OKR(Objectives and Key Results)とは?わかりやすく解説

Last Updated on 2025年9月13日 by

OKRとは

OKR(Objectives and Key Results)のあらまし、具体的な進め方を教えてください。

OKR(Objectives and Key Results)は、「目標」と「主要な結果」という2つの要素で構成される、組織の目標設定・管理フレームワークです。

従来の目標管理制度(MBO)が個人の目標達成度を評価に使うことが多いのに対し、OKRは組織全体の高い目標達成と、メンバー間の連携を促進することに重点を置いています。

OKRのあらまし:OKRの3つの特徴

  1. 挑戦的な目標設定OKRの「O(Objectives)」は、達成が難しい、意欲的な目標を設定します。達成度は60~70%が理想とされ、100%達成は非常に稀です。これにより、メンバーは現状維持ではなく、常に成長を目指すことができます。
  2. 透明性の確保OKRは、経営層から社員まで、すべてのメンバーの目標が全社で公開されます。これにより、全員が「今、会社がどこに向かっているのか」「自分の仕事がどう貢献しているのか」を理解しやすくなります。
  3. 短いサイクルでの運用OKRは、四半期(3か月)などの短い期間で設定・見直しを行います。これにより、市場や環境の変化に迅速に対応でき、計画の修正が容易になります。

OKRの具体的な進め方

OKRは、以下の4つのステップでサイクルを回していきます。

ステップ1:組織全体のOKRを設定する

まず、経営層が「今四半期で最も重要なこと」を話し合い、全社共通のOKRを設定します。

  • 【O】:例)製品Aを業界のトップに押し上げる。
  • 【KR】
    • KR1:月間アクティブユーザー数(MAU)を100万人に増やす。
    • KR2:顧客満足度調査で5点満点中4.5点を達成する。
    • KR3:製品のレビューで「使いやすさ」に関する言及を20%増やす。

ステップ2:チーム・個人のOKRを設定する

全社OKRをもとに、各部署やチーム、そして個人のOKRを策定します。

  • 【チームOKR】(例:マーケティングチーム)
    • 【O】:製品Aの市場での認知度を圧倒的に高める。
    • 【KR】:
      • KR1:ウェブサイトの新規訪問者数を月間50万人に増やす。
      • KR2:SNSフォロワー数を2倍にする。
      • KR3:主要メディアに製品Aに関する記事を5本掲載する。
  • 【個人OKR】(例:ウェブ担当者)
    • 【O】:ウェブサイトの新規訪問者を増やす。
    • 【KR】:
      • KR1:SEO対策で主要キーワードの検索順位を10位以内に上げる。
      • KR2:ブログ記事を週2本公開する。

このように、上位のOKRと下位のOKRが連鎖するように設定されるのが特徴です。

ステップ3:週次チェックイン(進捗確認)

OKRを設定したら、週に一度、チームや個人で進捗状況を確認します。

  • 「今週の進捗はどうか?」
  • 「達成を妨げているものは何か?」
  • 「来週は何にフォーカスすべきか?」この短いミーティング(チェックイン)を通じて、目標達成に向けた軌道修正を行います。

ステップ4:四半期ごとのレビュー(成果の振り返り)

四半期の終わりに、設定したOKRの達成度を振り返ります。

  • OとKRはどの程度達成できたか?
  • なぜ達成できたのか? / なぜ達成できなかったのか?
  • 次の四半期の目標は何か?

このレビューで達成度を確認し、次のOKRサイクルへとつなげます。評価はあくまで学びと成長のために行われ、報酬とは基本的に切り離して運用されます。

なぜ週1のレビューが必要ですか?

OKRの目標は、週1度のレビューが必要なくらいの目標を設定するのが普通ですか。短期的には動きが少ない目標設定はなじみませんか。

OKRにおいて、目標の進捗を週1回レビューするのは、目標管理を成功させる上で非常に重要な要素です。週次レビューは、目標の達成度を測るためというよりは、目標達成に向けた軌道修正とコミュニケーションを目的としています。

OKRの目標は、MBOと比較してより野心的で挑戦的なものです。週次で進捗を確認しなければ、四半期の終盤に「このままでは達成できない」と気づくことになり、手遅れになってしまいます。週1回のレビューは、以下のような点でOKRの目標設定と相性が良いとされています。

  • リアルタイムな軌道修正: OKRの目標は変化が激しい市場に対応するために、3ヶ月といった短い期間で設定されます。週次でレビューすることで、計画にずれが生じた際に、迅速に戦略や行動を調整できます。
  • モチベーションの維持: 毎週の進捗確認は、小さな達成感を積み重ねる機会となります。これにより、遠い目標へのモチベーションを保つことができます。
  • 透明性の向上: チーム全体で進捗を共有することで、誰が何に貢献しているのか、誰が助けを必要としているのかが明確になり、チームワークが促進されます。

