カテゴリー: パート・有期雇用

  • パート社員の有給休暇、比例付与って何ですか?課長に聞いてみた!

    比例付与について教えてください


    新人人事(以下、新): 課長、おはようございます! 年次有給休暇について調べていたら、「パート社員には有給休暇を比例付与する」という記述を見つけました。一般の従業員と比べて出勤日数が少ない場合のことだと思うのですが、具体的にどういうことなのか、よく分からなくて…。教えていただけますでしょうか?

    課長: そうだね。パート社員の有給休暇は、正社員とは少し計算方法が違うから、しっかり理解しておく必要があるよ。

    有給休暇の「比例付与」とは?

    課長: まず、基本的な考え方だけど、年次有給休暇は、雇い入れの日から6ヶ月間継続勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤した労働者に付与されるものだよね。これは正社員もパート社員も同じ条件だよ。

    新: はい、そこは分かります。

    課長: 問題は、その付与される日数の数え方だ。正社員のようにフルタイムで働く従業員には、勤続年数に応じて定められた日数の有給が付与される。例えば、6ヶ月勤務で10日、1年6ヶ月で11日、という具合にね。

    課長: これに対して、パート社員のように週の所定労働日数が少なかったり、年間の所定労働日数が少なかったりする従業員には、その出勤日数や週の労働時間に応じて、付与される有給休暇の日数が「比例して」少なくなるんだ。これが「比例付与」だね。

    新: なるほど、正社員と同じ日数ではなく、働いている日数や時間に合わせた日数になる、ということですね。

    具体的な比例付与の基準

    課長: その通り。具体的には、厚生労働省が定める基準があるんだ。大きく分けて、以下のどちらかに当てはまる場合に比例付与の対象となる。

    ・週の所定労働時間が30時間未満の労働者

    ・週の所定労働日数が4日以下の労働者

    そして、実際に何日付与されるかは、その人の週の所定労働日数(または年間の所定労働日数)と、勤続年数によって決まるんだ。

    新: 週4日以下のパートさんとか、週30時間未満のパートさんが対象、ということですね。

    課長: そうだね。例えば、週に4日働くパート社員と、週に2日働くパート社員では、同じ勤続年数でも付与される有給の日数が変わってくる、ということだ。

    比例付与の具体例

    課長: 例を挙げてみようか。

    例えば、勤続年数が6ヶ月で、全労働日の8割以上出勤した場合を考えてみよう。

    週の所定労働日数1週間の所定労働時間勤続6ヶ月で付与される有給日数
    5日30時間以上10日(正社員と同じ)
    4日30時間未満7日
    3日30時間未満5日
    2日30時間未満3日
    1日30時間未満1日

    ただし、ここでは省略するけれども、年の所定労働日数を基準にした場合は違う表になるよ。

    新: わ、ずいぶん違うんですね! 正社員と同じ勤続6ヶ月でも、週4日だと7日、週2日だと3日になるんですね。

    課長: そうなんだ。これは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)に基づいて、短時間労働者(パート・アルバイトなど)にも正社員と均衡のとれた待遇を保障するために定められているんだよ。

    人事担当として気をつけるべき点

    課長: 人事担当として、パート社員の有給休暇で特に気をつけるべき点は次の通りだ。

    正確な出勤日数・時間の把握:
    比例付与の対象となるかどうか、また付与日数を正しく計算するために、パート社員一人ひとりの週の所定労働日数や年間所定労働日数を正確に把握しておくことが何よりも重要だ。入社時にきちんと確認し、変更があればその都度記録を更新する必要がある。

    付与基準の明確な周知:
    パート社員自身も、自分がどれだけの有給休暇をもらえるのか、理解しているとは限らない。会社として、有給休暇の付与基準を明確に説明し、いつでも確認できるように周知しておくことが大切だ。トラブルを避けるためにも、給与明細などで有給残日数を知らせるなどの工夫も有効だね。

    8割出勤の確認:
    付与日数を計算する前に、最初に「全労働日の8割以上出勤しているか」という条件を満たしているかを必ず確認すること。ここを満たしていなければ、有給は付与されないからね。

