短時間労働者が社会保険に新たに加入したときの「保険料調整制度」について分かりやすく解説

2026年10月からスタートする「保険料調整制度」の仕組みについて解説します。

制度の全体像(特に「調整」の意味)

この制度は、パートやアルバイトなどの短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金)に新しく加入した際、急に手取りが減ってしまうのを防ぐため、「加入から3年間、本人の保険料を安くしてくれる」仕組みです。

通常の社会保険料は「本人 50% : 会社 50%」の折半ですが、この制度を使うと、例えば1〜2年目は「本人 25% : 会社 75%」のように、本人の負担が軽くなります。

この制度は「保険料調整制度」と呼ばれますが、具体的な流れは次のようになっています。

  1. 会社が一時的に多めに払う(追加負担)
    本来は本人が払うべき25%分も合わせた「75%分」の保険料を、会社が一旦まとめて日本年金機構に納付します。
  2. 国(助成金等)から会社へ精算される(これが「調整」)
    会社が多めに払った25%分について、後日、日本年金機構から会社側に還元・補填されます。
  3. 結果として
    会社が最終的に実質負担するお金は、通常の「50%」のままで変わりません(負担は増えません)。

つまり、「会社が一度立て替えて納付するけれど、後から戻ってくるので、会社のサイフは痛みませんよ」ということを「調整」という言葉で表現しています。

時期と手続きについて

  • いつ精算(調整)されるのか?
    納付したその場(毎月)ですぐに減額されるのではなく、一定期間ごとに会社へ支給・還付(または翌月の納付額と相殺)される形になります。
  • どのような手続きが必要か?
    この制度を利用するためには、自動適用ではなく、事業主が年金事務所へ「保険料調整制度利用の申し出(届出)」を行う必要があります。

補填の時期

1〜3ヶ月程度のタイムラグ(数ヶ月遅れ)を経て順次補填・精算されていくというイメージになります。

通知の仕組み

事業主が立て替えて多く納付した分が精算される際には、日本年金機構から通知されます。

この通知書には、主に以下の情報が記載されると考えられます。

  • 対象月(どの給与・納付月分の調整か):例「令和〇年〇月分保険料」
  • 対象従業員と調整額の内訳:どの従業員の軽減適用分か
  • 精算方法と時期:例「令和〇年〇月振替分の納付額から〇〇円を差引(充当)します」または「〇月〇日付けで指定口座へ振込(還付)します」

立て替えて多く支払っている期間の「事業主上乗せ負担分」は、会計上は「立替金」や「未収入金(助成金・調整金見返り)」などとして整理しておき、後日補填・相殺されたタイミングで相殺処理を行う形になります(担当の税理士や社労士へ処理方法をご確認ください)。

業務ソフトの対応

市販の主要な給与計算ソフトを利用している場合は、制度開始までにほぼ確実に「調整制度」に対応したシステムアップデートがあると考えられます。

主要な給与計算ソフトの対応

  1. 法令改正への対応は「標準機能」
  • 「マネーフォワード クラウド給与」「freee人事労務」「弥生給与」「奉行クラウド(勘定奉行)」「PCA給与」などの主要ソフトは、雇用保険率改定や標準報酬月額の等級追加など、法改正には毎回アップデートで対応しています。
  1. 算定基礎届・月額変更届(随時改定)との連動
  • 保険料調整制度を適用する際、従業員ごとの負担割合(例:本人25%:事業主75%)をセットで管理・印字する必要があるため、マスター設定画面などに「調整制度適用の有無」のチェック項目が追加される見込みです。

ソフトの対応イメージ

以下の対応があると考えられます。具体的なところは各ソフト会社からのご案内を参照してください。

  1. 従業員マスターへのフラグ設定
  • 「保険料調整制度:適用する/適用しない」を選択する設定項目が追加されます。
  1. 負担割合の自動セット
  • フラグを「適用する」に設定すると、該当する月(1〜3年目などの経過年数)に応じた軽減後の本人負担割合(および事業主負担割合)が自動適用され、給与天引き額が正しく計算されます。
  1. 納付額(事業主立て替え分)の集計・データ出力
  • 年金事務所への届出書類や、事業主が立て替えて納付する合計額の集計レポートがソフト内で自動作成できるようになります。

制度開始が近づく(2026年夏頃)と、各ソフトメーカーから「保険料調整制度への対応方法と設定マニュアル」が順次リリースされるので、基本的にはソフト側の指示に従って従業員設定を行うことでスムーズに対応できます。

まとめ

  • 調整の意味:会社が多めに払った保険料(軽減分)を、後から穴埋めすること。
  • 従業員側のメリット:3年間、社会保険料の引き落とし額が安くなる(ただし将来の年金額は満額分で計算される)。
  • 事業主側のメリット:従業員の手取り激減による就業調整(働き控え)を防げる上、追加負担した分は補填されるため最終的なコストは増えない。
  • 必要な作業:年金事務所へ「保険料調整制度利用の申し出(届出)」を行う必要があります。社内処理については給与計算ソフトを利用していれば特に問題はありません。ソフト会社からの通知・案内に従い、該当する従業員について、従業員マスターへのフラグ設定を忘れないでください。

このページは、会社の事務担当者向けて「保険料調整制度」の概要を解説したものです。正式な届書様式や手続きの詳細は2026年8月30日時点では確認がとれていません。今後の厚生労働省や日本年金機構ホームページで確認をお願いします。