逆に、以下のような面談は、目標管理制度の本来の目的から外れてしまうため、避けるべきです。

    • 「ノルマの通達」: 上司が一方的に厳しいノルマを課し、あなたがそれに従うだけになるケース。これでは「目標管理」ではなく「管理」だけになってしまいます。
    • 「形だけの儀式」: 毎年同じ目標を使い回したり、お互いが深く考えずに形式的に終わらせたりするケース。これは、モチベーション向上や成長には繋がりません。

    目標管理制度は、上司と部下が協力してキャリアや成長について話し合うためのツールであり、その対話を通じて「自分の目標」を明確にすることが最も大切なのです。

    形骸化をどう防ぐか

    デメリットのところで解説していただいた通り、当社においても「形骸化」が指摘されています。いろいろ働きかけてきましたが、基本的には甘い目標を設定しようとする傾向が止まりません。目標管理廃止論もでていますが、アドバイスをお願いします。

    ご指摘の通り、目標管理制度(MBO)が形骸化し、甘い目標設定が蔓延するという問題は、多くの企業で共通の課題です。目標管理を単なる評価のための事務手続きと捉えると、こうした傾向は避けられません。目標管理の「廃止」を考える前に、まずその目的を再定義することをおすすめします。

    なぜ「甘い目標」を設定するのか?

    目標設定が甘くなる背景には、いくつかの心理的な要因があります。

    • 評価への恐怖: 達成が難しい目標を立てて失敗するよりも、確実に達成できる目標を立てて高い評価を得たいという心理が働きます。
    • 手間を省きたい: 意味のある目標を真剣に考えるのが面倒だと感じ、過去の目標を流用したり、形式的な目標で済ませたりする傾向があります。
    • 管理職の指導力不足: 部下と目標について深く対話する時間やスキルがなく、部下の提案をそのまま承認してしまう、あるいは一方的に簡単な目標を割り振ってしまうケースです。

    目標管理を「機能させる」ためには

    目標管理制度を復活させ、本来の目的を果たすためのアプローチは、制度そのものを変えるよりも、「運用」の仕方と「目的」の認識を変えることにあります。

    1. 「評価」から「成長」に目的をシフトする
      • 目標管理制度の最大の目的を「社員の能力開発と成長」であると、経営層が明確に打ち出しましょう。評価はあくまでその結果に過ぎません。
      • 目標達成率だけでなく、目標に向かってどのようなプロセスで努力したか、何から学びを得たかを評価の重要な要素に加えます。
    2. 対話の質を高める
      • 目標設定面談を年2回ではなく、四半期ごとなど定期的に行うようにします。進捗をこまめに確認し、目標が現状に合わなくなったら見直す柔軟な運用が大切です。
      • 上司と部下が「目標は一緒に創り上げるもの」という共通認識を持ちます。上司はコーチやメンターとして、部下のキャリアプランを踏まえて目標設定をサポートします。
    3. 目標の「ストレッチ度合い」を見直す
      • 「挑戦的だが達成可能」な目標を設定する文化を醸成します。これを「ストレッチ目標」と呼びます。
      • 目標の難易度に応じて評価を調整する仕組みを導入します。例えば、100%達成した時の評価基準を、単に「A評価」とするのではなく、「挑戦的な目標を100%達成した場合」と「簡単な目標を100%達成した場合」で明確に分けます。

    目標管理制度を補完する新たな選択肢

    OKR(Objectives and Key Results)の導入

    もし、目標管理制度そのものの再設計が必要であれば、OKR(Objectives and Key Results)の導入を検討するのも一つの手です。

    OKRは、MBOよりもさらに挑戦的な目標設定と、組織全体での透明な情報共有を重視するフレームワークです。

    • Objectives(目標): 「社員のモチベーションを最高レベルに高める」のように、定性的で野心的な目標を設定します。
    • Key Results(主要な結果): その目標を達成したか測るための「鍵となる結果」を3~5個、定量的に設定します。「従業員満足度を80%に向上させる」などです。

    OKRは報酬評価と切り離して運用されることが多く、四半期など短いサイクルでレビューするため、目標が形骸化しにくいという利点があります。OKRは、MBOの弱点である「甘い目標設定」や「評価との結びつきすぎ」を補完する強力なツールとなり得ます。

    あなたの会社では、目標管理を「ノルマ管理」から「自律的な成長と対話の機会」へと変えることが、目標管理制度廃止論に対する最善の答えとなるでしょう。

    目標管理を報酬評価から切り離すのであれば、従来の評価システムを復活させることになり、目標管理を続ける意味がなくなる、と懸念するのですが・・・、いかがでしょうか。

    目標管理を報酬評価から完全に切り離すことに対する懸念は理解できます。たしかに、目標管理制度(MBO)の多くの利点は、成果が評価と報酬に結びつくことによって生まれてきました。

    しかし、目標管理を報酬から切り離す意味は、「報酬を基準にした甘い目標設定」という根本的な問題を解決し、本来の目的である「個人の成長と組織への貢献」に立ち返ることにあります。

    報酬と目標管理の新しい関係性

    目標管理を評価から切り離すという考え方は、報酬評価の仕組みをなくすことではありません。むしろ、報酬を決める別の評価軸を明確にすることが重要です。

    1. 報酬評価の新たな軸

    目標管理制度が報酬から切り離された場合、企業は、社員の報酬を決めるために別の評価軸を設けることになります。これには、主に以下の要素が考えられます。

    • 職務遂行能力: 職務給の考え方に基づき、担当する職務の価値や、その職務を遂行するために必要なスキル・知識のレベルを評価します。
    • コンピテンシー(行動特性): 会社が求める行動様式(例:チームワーク、リーダーシップ、問題解決能力など)をどの程度体現しているかを評価します。
    • 企業の価値観との一致: 会社のミッションやビジョンにどれだけ貢献しているかを評価します。

    2. 目標管理制度の本来の価値

    では、目標管理制度の役割は何になるのでしょうか。目標管理は、報酬を直接決めるのではなく、上記の新たな評価軸をより適切に評価するための「具体的なツール」となります。

    • キャリア開発のツール: 目標設定のプロセスは、社員が自身のキャリアや成長について深く考える機会となります。上司は、目標達成に向けたアドバイスやフィードバックを通じて、社員の成長をサポートするコーチ役を担います。
    • 能力開発の羅針盤: 例えば、「新しい技術を習得する」という目標を立てた場合、その進捗を管理することで、職務遂行能力の向上を客観的に示す証拠となります。

    つまり、目標管理は直接的な報酬決定要因ではなく、「成長の記録」「能力開発の証拠」として機能するのです。

    従来の評価システムとの違い

    この新しい考え方は、単に昔の評価システムに戻すわけではありません。

    従来の評価システム(例:年功序列や職能給のみ)では、個人の成果や貢献が賃金に反映されにくいという問題がありました。一方、報酬と切り離した目標管理制度は、以下の点で優れています。

    • 健全な目標設定: 報酬が直接かかっていないため、社員は失敗を恐れずに、より挑戦的で意欲的な目標を設定できるようになります。
    • 評価の公正性: 報酬は個人の能力や行動特性に基づいて決まり、目標管理は個人の成長を促すための別のツールとして機能します。それぞれの役割が明確になることで、評価制度全体の透明性と公正性が高まります。

    この新しいアプローチは、目標管理制度が「ノルマ達成のため」ではなく、「個人と組織の成長」のために真に機能するよう、その目的を再定義する試みだと言えるでしょう。


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