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労働時間の状況の把握
長時間労働者に対する面接指導を実施する前提として、管理監督者を含むすべての労働者(高度プロフェッショナル制度対象者を除く)を対象として。労働時間の状況の把握をしなければなりません。(労働安全衛生法66の8の3)
把握した労働時間の状況は、その記録を3年間保存しなければなりません。(労働安全衛生規則52の7の3②)
労働時間の把握方法
労働時間の状況は次の方法によって把握する必要があります。(労働安全衛生規則52の7の3①)
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
イ タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
以上が原則的な時間把握方法ですが、自己申告制も条件付きで認められています。
タイムカード等による場合
多く採用されている方法は、タイムカードの打刻時刻を始業及び終業の時刻として記録する方法です。また、従業員が会社の業務システムにログイン及びログアウトした時刻を始業及び終業の時刻として記録する方法も多くなりました。
これらの方法は、必ずしも労働時間と一致していないという難点があります。
朝、タイムカードを打刻し、あるいはパソコンを立ち上げてもすぐに仕事を始めるとは限りません。帰りのときも、仕事が終わってすぐにタイムカードを打刻し、あるいはログアウトしているとは限りません。
それでも、労働基準監督官はタイムカードや業務システムの使用記録を労働時間の記録として用いるように指導します。
よって、タイムカード等による労働時間管理をしている事業場は、執務室への入室時間制限を実施するなどして無用な居残りを一掃しなければなりません。
また、時折実態調査をしてタイムカード等の時間と実際の勤務時間がずれがあることが判明したときは、ずれた時間とその理由を調査し、すみやかに改善しなければなりません。
自己申告制による場合
自己申告制とは、タイムカード等の記録とは関係なく、何時間残業したか本人が申請して上司がそれを承認することで残業代を払う仕組みです。残業申請書などを使用している会社ががこれにあたります。
自己申告制を用いると、実際の労働時間より少なく申告する(せざるをえない)など、不適正に運用される危険があります。
よって、自己申告制で労働時間を把握するときは、次のような対策を行うことが求められています。
自己申告制による場合は、事業者は、以下のアからオまでの措置を全て講じる必要があります。(通達:基発1 2 2 8第1 6号令和30年12月28日)
ア 自己申告制の対象となる労働者に対して、労働時間の状況の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
イ 実際に労働時間の状況を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、講ずべき措置について十分な説明を行うこと。
ウ 自己申告により把握した労働時間の状況が実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の状況の補正をすること。
エ 自己申告した労働時間の状況を超えて事業場内にいる時間又は事業場外において労務を提供し得る状態であった時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。
タイムカード等と自己申告の併用
タイムカード等と自己申告制(事前申請制度)を併用する例を紹介します。
1.出社時と退社時にはタイムカードの打刻を義務付ける。
2.始業前に仕事をしないように、かつ、終業後は速やかに帰宅するよう、規程や掲示などで周知する。
3.時間外労働は事前申請として勝手残業は認めないことを規程等や掲示などで周知する。
事前に時間外労働申請書を提出して時間外労働に入る。
↓
時間外労働終了後に時間外労働報告書を提出する。
↓
申請書と報告書の時間差について、上司が確認する。
↓
報告書とタイムカードの記録との時間差については、人事課が確認する。
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タイムカードの打刻時間が始業終業の時間と一定時間以上(15分など)ずれている場合は、そのずれがなぜ生じたか、人事から当人に確認する。
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人事課は本人から聴取の上、必要に応じて当該労働者の上司と連絡をとり、実質的に労働時間と認められる部分について、時間外労働に加算する。
↓
この作業の記録を残す。
ダブルワークの労働時間管理
副業・兼業などで複数の事業場で働く人もいます。
関連記事:ダブルワークの労働時間把握
テレワークの労働時間管理
テレワーク勤務者は、会社の勤怠管理システムにログインできるのであれば、そのシステムを使用することができます。できない場合は電子メール等で勤務の開始及び終了を連絡することになります。
裁量労働時間制の対象であっても基本的な労働時間管理は必要なので、単に連絡を受けるだけでなく、一日、一週、一月ごとの労働時間数、深夜労働時間数などを集計して把握しなければなりません。