    年5日の取得義務化への対応:
    パート社員であっても、年10日以上の有給休暇が付与される場合は、会社は年5日を確実に取得させる義務があるから、この点も忘れてはならない。

    新: なるほど…。パートさんの採用が増えている会社だと、この比例付与の計算と管理はかなり重要になりますね。特に、週の勤務日数が途中で変わったりするケースもあるので、きちんと記録して確認しないと、間違えてしまいそうです。

    課長: その通りだ。特に多様な働き方が増えている現代では、労働時間や日数が一定していない従業員もいるから、正確な管理が求められる。もし不明な点が出てきたら、その都度確認するようにしてくれ。

    新: はい! よく分かりました! ありがとうございます。


    会社事務入門知らないと損する!有給休暇の基本からルールまでパートタイムの年次有給休暇>このページ

  • パートタイム・有期雇用労働法に基づく調停等の制度

    企業内での紛争解決

    相談窓口

    従業員から苦情の申し出や改善の要求が出たときは、真摯に対応し、早期に紛争を解決するように努力しなければなりません。

    パートタイム・有期雇用労働法第十六条 事業主は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、その雇用する短時間・有期雇用労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければならない。

    相談窓口の設置と運営

    苦情処理機関

    パートタイム・有期雇用労働法は、事業主の代表と労働者の代表で構成される苦情処理機関に解決を委ねることを勧めています。

    第二十二条 事業主は、第六条第一項、第八条、第九条、第十一条第一項及び第十二条から第十四条までに定める事項に関し、短時間・有期雇用労働者から苦情の申出を受けたときは、苦情処理機関(事業主を代表する者及び当該事業所の労働者を代表する者を構成員とする当該事業所の労働者の苦情を処理するための機関をいう。)に対し当該苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るように努めるものとする。

    条文によると苦情処理機関が扱う事案は次のようになります。

    第六条第一項は労働条件に関する文書の交付等、第八条は不合理な待遇の禁止、第九条は通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止、第十一条第一項は教育訓練、第十二条は福利厚生施設、第十三条は通常の労働者への転換、第十四条は事業主が講ずる措置の内容等の説明です。

    苦情処理委員会の設置と運営

    会社内で解決できればよいのですが、お互いが感情的になったり、主張が平行線をたどるなどして、話合いによる解決が困難になることがあります。そのような場合、都道府県労働局に援助を求めることができます。

    労働局長の援助を求める

    都道府県労働局長に援助を申し出ることができます。

    第二十四条 都道府県労働局長は、前条に規定する紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができる。

    次の記事は個別労働紛争解決促進法に基づく労働局長の助言・指導についての解説記事ですが、パートタイム・有期雇用労働法による援助申出に対しても同様の対応をしてくれます。

    個別労働紛争の当事者に対する労働局長の助言・指導

    紛争調整委員会の調停

    都道府県労働局長は、紛争調整委員会に調停を行わせることができます。

    第二十五条 都道府県労働局長は、第二十三条に規定する紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会に調停を行わせるものとする。

    調停とは

    調停とは、調停委員が当事者である労働者と事業主双方から事情を聞き、紛争解決の方法として調停案を作成し、当事者双方に調停案の受諾を勧告することにより紛争の解決を図る制度です。

    パートタイム・有期雇用労働法に基づく調停は、個別労働紛争解決促進法により設置されている「紛争調整委員会委員会」が、手続き的には男女雇用機会均等法の定めを準用して行います。

    調停を利用する方法

    調停制度を利用したいときは、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)又は最寄りの総合労働相談コーナー(労働基準監督署内に設置されています)に、調停申請書を提出します。用紙は窓口にあります。また厚生労働省ホームページからダウンロードすることもできます。

    労働者が申請するのが一般的ですが、事業主の側から申請することもできます。

    調停は非公開で行われるので当事者のプライバシーは保護されます。

    調停の進み方

    労働局は申請を受け付けると若干の調査をして、調停の必要を認めれば、紛争調整委員会に調停を委任する書類を回します。

    紛争調整委員会の委員は、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家がつとめています。

    指定の日時に紛争当事者双方が出頭します。この場合、直接顔を合わせて言い合うのではありません。調停委員が個別に話を聞いて解決案を提示します。

    その解決案に対してどちらかが不満であれば、強制することはできないので解決できないまま調停は終了します。

    双方が合意すれば合意書を作成します。合意書には法的な拘束力があります。

    紛争調整委員会の調停は、参加したくない相手方を強制的に出席させることはできません。その場合は調停を行うことができないので、申請した当事者は調停以外の方法である、裁判等を検討することになります。

