役職手当について

賃金・賃金制度

役職手当とは

役職手当は管理職手当ともいいます。会社で責任のある地位に就いたときに支給される手当です。

役職手当の意味

会社が大きくなってくると、係という小さな組織ができ、いくつかの係が課の下にまとめられます。さらに、いくつかの課は部の下にまとめられます。この係、課、部などの組織単位に置かれる責任者のことを管理職(役職)と呼びます。

管理職は、自分が管轄する係、課、部などに配属された部下を指示して、仕事を進める責任を担います。

当然、タダというわけにはいかず、その責任に対して、対価として支払われるのが「役職手当」です。

残業手当との関係

管理職手当の対象者であっても、労働基準法上の管理監督者でなければ、時間外労働等をした分は時間外割増賃金等を支払わなければなりません。課長以上には残業手当を支払わない、と一律に決めている会社は、労働基準法に違反しているおそれがあります。

以前は、課長以上には残業手当を支給しない、というルールがよくみられました。役職手当には残業手当分も含まれているという考え方からです。しかし、役職手当が残業手当を含むものであれば、残業手当としては〇〇円で、それは〇時間分の残業手当に相当する、ことを明示しなければ認められません。

賃金に加算する手当

役職手当は基本給などと同様に、残業代計算の基礎単価に含まれます。なお、従業員が担う職務の責任や難易度に応じて支給される職務関連手当(危険手当、資格手当、勤務地手当等)も同様に基礎単価に含まれます。

役職手当は社会保険の標準報酬月額の計算に含まれる手当です。労働保険料の算定基礎に含まれる手当です。税法上は給与所得に該当するため所得税が加算されます。

役職手当の相場

役職手当をいくら払うべきかは、法律的な制限は何もないので、それぞれの会社によって違いがあります。

平社員のすぐ上にある役職は、一般的には「主任」というものです。手当の相場としては、月5000~10000位が多いでしょう。

主任の上は「係長」が一般的です。手当の相場としては、月10000~15000位が多いでしょう。

主任や係長の手当は、あまり多くないのが一般的です。これは、役職ではあるけれど、本格的な管理職の予備軍あるいは見習いのようなポジションに位置づけられているからです。

管理職としての実質的な権限が与えらるのは、課長からが多いようです。手当の相場も30000~50000円と多くなります。

課長の上は部長が一般的です。部長というのは、取締役のすぐ下、従業員としては一番上位のポストであることが多いです。手当の相場は、50000~100000円位になります。

規定例

均等・均衡待遇について

役職手当や管理職手当は、同一労働同一賃金ガイドラインに照らして問題になる可能性があります。

特に、正社員(通常の労働者)と非正社員(短時間・有期雇用労働者)の間で、役職や職務内容が同一または類似しているにもかかわらず、手当の支給の有無や金額に差を設けている場合に、その差が不合理と判断されるリスクがあります。

同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針)では、手当についても不合理な待遇差の解消を求めています。

役職手当の扱い

役職手当は、役職の内容に対して支給するものであるため、

  • 同一の内容の役職に就く非正社員には、正社員と同一の役職手当を支給しなければなりません。
  • 役職の内容に一定の相違がある場合は、その相違に応じた役職手当を支給する必要があります。
状況ガイドライン上の扱い例外(問題とならない例)
同一役職・同一内容の非正社員に、正社員より低い額を支給する。問題となる短時間労働者に、所定労働時間に比例した役職手当(例:労働時間半分の短時間労働者に半額の手当)を支給することは問題とならない。

【具体的な問題点】

  • 正社員の「店長」と、有期雇用労働者の「店長」(職務内容が同一)で、後者にのみ役職手当を支給しない、または低く設定している場合。

不合理な差と判断される理由

待遇差が「不合理」と判断されるのは、その差が「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲」「その他の事情」に照らして正当な理由がない場合です。

単に「正社員だから」「非正社員だから」という雇用形態の違いのみを理由に、手当の支給や金額に差を設けることは、原則として不合理と見なされます。

重要なのは、役職名ではなく、実際に担っている責任の重さ、権限の範囲、職務の難易度などの「役職の内容」に基づいた手当であるかどうかです。

対応策

企業は、役職手当や管理職手当の支給目的を明確にし、正社員と非正社員の職務内容・責任の程度を比較して、待遇差があればその差が合理的な理由に基づいているかを再点検する必要があります。

合理的でない差がある場合は、同一の内容の役職には同一の手当を支給するよう、制度を見直さなければなりません。