評価を昇給に反映する

Last Updated on 2025年9月9日 by

賃金表を作る

人事考課を昇給に反映させるには、賃金表が作られていて、従業員それぞれの賃金が賃金表のどこかに位置づけられていることが前提になります。

職能給制度で用いられる賃金表は、一般的に「等級」と「号俸」の2つの軸で構成されるマトリクス(二次元表) 形式で示されます。この表は、従業員の能力(職能)を等級で分類し、さらにその等級内での習熟度や評価結果を号俸で細かく表現するものです。

以下に、職能給制度で使われる一般的な賃金表の構造を、概念的な例として示します。

賃金表の一般的な構造

この表は、等級(社員の職能ランク) と号俸(等級内の細かなステップ) に応じた月額基本給のモデルです。

号俸1級(一般社員)2級(係長クラス)3級(課長代理クラス)4級(課長クラス)5級(部長クラス)
10号¥220,000¥270,000¥350,000¥450,000¥550,000
9号¥215,000¥265,000¥345,000¥445,000¥545,000
8号¥210,000¥260,000¥340,000¥440,000¥540,000
7号¥205,000¥255,000¥335,000¥435,000¥535,000
6号¥200,000¥250,000¥330,000¥430,000¥530,000
5号¥195,000¥245,000¥325,000¥425,000¥525,000
4号¥190,000¥240,000¥320,000¥420,000¥520,000
3号¥185,000¥235,000¥315,000¥415,000¥515,000
2号¥180,000¥230,000¥310,000¥410,000¥510,000
1号¥175,000¥225,000¥305,000¥405,000¥505,000

表の見方

  • 等級(縦軸): 従業員の職務遂行能力や求められる役割のレベルを示します。一般的に、等級が上がるほど、職務の難易度や責任が大きくなり、基本給も上がります。例では、1級が新入社員や一般社員、5級が管理職の最上位クラスを想定しています。
  • 号俸(横軸): 同じ等級内での能力の熟練度や、人事考課の結果を反映させるための細かなステップです。号俸は通常、毎年人事考課の結果に応じて1〜数号ずつ上がります。これにより、同じ等級の社員でも、評価や経験年数によって給与に差をつけることができます。

職能給賃金表の主な特徴

  • 能力主義: 等級は、職務内容ではなく「社員が持つ能力」によって決定されます。そのため、同じ職務についている社員でも、能力が認められれば上の等級に昇格する可能性があります。
  • 安定性: 1号俸あたりの昇給額は比較的固定されているため、給与の予測がしやすくなります。
  • 昇給の仕組み: 毎年、人事考課の結果に基づいて、どのくらい号俸が上がるかが決定されます。前回の回答で示したように、「評価Sなら4号アップ、評価Bなら2号アップ」といった形で運用されます。

この賃金表はあくまで概念的な例であり、実際の金額、等級数、号俸幅は企業や業界、地域によって大きく異なります。また、基本給に加えて、役職手当や住宅手当、家族手当などが別途支給されるのが一般的です。

評価を参考に昇給幅を決定する

一般的に、職能給制度における人事考課の結果は、従業員の等級と評価に応じて、次年度の号俸昇給に反映されます。号俸昇給の仕組みは企業によって異なりますが、ここでは一般的なモデルを提示します。

職能給制度の一般的なモデル

この表は、人事考課の評価ランク(S、A、B、C、D) と、社員の等級(1級~5級) に応じて、次年度に何号の号俸がアップするかを示しています。

等級S評価(特進)A評価(優秀)B評価(標準)C評価(努力)D評価(降給)
5級5号4号3号2号0号
4級5号4号3号2号0号
3級5号4号3号2号0号
2級4号3号2号1号0号
1級4号3号2号1号0号

表の見方

  • S評価(特進): 非常に優秀な成績を収めた社員で、標準よりも大幅に高い昇給となります。
  • A評価(優秀): 期待を上回る成果を出した社員で、標準よりも高い昇給となります。
  • B評価(標準): 期待通りの成果を出した社員で、一般的な昇給となります。
  • C評価(努力): 改善が必要な点があった社員で、昇給幅が抑えられます。
  • D評価(降給): 評価が著しく低かった社員で、昇給は見送られ、場合によっては号俸が下がる(降給)こともあります。

号俸とは、基本給を細かく分けた単位で、号俸が1つ上がると給与が一定額増えます。上記の表では、等級が高いほど、そして評価が高いほど、アップする号俸数が増えるのが一般的です。

この表はあくまで一例であり、実際の昇給ルールは企業の人事制度によって大きく異なります。企業によっては、号俸昇給のほかに、等級そのものが上がる昇格や、基本給を大きく見直すベースアップと組み合わせることもあります。

運用は慎重に

評価制度が動き出すと、制度が独り歩きしがちです。100%完璧な評価制度というものは無いけれども、何らかの方法で従業員の仕事振りを判定しなければならない。ほかに適切な方法が見当たらないので、便宜的に今の評価制度を実施している。という現実を、経営者は忘れてはいけません。

よって、上がってきた評価結果を、経営者の目で吟味し、時には修正を加えることも経営者の仕事になります。ドラスティックな変化を与えることが、発奮するきっかけになれば良いのですが、やる気を失う、反発するだけの結果になることもあります。よい人には高リターンを、よくない人にはその反対、評価制度はそういう方向を指し示していますが、経営者は、その結果が、当人やまわりに与える影響まで考えを及ぼさなければなりません。

せっかく評価制度を実施した以上、その結果を賃金に反映しなければならないと思い込んでしまうと、意に反して不満足な結果に終わることがあります。管理職の努力を無にすることなく、評価される人へのショックをやわらげ、全体として組織の底上げをはかる、経営者の手腕が期待される場面です。


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