    制度の対象となる紛争

    パートタイム・有期雇用労働法による調停の対象となるのは、上の苦情処理機関のところに記載した苦情処理機関が扱う事案です。

    解雇、雇止め、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争については、個別労働紛争解決促進法に基づくあっせんの対象になります。


    会社事務入門あっせんや調停等の制度>このページ

  • パート等雇入れ時の雇用管理措置の説明

    雇入れ時に説明すべきこと

    (事業主が講ずる措置の内容等の説明)
    パートタイム労働法第14条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

    第八条から前条までというのは次の通りです。

    第八条(不合理な待遇の禁止)
    第九条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
    第十条(賃金)
    第十一条(教育訓練)
    第十二条(福利厚生施設)
    第十三条(通常の労働者への転換)

    以上のことについて、講ずることとしている措置(やっていること)を説明しなくてはなりません。正社員の待遇と違いがある場合は、違いを設けている理由を説明する必要があります。

    以上の説明は、雇い入れたときは、求めがなくてもしなければなりません。

    労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。とありますが、これは、労働基準法で定められている説明義務は、パートタイム・有期雇用労働法とは別に説明義務があるので除外しているのであり、説明しなくてもよいという意味ではありません。

    説明を求められたときの説明

    パートタイム労働法第14条2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

    第六条から前条までというのは次の通りです。

    以下の事項については、通常の労働者とどこが違うか、違う理由、考慮したことについて、質問があったら説明しなければなりません。

    第六条(労働条件に関する文書の交付等)
    第七条(就業規則の作成の手続)
    第八条(不合理な待遇の禁止)
    第九条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
    第十条(賃金)
    第十一条(教育訓練)
    第十二条(福利厚生施設)
    第十三条(通常の労働者への転換)

    納得するまで説明することまでは求められていませんが、納得を得られなければ紛争に発展する可能性があるので、できるだけ納得してもらえるように丁寧に説明する必要があります。

    なお、短時間・有期雇用労働者が説明を求めたことを理由として不利益な取り扱いをすることは禁止されています。

    説明文書の交付

    様々なことを口頭だけで説明するのは不親切です。法律では文書の交付までは求めていませんが、概要だけでも文書を作って渡すようにしましょう。

    説明文書のサンプル

    令和○年○月○日

    ○○株式会社
    総務部長○○○○

    雇用管理の改善措置について

    パートタイム・有期雇用労働者の雇用管理の改善措置の内容について、パートタイム労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)に基づいて、下記のとおり説明します。

    1 不合理な待遇・差別的取扱い

    基本給、手当、賞与その他の待遇のそれぞれについて、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度等に照らして、通常の労働者との間で不合理な相違を設けません。

    職務の内容が正社員と同一であるなどで正社員と同視すべき短時間・有期雇用労働者については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをいたしません。

    2 賃金制度

    1年以上勤続しているパートタイム・有期雇用労働者の基本給は、勤務成績、職務遂行能力を勘案して昇給を行います。昇給は原則として年1回4月に実施します。ただし、会社の業績によっては行わないことがあります。

    3 教育訓練

    安全衛生研修を入社初日の午後に実施します。

    毎年10月に2時間の業務力向上研修を実施しています。

    いずれの研修も有給です。

    4 福利厚生

    食堂、休憩室、更衣室は入社日から正社員と同様に利用できます。

    勤務が1年を超えたパートタイム・有期雇用労働者には、正社員の慶弔見舞金規程を適用します。

    月の勤務時間が正社員の2分の1以上となるパートタイム・有期雇用労働者は、会社の費用で有給扱いで定期健康診断を受診できます。

    5 正社員転換推進措置

    当社が正社員募集に係る求人票を出す場合は、その募集要項を事業所内掲示板に掲示します。募集要件に該当する場合は自由に応募できます。公正な選考を行います。応募について不利益な扱いをすることはありません。

