役割給とは?どんな賃金制度と組み合わせて運用されるか?

Last Updated on 2025年9月16日 by

役割給とは

役割給は、従業員が担当する「役割」の重要性や難易度、貢献度に応じて賃金を決定する制度です。職務給が「仕事内容そのもの」に焦点を当てるのに対し、役割給は「その仕事に期待される責任や成果」に重きを置く点が特徴です。

役割給の仕組み

役割給は、個々の従業員の能力や年齢ではなく、組織内での役割をランク付けし、そのランクごとに賃金テーブルを設定します。たとえば、「チームリーダー」という役割は「メンバー」よりも上位のランクとなり、賃金も高くなります。

  • メリット:
    • 従業員がより大きな役割を担おうとする意欲を高めます。
    • 年齢や勤続年数に関係なく、責任ある役割を果たせば高い給与を得られるため、優秀な若手人材の確保につながります。
    • 仕事の価値に応じて賃金が決まるため、同一労働同一賃金の考え方と親和性が高いです。
  • デメリット:
    • 役割のランク付けや評価基準が曖昧になりがちで、従業員の納得感が得にくい場合があります。
    • 役割が変わらない限り賃金が上がらないため、安定志向の従業員には不満が生じる可能性があります。

役割給の運用方法

役割給が単独で運用されることはほとんどありません。多くの企業では、他の賃金制度と組み合わせて運用されるのが一般的です。

組み合わせられる主な賃金制度

  • 役割給 + 職能給: 役割(仕事の難易度)で基本給を定めつつ、個人のスキルや能力の向上を職能給として加算するハイブリッド型です。個人の成長を促しつつ、役割の大きさも評価できます。
  • 役割給 + 成果給: 役割給で職務の価値を固定的に評価し、それに加えて個人の業績や成果をボーナスや賞与で上乗せする制度です。
  • 役割給 + 年功給: 役割給を基本給の柱としつつ、勤続年数や年齢に応じて給与が緩やかに上がる年功的な要素を一部残すことで、社員の生活の安定と定着を促します。

このように、役割給は単独ではなく、他の制度と組み合わせることで、企業独自の経営方針や人材育成の目標に合った柔軟な賃金制度を構築するために利用されています。

今後の見通し

今後の見通しとしては、役割給は日本企業の賃金制度の主流の一つとして定着していくと考えられます。

役割給の優位性と課題

役割給の大きな優位性は、従業員が担当する役割の価値を直接的に賃金に反映できる点です。

  • 能力・成果の評価: 年齢や勤続年数に関係なく、責任ある役割を担い成果を出せば高い報酬を得られます。これは従業員の意欲向上につながり、優秀な若手人材の確保にも有効です。
  • 柔軟な組織運営: 企業は戦略に応じて役割を柔軟に設定でき、必要な人材を適切なポジションに配置しやすくなります。

一方で、役割給には課題もあります。

  • 評価の難しさ: 役割の重要性や難易度を客観的に評価する基準が曖昧になりがちで、従業員の納得感が得られない場合があります。
  • 安定性の欠如: 役割が変わらない限り賃金が上がらないため、安定志向の従業員には不安を与える可能性があります。役割が下がる場合には、減給も起こり得ます。

まとめ

多くの日本企業は、年功序列制度の限界に直面し、役割給をはじめとする「人」ではなく「仕事」に焦点を当てる賃金制度への移行を進めています。特に、職務内容を明確にするジョブ型雇用への関心が高まる中で、その賃金制度として役割給や職務給が導入されるケースが増えています。

結論として、役割給は、今後の日本企業が多様な働き方やグローバル競争に対応するための重要な選択肢として、他の制度と組み合わされながら、さらに普及していく見通しです。


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