短期的な動きが少ない目標への適用

ご指摘の通り、短期的には大きな進捗が見えにくい目標もあります。そうした目標でも、OKRは十分に適用可能です。

  • 長期的な目標を短期的なKRに分解する: たとえば、「新規事業の立ち上げ」という長期目標は、短期的には進捗が見えにくいかもしれません。しかし、これを「市場調査を完了させる」「プロトタイプを作成する」といった、週単位で進捗を測れる具体的なKR(主要な結果)に分解することで、目標の見える化が図れます。
  • 行動や学習の進捗を測る: もし定量的な結果がすぐに得られない場合でも、目標達成に向けた「行動」や「学習」の進捗を測ることをKRに設定できます。例えば、「新しいスキルに関する研修を週1回受講する」「顧客インタビューを月5件実施する」などです。

このように、OKRは常に「挑戦」と「学習」のサイクルを回すことを重視するため、週次レビューは目標の性質にかかわらず、その運用に不可欠な要素と言えます。

進捗確認は会議形式が必須ですか?

OKRの進捗確認はシンプルなので、かならずしも対面会議やテレビ会議にする必要はなく、メールのやり取りやLINEなどでできそうな気がしますが。

進捗確認をメールやLINEで済ませたいというお気持ちはよくわかります。しかし、OKRの進捗確認は、原則として会議形式(対面またはオンライン)で行うべきです。 簡潔なやり取りでは見過ごされてしまう、OKR運用の核心部分があるからです。

OKRの進捗確認を会議で行うべき理由

OKRの週次レビューは、単なる進捗報告の場ではありません。その目的は、「対話」と「協働」にあります。

  1. 問題の早期発見と軌道修正:メールやLINEでは、進捗が遅れている理由や、目標達成を阻んでいる障害を深く掘り下げることができません。会議では、「なぜうまくいっていないのか?」という本質的な問いを投げかけ、チーム全員で解決策をブレインストーミングできます。これにより、軌道修正を迅速に行い、手遅れになるのを防ぎます。
  2. チーム間の連携強化:OKRは、チーム全体で共通の目標を達成することを目指しています。週次の会議では、各メンバーの進捗を共有し、お互いの状況を把握できます。これにより、「あの人がこのタスクで困っているなら、私が手伝おう」といった助け合いが自然に生まれ、チームワークが強化されます。
  3. モチベーションの維持と感謝の共有:会議では、小さな成果でも全員で共有し、称賛し合えます。これは、単なるテキストメッセージでは伝わりにくい、ポジティブなエネルギーを生み出します。誰かが大きな貢献をしたときには、それをチーム全員で認めることで、個人のモチベーションが向上し、一体感も高まります。

メールやLINEでのやり取りは、あくまで会議で話し合った内容の補足や、緊急時の連絡手段として活用するのがよいでしょう。OKRを形骸化させず、組織の推進力として最大限に活用するためには、週に一度、数分でもよいので、顔を合わせて対話する時間を設けることを強くおすすめします。

経営層はどのように参加しますか?

OKR(Objectives and Key Results)の運用において、経営層が週次レベルで進捗状況を確認することは、必須ではありませんが、非常に重要です

経営層のレビューが必要な理由

OKRの目的は、組織全体の目標達成に向けた協調性を高めることです。経営層が定期的にレビューに参加することで、以下の効果が期待できます。

  • 全社の進捗把握と戦略調整: 経営層が各チームのOKR進捗を直接確認することで、全社の目標達成状況を把握できます。もし、特定の目標が遅れている場合は、リソースの再配分や戦略の変更といった重要な意思決定を迅速に行えます。
  • 組織のコミットメントを示す: 経営層がOKRに積極的に関わる姿勢は、社員に「この目標は会社全体で真剣に取り組むべきことだ」というメッセージを伝えます。これは、OKRが形骸化するのを防ぐ上で大きな効果があります。
  • コミュニケーションの円滑化: 経営層と各チームが直接対話することで、階層を超えたスムーズなコミュニケーションが生まれ、組織の風通しが良くなります。

フィードバックは各チームに届けるか

はい、経営層のレビュー内容は、必ず各チームにフィードバックされるべきです

OKRの透明性という原則に基づき、経営層からのフィードバックは、チームの進捗に対する評価や、次の四半期に向けた期待、あるいは全社的な戦略変更の意図などを明確に伝える貴重な機会となります。

このフィードバックは、チームが自分たちの仕事が会社全体にどう貢献しているかを理解するのに役立ち、次の目標設定をより効果的に行うための重要な情報となります。

結論として、経営層がOKRに積極的に関与し、その結果を適切にフィードバックすることで、OKRは単なる目標管理ツールを超え、組織全体のコミュニケーションと戦略実行を強力に推進するフレームワークとして機能します。


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