    説明について不明な点がありましたら、相談窓口までお問い合わせください。説明を求めたことを理由とした不利益な取扱いを行うことはないので安心してご相談ください。

    相談窓口:○○課○○○○(内線○○○)


    会社事務入門従業員を採用するときの手続きパート・有期雇用労働者雇用の注意点>このページ

  • 短時間・有期雇用管理者を選任する

    選任の努力義務

    パートタイム労働者と有期雇用労働者を一定以上雇用する事業所は、「短時間・有期雇用管理者」を選任するように努めなければなりません。

    短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)第十七条 事業主は、常時厚生労働省令で定める数以上の短時間・有期雇用労働者を雇用する事業所ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、指針に定める事項その他の短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項を管理させるため、短時間・有期雇用管理者を選任するように努めるものとする。

    厚生労働省令で定める数以上というのは、短時間・有期雇用労働者をあわせて常時10人以上雇用する事業所です。

    短時間・有期雇用管理者の業務

    業務としては次のようなことがあります。

    1.パートタイム・有期雇用労働法やパートタイム・有期雇用労働指針に定められた事項その他のパートタイム労働者・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関して、事業主の指示に従い必要な措置を検討し、実施すること。

    2.労働条件等に関して、パートタイム労働者・有期雇用労働者の相談に応じること。

    関連記事:短時間・有期雇用労働者からの相談体制の整備

    選任手続き

    事業主が役員や従業員のなかから指名します。事業主が自らを選任することもできます。

    特に資格を有している必要はありませんが、厚生労働省が示している業務内容からすると、パート・有期雇用労働者に関する人事労務について権限を有する者から選任するべきでしょう。

    選任・変更届の提出先は、都道府県労働局雇用均等室です。様式は厚生労働省のホームページ(「男女雇用機会均等推進者選任について」のページ)からダウンロードできます。

    短時間・有期雇用管理者の単独の様式ではなく、育児・介護休業法に基づく「職業家庭両立推進者」、男女雇用機会均等法に基づく「男女雇用機会均等推進者」と共通様式になっています。

    選任したときは、その氏名を事業所の見やすいところに掲示する等により、パートタイム労働者及び有期雇用労働者に周知するよう求められています。


    会社事務入門従業員を採用するときの手続きパート・有期雇用労働者雇用の注意点>このページ

  • アルバイト就業規則のサンプル

    アルバイト社員就業規則

    総則

    (目的)
    第1条 この就業規則は、〇〇株式会社(以下「会社」という)のアルバイト社員の就業について必要な事項を定める。

    (遵守義務)
    第2条 会社とアルバイト社員は、この規則を守ってお互いの立場を尊重し当社の業務の発展とより良い職場づくりに努力するものとする。

    (定義)
    第3条 この規則においてアルバイト社員とは、期間を定めて臨時に雇用する者をいう。

    採用手続き

    (採用)
    第4条 アルバイト社員の採用は、就業希望者の中から書類選考並びに面接選考により決定する。

    (採用手続)
    第5条 アルバイト社員は採用の際、会社が指示する書類を提出しなければならない。

    2 会社は、雇用契約締結の際、労働条件通知書とともにこのアルバイト社員就業規則の写しを交付する。

    雇用期間と配属

    (雇用期間)
    第6条 アルバイト社員の雇用期間は原則として2ヶ月以内とする。ただし、双方の合意によって契約期間を更新することがある。

    (配属)
    第7条 アルバイト社員の配属先、職務内容は採用時に通知する。ただし、採用後、業務上の必要があるときは当該アルバイト社員の同意を得て変更することがある。

