賃金体系について

賃金・賃金制度

賃金体系とは

賃金体系は、企業が従業員に支払う賃金の額や決定方法に関するルールや仕組みを定めたものです。これは、単に給料を決めるだけでなく、従業員のモチベーションや生産性、そして企業の経営戦略に深く関わる重要な要素です。

賃金体系の主な要素

賃金体系は、主に以下の3つの要素で構成されています。

基本給

賃金の核となる部分で、労働時間や能力、職務などに応じて支払われるものです。

  • 年齢給:年齢に応じて基本給が上がる仕組み。
  • 勤続給:勤続年数に応じて基本給が上がる仕組み。
  • 職能給:従業員の能力や技能の習熟度に応じて基本給が上がる仕組み。多くの日本企業で採用されています。
  • 職務給:担当する職務の価値や責任の重さに応じて基本給が上がる仕組み。成果主義的な考え方で、外資系企業や大手企業でよく見られます。

諸手当

基本給に加えて支払われるもので、特定の条件を満たす場合に支給されます。

  • 役職手当:管理職や役職についた場合に支給される。
  • 家族手当:扶養家族がいる場合に支給される。
  • 通勤手当:通勤にかかる費用を補助する。
  • 住宅手当:住居にかかる費用を補助する。

賞与

  • ボーナスとも呼ばれ、企業の業績や個人の貢献度に応じて支給される、定期的な賃金とは別に支払われるものです。
  • 企業の利益を従業員に還元することで、モチベーション向上や一体感を高める目的があります。

賃金体系の役割

賃金体系は、以下の3つの重要な役割を担っています。

  • 労働力の確保と定着: 魅力的な賃金体系は、優秀な人材を獲得し、長く働いてもらうために不可欠です。
  • 従業員のモチベーション向上: 公平で透明性のある賃金体系は、従業員のやる気を引き出し、生産性を高めます。
  • 企業の経営目標達成: 賃金体系を経営戦略と連動させることで、企業の成長や目標達成に貢献します。

現代では、年功序列型から成果主義型への移行が進んでおり、個々の能力や成果をより重視する賃金体系が増えています。これは、グローバルな競争力を高めるためや、多様な働き方に対応するための一環です。

関連記事:

賃金体系は賃金規程で示す

賃金規程に賃金体系を記載する際のサンプルは、企業の規模や業種、どのような賃金制度を導入しているかによって大きく異なります。ここでは、一般的な中小企業で用いられることの多い、基本給、諸手当、賞与から構成される賃金体系を例に、賃金規程に記載する際のサンプルをご紹介します。


第〇条(賃金の種類)

賃金は、以下の通りとする。

  1. 基本給
  2. 諸手当
  3. 賞与

第〇条(基本給)

基本給は、従業員の職務遂行能力、経験年数、勤続年数などを総合的に勘案し、会社が定める基準に基づいて決定する。

昇給は、原則として毎年〇月に、前年度の勤務成績および職務遂行能力を評価の上、決定する。

第〇条(諸手当)

以下の手当を基本給に加算して支給する。

  1. 役職手当:役職に応じて、別途定める基準に基づき支給する。
  2. 通勤手当:通勤に要する実費を、会社が定める限度額の範囲内で支給する。
  3. 時間外勤務手当:所定労働時間を超えて労働した時間に対し、労働基準法に基づき算定した額を支給する。
  4. 休日勤務手当:所定休日に労働した場合、労働基準法に基づき算定した額を支給する。
  5. 深夜勤務手当:午後10時から午前5時までの間に労働した場合、労働基準法に基づき算定した額を支給する。
  6. その他:その他、会社が必要と認めた場合は、別途定める手当を支給することがある。

第〇条(賞与)

賞与は、原則として毎年〇月、〇月の年2回、会社の業績と個人の勤務成績を勘案して支給の有無、および支給額を決定する。

2 支給日、支給額の算定方法、その他詳細については、その都度、会社が定めるものとする。


作成する上でのポイント

  • 具体的な金額は記載しない: ここでは、賃金規程に具体的な金額を記載しない例を示しましたが、手当について、具体的な金額を記載する会社もあります。
  • 労働基準法との整合性: 時間外勤務手当や休日勤務手当など、労働基準法で定められている賃金については、法律に準拠した内容を記載することが不可欠です。具体的に割増率等を記載する会社もあります。
  • 専門家への相談: 賃金規程の作成は、労働関連法令の知識が必要となるため、社会保険労務士などの専門家に相談して作成することをお勧めします。

このサンプルはあくまで一例です。御社の状況に合わせて内容を調整し、従業員が納得できる公平な賃金体系を規程に反映させることが重要です。