休憩室と作業場が離れている場合の休憩時間の扱いはどうすればよいですか?

労働時間

Last Updated on 2025年10月3日 by

休憩時間の自由利用の原則

労働基準法に定められている「休憩時間」は労働者が労働から離れることを保障されている時間であり、自由に利用できるとされています(休憩の自由利用の原則)。

  • 休憩時間中: 労働者は使用者の指揮命令下から完全に離れ、自由に過ごせる時間です。
  • 移動時間: 休憩室から作業場への移動時間は、休憩時間が終了した後、次の作業開始に向けた準備行動の一環と見なせます。

休憩時間が「終了」してから移動を開始すると、作業開始時間に間に合わない場合、どう取り扱うべきかについて解説します。

休憩室を早く出るよう指示すると労働基準法違反の可能性があります

休憩時間が終了する前に休憩室を出るように命じることは、休憩時間を短縮することになり、労働基準法で保障された休憩の自由利用の原則に反する可能性が高く、避けるべきです。

休憩時間は、作業場への移動時間を含めずに、労働者が完全に休息できる時間として確保されるべきです。

対応策:作業時間の終了開始を遅らせる

休憩時間の終了時刻は変えずに、作業時間の終了・開始時間を遅らせるという方法があります。

  • 例えば、移動時間に5分要する場合は、休憩時間が12:00から13:00までとなっていれば、作業終了時間を11:55にして、作業開始時間を13:05に定めます。
  • この片道5分間の移動時間は、「手待ち時間」や「準備時間」として労働時間と見なします。「手待ち時間」や「準備時間」は、労働時間として賃金が支払われる必要があります。 

補足

休憩時間は、労働者が使用者(会社)の指揮命令下から完全に離れて、自由に利用できることが大原則です(休憩自由利用の原則)。

休憩開始時間と休憩終了時間、両方の問題ですが、休憩終了時間の例で説明します。

休憩時間が13:00に終了し、13:00から作業場への移動が強制される場合、この移動時間は以下の理由から「自由ではない時間」と判断されます。

時間帯労働者の行動自由利用の可否法的な性質
休憩時間終了自由な休息・活動可能休憩時間
13:00〜13:05作業場へ移動(義務)不可能労働時間とみなすべき時間
13:05〜作業開始労働時間

法令を遵守するための最も明確で適切な方法は、作業場への移動時間(5分)を「労働時間」として扱い、作業開始時刻を後ろ倒しにすることです。

休憩時間労働時間(移動・準備)労働時間(作業)
時刻の区切り〜13:0013:00〜13:0513:05〜
  1. 休憩時間の自由を確保する: 労働者は13:00まで休憩室で完全に自由に過ごす権利が保障されます。
  2. 移動時間を労働として扱う: 13:00から作業場までの5分間の移動は、「次の作業を始めるために必要な準備行為」または「指揮命令下に置かれている時間」と見なされ、会社はこれに対して賃金を支払う義務が生じます。
  3. 作業開始時刻を調整する: 実際の作業開始時刻を13:05とすることで、労働者を作業開始時刻に遅れることなく作業場に到着させるという会社の要求を満たし、同時に休憩の自由も守ることができます。

会社は「作業時間の開始を5分遅らせる」措置をとることで、この問題を法的に適切に解決できることになります。