    服務規律

    (服務)
    第8条 アルバイト社員は、会社の指示命令を守り誠実に服務を遂行するとともに次の各事項をよく守り、職場の秩序の保持に努めなければならない。
     ① 会社の定める諸規程を守り、社内の規律秩序を維持すること
     ② 上司の指示命令に従って誠実に職務を遂行すること
     ③ 互いに力を合わせて職務を遂行すること
     ④ 常に健康に留意し、明朗活発な態度で勤務すること
     ⑤ 常に品位を保ち、会社の体面を汚すような言行を慎むこと
     ⑥ 会社の施設と物品を大切に扱い、私用には用いないこと
     ⑦ 在職中はもちろん、退職後においても会社並びに取引先の機密事項を他に漏らさないこと
     ⑧ 性的な言動により他の者に苦痛を与えること、また他の者に不利益を与えたり、就業環境を害すことをしないこと
     ⑨ いじめにあたる言動により他の者に苦痛を与えること、また他の者に不利益を与えたり、就業環境を害すことをしないこと
     ⑩ 勤務時間中は、常に所在を明確にし、職場を離れるときは上司または同僚に行き先、用件、所用時間等を連絡しなければならない
     ⑪ 特定の政党、特定の団体および特定の宗教に関わる宣伝、布教、勧誘、署名活動等の活動をしないこと

    労働時間・休憩・休日等

    (労働時間及び休憩、休日)
    第9条 アルバイト社員の始業及び終業の時刻並びに休憩時間、休日については勤務シフト表により通知する。

    2 勤務シフト表は毎月月末の〇日前までに翌月分を通知する。採用された月の勤務シフト表は採用時に通知する。

    3 前項の規定にかかわらず、業務の都合その他やむを得ない事情により始業及び終業の時刻並びに休憩時間を繰り上げ又は繰り下げることがある。

    4 休憩時間は自由に利用することができる。

    (有給休暇)
    第10条 アルバイト社員には有給休暇の適用はない。ただし、勤務が6ヶ月に至ったときはパート社員就業規則の該当部分を適用する。

    (特別休暇等)
    第11条 産前産後休業、育児時間、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置、妊娠中の負担軽減等の措置については、社員就業規則の該当部分を適用する。

    2 生理日の就業が著しく困難なアルバイト社員から請求があったときは、必要な期間休暇を与える。ただし、無給とする。

    (育児休業・介護休業)
    第12条 アルバイト社員には原則として育児・介護休業に関する規定を適用しない。ただし、勤務期間が1年に至った場合は、別に定める育児介護休業規程を適用する。

    賃金

    (賃金)
    第13条 賃金は時間給とし、職務内容、成果、能力、経験等を考慮して各人別に決定する。

    2 1日において労働時間が8時間を超えるときは、1時間につき、時間給の25%増の時間外割増賃金を支給する。その時間が深夜に及ぶときは深夜割増賃金としてさらに25%を支給する。会社の法定休日である日曜日に勤務したときは休日割増賃金として35%増の休日割増賃金を支給する。

    (賃金の支払い)
    第26条 賃金は、前月○○日から当月○○日までの分について、当月○○日(支払日が休日に当たる場合はその前日)に通貨で直接その金額を本人に支払う。だだし、本人の同意を得て本人の銀行等の口座に振込払いするものとする。

    2 賃金の支払に際して社会保険等の法令に定めらた控除を行う。

    (昇給)
    第14条 アルバイト社員には昇給は原則としてない。ただし、勤務期間が1年に至るときは、会社の業績、その間の勤務成績、職務遂行能力等を考慮し昇給を行うことがある。

    (賞与)
    第15条 アルバイト社員には賞与を支給しない。

    (退職金)
    第16条 アルバイト社員には退職金を支給しない。

    (福利厚生)
    第17条 福利厚生施設の利用については、正社員と同様の取り扱いをする。

    退職・解雇

    (退職)
    第18条 アルバイト社員が次のいずれかに該当するときは退職とする。
    ① 雇用契約に期間の定めがあり、かつ、労働条件通知書にその契約の更新がない旨あらかじめ示されている場合は、その期間が満了したとき
    ② 本人の都合により退職を申し出て会社が認めた時、又は退職の申し出をしてから14日を経過したとき
    ③ 本人が死亡したとき

    2 アルバイト社員が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合はその理由を含む。)について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付する。

