任意特定適用事業所とは?短時間労働者の社会保険加入拡大の選択肢

社会保険

社会保険の任意特定適用事業所とは

社会保険の任意特定適用事業所とは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用拡大の対象となる基準を満たしていない事業所のうち、労使の合意に基づいて任意で適用拡大の対象とした事業所のことを指します。

主なポイントは以下の通りです。

対象となる事業所

厚生年金保険の被保険者(既に社会保険に加入している従業員)の総数が、特定適用事業所の基準に満たない事業所です。

特定適用事業所とは

特定適用事業所の基準(2025年10月)は、51人からです。

【注意点】

  • カウントする人数: 単なる全従業員数ではなく、厚生年金保険の被保険者の総数で判断します。具体的には、正社員や週の所定労働時間・日数が正社員の4分の3以上の従業員の合計です。
  • 判断の基準: 1年のうち6ヶ月間以上、この基準(51人以上)を超えることが見込まれる企業等が対象となります。
  • 法人単位: 法人の場合、同一の法人番号を有する全事業所の被保険者数を合算して判断します。

特定適用事業所の基準を満たさない企業が、任意特定適用事業所になることができます。

目的

本来は社会保険の適用拡大の対象外である企業でも、短時間労働者(パート・アルバイトなど)を社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させることを可能にする制度です。

適用要件

適用条件は2つです。

  • 短時間労働者が社会保険に加入することについて、労使合意(従業員の過半数で組織する労働組合または従業員の過半数を代表する者の同意)があること。
  • 事業主が年金事務所等に申し出を行うこと。

「任意特定適用事業所」として事業所全体が社会保険の適用拡大の対象となった場合、その事業所で働く短時間労働者は、原則として本人の意思に関わらず加入が強制されます。

ポイントは以下の通りです。

  1. 事業所単位での適用「任意特定適用事業所」は、事業所全体で短時間労働者の社会保険加入の適用を受けるための制度です。個々の労働者が「入る」「入らない」を自由に選択できる制度ではありません。
  2. 労使合意の役割「労使合意」は、この事業所を適用拡大の対象とするかどうかを決める手続きです。
    • この合意は、「同意対象者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合の同意」または「同意対象者の2分の1以上の同意」など、従業員の意見が反映される仕組みになっています。
  3. 加入要件を満たせば強制加入一度「任意特定適用事業所」として認定されると、その事業所で働く短時間労働者のうち、以下のすべての要件を満たす人は、被保険者資格を取得し、社会保険への加入が義務となります。
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
    • 賃金の月額が8.8万円以上であること。
    • 2ヶ月を超える雇用の見込みがあること。
    • 学生でないこと。

効果

申し出が受理され「任意特定適用事業所」となると、その事業所に使用される短時間労働者のうち、一定の要件(週の所定労働時間が20時間以上、賃金月額が8.8万円以上など)を満たす方が、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。

従業員側から「社会保険に入りたい」という要望がある場合や、人材確保の観点から福利厚生を充実させたいと考える企業が、この制度を利用することがあります。