    (解雇)
    第19条 アルバイト社員が、次のいずれかに該当するときは解雇する。この場合において、少なくとも30日前に予告をするか又は予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。
    ① 勤務成績又は業務能率が著しく不良で向上の見込みがなく、他の職務にも転換できない等就業に適さないと認められたとき
    ② 業務上の負傷又は疾病による療養の開始後3年を経過しても当該負傷又は疾病が治らない場合であって、アルバイト社員が傷病補償年金を受けているとき又は受けることとなったとき(会社が打切り補償を支払ったときを含む。)
    ③ 身体又は精神に障害がある場合で、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなお業務に耐えられないと認められたとき
    ④ 事業の運営上やむを得ない事情又は天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき又は事業の縮小・転換又は部門の閉鎖等を行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき
    ⑤ その他前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

    2 前項の予告の日数は、平均賃金を支払った日数だけ短縮する。

    3 アルバイト社員が、解雇の予告がされた日から退職の日までの間に当該解雇の理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付する。

    安全衛生

    (安全衛生)
    第20条 アルバイト社員は、安全衛生に関する法令、規則並びに会社の指示を守り、会社と協力して労働災害の防止に努めなければならない。

    (健康診断)
    第21条 引き続き1年以上(業務内容により6ヶ月以上)勤務し、又は勤務することが予定されているアルバイト社員に対しては、採用の際及び毎年定期に健康診断を行う。

    2 その他、法令に基づく健康診断を実施する。

    (安全衛生教育)
    第22条 アルバイト社員に対し、採用の際及び配置換え等により作業内容を変更した際には、必要な安全衛生教育を行う。

    (災害補償)
    第23条 アルバイト社員が業務上の事由若しくは通勤により負傷し、疾病にかかり又は死亡した場合は、労働者災害補償保険法に定める保険給付を受けるものとする。

    2 アルバイト社員が業務上負傷し又は疾病にかかり療養のため休業する場合の最初の3日間については、会社は平均賃金の60%の休業補償を行う。

    懲戒処分

    (懲戒事由等)
    第24条 アルバイト社員が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇する。ただし、情状により減給、出勤停止、またはけん責とすることがある。
    ① この規則に定める服務心得に違反したとき
    ② 出勤常ならず改善の見込みのないとき。
    ③ 故意または重大な過失によりに重大な損害を与えたとき
    ④ 素行不良で著しく内の秩序または風紀を乱したとき
    ⑤ その他著しい非行、社会秩序違反その他不当または違法な行為のあったとき

    附則
    この規則は、平成○年○月○日から実施する。


    アルバイト雇用の注意点

    社内規程の基礎知識

    会社事務入門社内規程を整備するためのノウハウを徹底解説>このページ

  • 同一労働同一賃金とは?雇用形態による待遇格差の問題

    不合理な待遇差に対する法規制

    「同一労働同一賃金」とは、雇用形態(正社員、パート、アルバイト、契約社員、派遣社員など)に関わらず、同じ仕事をしている労働者には、同じ賃金を支払うべきという考え方です。

    これは、単に「給料」だけでなく、賞与、手当、福利厚生といったあらゆる待遇の不合理な格差をなくすことを目的としています。

    法的な位置づけ

    日本において「同一労働同一賃金」の原則は、「働き方改革関連法」の一環として、以下の法律で定められています。

    • パートタイム・有期雇用労働法
    • 労働者派遣法

    これらの法律では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、「不合理な待遇差」を設けることが禁止されています。

    「同一」と見なされる要素

    「同一労働」であると判断されるためには、以下の3つの要素が考慮されます。

    1. 職務の内容: 担当する業務の内容や、責任の程度が同じかどうか。
    2. 職務内容・配置の変更範囲: 転勤や異動の有無・範囲が同じか、将来の昇進の可能性が同じか。
    3. その他の事情: その他の特別な事情(例:個人のスキルや経験)があるか。

    このうち、「1」と「2」が同じであれば、「均等待遇(差を付けてはならない)」が求められ、「3」を考慮してもなお不合理な場合は「均衡待遇(不合理な差をなくす)」が求められます。

    対象となる待遇の具体例

    同一労働同一賃金が適用される待遇は、基本給だけではありません。以下のような待遇のすべてに適用されます。

    • 賃金: 基本給、賞与(ボーナス)、各種手当(役職手当、精勤手当、通勤手当、住宅手当など)
    • 教育訓練: 職務に必要な研修機会の提供
    • 福利厚生: 食堂や更衣室の利用、転勤者用社宅の利用、慶弔休暇など

    ただし、「待遇差が不合理ではない」と判断される場合もあります。例えば、単身赴任手当や退職金は、職務内容や人材活用の仕組み(転勤の有無など)が異なるため、正社員と非正規社員で差があっても、それが「不合理ではない」と判断された最高裁判例も存在します。

    待遇差が不合理ではない具体的例

    同一労働同一賃金において、待遇格差が不合理ではないと判断される具体的な例をいくつか挙げます。これらの判断は、個々の企業の事情や、職務内容、責任の範囲などによって変わる可能性がありますが、これまでの最高裁判例やガイドラインから示唆される一般的な例です。

    1. 職務内容や責任の範囲の違いに基づく待遇差

    • 基本給: 正社員が総合職として転勤や多様な部署異動を経験し、幅広い業務や責任を負う可能性がある一方で、非正規雇用労働者が特定の業務のみを担当する場合、基本給に差があることは不合理ではないとされます。
    • 役職手当・役職給: チームリーダーや管理職など、特定の役職に就いており、部下の指導やマネジメントといった責任を負っている正社員にのみ支給される手当は、不合理な格差とは見なされません。

    2. 人材活用の仕組みの違いに基づく待遇差

    • 退職金: 多くの最高裁判例において、正社員に退職金を支給し、非正規雇用労働者には支給しないことは不合理ではないと判断されています。その理由として、退職金は長期的な人材確保や、雇用関係の継続に期待して支給されるものであり、無期雇用である正社員の勤務実態とは異なることが挙げられます。
    • 住宅手当・家族手当: 転勤がある正社員と、転勤がなく自宅から通勤する非正規雇用労働者との間で、住宅手当や家族手当に差があることは不合理ではないと判断されることがあります。これらの手当が、全国転勤やそれに伴う生活の変化を補償する目的で支給されている場合です。

    3. その他、個々の状況に基づく待遇差

    • 賞与(ボーナス): 会社の業績や個人の評価を考慮して賞与が支給される場合、その貢献度や評価に応じて支給額に差があることは不合理ではありません。ただし、同じ貢献度であれば同じ額が支払われるべきです。
    • 病気休暇: 無期雇用である正社員に有給の病気休暇を付与し、有期雇用労働者には付与しないことが、直ちに不合理とは判断されない可能性があります。これは、雇用期間の定めの有無という人材活用の仕組みの違いに基づいていると見なされるためです。

    これらの例は、単に雇用形態が違うからという理由で待遇差を設けることが許されるわけではなく、「なぜその待遇差が必要なのか」という合理的な理由が説明できる場合にのみ認められる、ということを示しています。

    正社員間の賃金格差はどうか

    現状では、正社員間の賃金格差は、同一労働同一賃金問題の直接的な対象にはならないと理解していただいて差し支えありません。

    なぜ正社員間の格差は対象外なのか?

    「同一労働同一賃金」の原則は、あくまで正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の「不合理な待遇差」を解消することを目的としています。

    正社員同士であれば、多くの場合、以下の点が共通しているため、この法律の対象からは外れます。

    • 雇用形態: いずれも無期雇用契約である正社員です。
    • 人材活用の仕組み: 転勤や異動の可能性、職務変更の範囲、昇進の機会などが原則として同じです。

    したがって、同じ「正社員」という雇用形態の中で、評価制度に基づいて賃金に差がつくことは、「職務内容や個人の貢献度、能力の違い」に基づく合理的な格差と見なされます。この評価は、同一労働同一賃金が認めている「均衡待遇」の考え方に沿ったものです。

    ただし、同一労働同一賃金の原則が、より広い意味で「公正な評価」を求める流れを加速させていることも事実です。今後は、正社員間の賃金差であっても、その根拠が曖昧であったり、客観的な評価制度に基づかないものであったりする場合、説明責任がより強く求められるようになる可能性があります。

    正社員間の学歴格差はどうか?

    学歴によって初任給や昇給に差をつける制度は、「同一労働同一賃金」の流れに必ずしもそぐわないわけではありません。 重要なのは、その学歴の差が「不合理な待遇差」と見なされるかどうかです。

    学歴による待遇差を合理的に説明する考え方

    学歴による差を合理化する主な考え方は以下の通りです。

    1. 潜在能力や職務内容の違い企業が、大卒者には高卒者よりも高度な職務や責任を将来的に担うことを期待し、それを前提とした賃金制度を設けることは合理的な理由となります。これは、正社員の賃金が「職務内容や人材活用の仕組み」に基づいて決まるという考え方と一致します。この場合、学歴はあくまで将来の職務範囲や期待される役割を示す一つの指標に過ぎません。
    2. 教育コストの考慮大学での専門的な教育や研究経験が、入社後の業務に直接役立つと判断される場合、その先行投資分を初任給に反映させることは、不合理とは見なされない可能性があります。

    どのような場合に問題となるか?

    一方で、以下のような場合は「不合理な待遇差」と見なされるリスクがあります。

    • 職務内容が完全に同じ: 大卒者と高卒者が、全く同じ業務を同じ責任範囲で、同じように遂行しているにもかかわらず、学歴のみで賃金に差がある場合。
    • 昇給・昇格に学歴以外の要素がない: 評価制度が機能せず、単に学歴が高い社員が、より有利な昇給・昇格ルートをたどるような制度になっている場合。

    アドバイス:制度の見直しと対応策

    不合理な格差とみなされるリスクがある場合は、以下の点を検討することをおすすめします。

    • 職務給の導入: 学歴ではなく、個々の社員が担う職務の価値や責任に応じて賃金を決定する「職務給」を導入します。これにより、学歴による初任給の差を徐々に解消し、実際の業務内容に応じた公正な評価へと移行できます。
    • 評価制度の透明化: 昇給の基準を学歴ではなく、個人の成果、スキル、貢献度に明確に紐づけます。これにより、誰もが納得できる公正な評価制度を構築できます。
    • 非正規社員との待遇差解消: 特に、学歴が同じであるにもかかわらず、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差がないか確認することが重要です。

    学歴による差を設けることが直ちに違法となるわけではありませんが、「同一労働同一賃金」の流れは、より個々の社員の能力や貢献度に基づいた公正な評価を企業に求めています。この機会に、賃金制度をより透明で合理的なものへと見直すことが、将来的なリスクを回避する上で非常に有益です。

    企業における取組手順

    労働厚生省ホームページの「同一労働同一賃金特集ページ」を参考にして取り組み手順を策定しましょう。

    概要は以下の通りです。

    手順1 労働者の雇用形態を確認しましょう

    社内の労働者のうち、対応が求められる労働者の範囲を確認しましょう。フルタイム労働者よりも勤務時間の短い短時間労働者と、労働契約の期間に満了日が設定されている有期雇用労働者が対象です。社内の呼称で分類してはいけません。

    手順2 待遇の状況を確認しましょう

    短時間労働者・有期雇用労働者の賞与、手当、福利厚生などの待遇について、正社員(フルタイムの無期雇用労働者)との違いを確認して、項目ごとに一覧表の形でまとめてみましょう。

    手順3 待遇に違いがある場合、違いを設けている理由を確認しましょう

    待遇の違いを設けている理由を書き出してみましょう。「パートだから」「将来の役割期待が異なるため」などの主観的・抽象的な理由ではなく、客観的・具体的な理由であることが求められています。

    手順4 待遇に違いがあった場合、その違いが「不合理ではない」ことを説明できるように整理しておきましょう。

    整理した内容を元に、労働者から説明を求められた場合に使用する、「待遇の違いの内容と理由」の説明書を準備しましょう。

    手順5 法違反が疑われる状況からの早期の脱却を目指しましょう

    以上の手順の中で、待遇の違いが「不合理ではない」と言い難い項目がある場合には、改善に向けた検討が必要です。

    手順6 改善計画を立てて取り組みましょう

    改善内容が明確になったなら速やかに計画を策定して改善を進めましょう。

    まとめ

    「同一労働同一賃金」は、単に「同じ給料」にすることではなく、「正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇格差をなくし、働き方に応じた公正な評価を行うこと」を目的としています。これにより、労働者のモチベーション向上や、企業の生産性向上にもつながることが期待されています。


    会社事務入門従業員を採用するときの手続きパート・有期雇用労働者雇用の注意点>このページ