Last Updated on 2025年8月4日 by 勝
- 三六協定Q&A
- Q1. 三六協定は毎年提出が必要ですか?
- Q2. 労働者代表はどのように選出すればいいですか?
- Q3. 三六協定を結んでいれば、残業に上限はありませんか?
- Q4. 従業員が勝手に残業をした場合、協定違反になりますか?
- Q5. 三六協定を締結しなかった場合、どうなりますか?
- Q6. 特別条項付の場合、残業時間が45時間を超えた月が年に6回までなら大丈夫ですか?
- Q7. 従業員が有給休暇を取得した場合、その日は法定労働時間に含まれますか?
- Q8. 労働者代表の選出方法で、社内で多数決をとれば問題ないですね?
- Q9. 新しい従業員が入社した場合、三六協定の再締結は必要ですか?
- Q10. 会社が協定の内容を一方的に変更できますか?
- Q11. フレックスタイム制を導入している場合でも、三六協定は必要ですか?
- Q12. 三六協定の協定書には、具体的にどのような項目を記載する必要がありますか?
- Q13. 労働基準監督署への届け出は、オンラインでも可能ですか?
- Q14. 三六協定が締結することで、残業代を支払わなくてもよいケースはありますか?
- Q15. 従業員が三六協定の内容を知らない場合、協定は有効ですか?
- Q16. 三六協定は何部作成し、どこに保管するのですか?
- Q17. 管理監督者やパート・アルバイトにも適用されますか?
- Q18. 三六協定の特別条項には、発動要件の記載が必要ですか?
- Q19. 三六協定を届け出ずに締結のみした場合はどうなりますか?
三六協定Q&A
「時間外・休日労働に関する協定」、通称、三六協定、36協定、サブロク協定。
労働基準法に定められたルールで、時間外労働や休日労働を適法に行うために、会社と従業員代表の間で締結する協定です。
正しく運用することで、企業は従業員に安心して働いてもらえる環境を提供でき、労働生産性の向上にも繋がります。
しかし、その内容は難解な部分を含むため、「これで本当に大丈夫?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、三六協定に関するよくある疑問をQ&A形式で整理しました。三六協定の適切な運用にお役立てください。
Q1. 三六協定は毎年提出が必要ですか?
A. はい、原則として毎年提出が必要です。
三六協定には有効期間が定めらることになっていて、通常は1年間とすることが一般的です。1年超の有効期間を記載して届け出すれば受理されない可能性があります。
有効期間が満了する前に、協定の更新手続きを行い、労働基準監督署に届け出る必要があります。
更新手続きを忘れてしまうと、協定の効力がなくなり、違法な時間外労働になってしまうため、注意が必要です。
Q2. 労働者代表はどのように選出すればいいですか?
A. 労働者代表は、労働者の過半数で組織された労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は、労働者の過半数を代表する人を選出する必要があります。
この選出方法には注意が必要です。
会社側から指名したり、一部の従業員だけで決めたりすることはできません。
投票や挙手、話し合いなど、民主的な方法で労働者全体が納得する形で選出しましょう。
また、管理監督者は労働者代表になることができませんので、ご注意ください。
Q3. 三六協定を結んでいれば、残業に上限はありませんか?
A. いいえ、三六協定を結んでいても、残業時間には上限があります。
原則として、「月45時間、年360時間」が上限です。
ただし、臨時的な特別な事情がある場合には、労使間で特別条項付き三六協定を締結することで、上限時間を延長することができます。
それでも、年720時間、複数月平均80時間以内、単月100時間未満といった上限が課せられています。
これらの上限を超えて労働させることは、労働基準法違反となります。
Q4. 従業員が勝手に残業をした場合、協定違反になりますか?
A. 従業員が会社の命令なく勝手に残業をした場合は、原則として時間外労働とはみなされません。
しかし、会社が黙認していたり、業務の性質上、残業せざるを得ない状況であったりする場合には、会社の指揮命令下にあったと判断される可能性があります。
従業員に時間外労働をさせる際は、事前の申請・許可を徹底するなど、会社として時間管理をしっかり行うことが重要です。
Q5. 三六協定を締結しなかった場合、どうなりますか?
A. 三六協定を締結せずに法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせた場合、労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
また、従業員との間でトラブルが発生する原因にもなります。
企業の信用を失わないためにも、三六協定は必ず締結し、適切に運用しましょう。
Q6. 特別条項付の場合、残業時間が45時間を超えた月が年に6回までなら大丈夫ですか?
A. はい、特別条項付き三六協定を締結している場合でも、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回までと定められています。
これを超えて労働させた場合、労働基準法違反となるので注意が必要です。
この回数制限は、労働者の健康を確保するための重要なルールです。
特別条項を適用する際も、この回数制限を常に意識する必要があります。
Q7. 従業員が有給休暇を取得した場合、その日は法定労働時間に含まれますか?
A. いいえ、含まれません。
有給休暇は、労働義務が免除される日であり、実際に労働した日ではありません。
したがって、有給休暇を取得した日は、時間外労働の上限時間を計算する際の法定労働時間には含まれません。
三六協定における時間外労働の上限は、あくまで「実際に働いた時間」を基準に計算されます。
Q8. 労働者代表の選出方法で、社内で多数決をとれば問題ないですね?
A. 多数決で選出する場合でも、民主的な方法でなければなりません。
例えば、全従業員に候補者を募り、投票や挙手などで公平に選出する必要があります。
選出にあたっては、従業員への周知を徹底し、参加の機会をすべての従業員に与えることが重要です。
また、選出された人が本当に過半数を代表しているか確認するため、投票結果や選出過程を記録として残しておくことをお勧めします。
Q9. 新しい従業員が入社した場合、三六協定の再締結は必要ですか?
A. いいえ、再締結の必要はありません。
三六協定は「事業所単位」で締結されるものであり、個々の従業員と結ぶものではありません。
したがって、新しい従業員が入社した場合でも、協定の有効期間内であれば、既存の協定がそのまま適用されます。
ただし、協定の内容は周知徹底する必要があるため、入社時に説明するなど、協定の存在と内容を知らせるようにしましょう。
Q10. 会社が協定の内容を一方的に変更できますか?
A. いいえ、できません。
三六協定は、会社と労働者代表が合意して締結するものです。
そのため、協定の内容を変更する場合は、再度、労働者代表と協議し、合意を得る必要があります。
労働基準監督署への届け出内容も変更する必要があるため、必ず労使双方の合意のもとで手続きを進めるようにしてください。
Q11. フレックスタイム制を導入している場合でも、三六協定は必要ですか?
A. はい、必要です。
フレックスタイム制は、労働者が日々の労働時間を自分で調整できる制度ですが、清算期間(最長3ヶ月)を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合は、三六協定の締結と届け出が必要です。
フレックスタイム制だからといって、三六協定が不要になるわけではありません。
Q12. 三六協定の協定書には、具体的にどのような項目を記載する必要がありますか?
A. 主な記載項目は以下の通りです。
時間外労働・休日労働をさせる必要のある具体的な理由(例:繁忙期対応、緊急対応など)
対象となる業務の種類
対象となる労働者の範囲
時間外労働の上限時間(1日、1ヶ月、1年あたりの時間数)
休日労働の回数
協定の有効期間
これらの項目を明確に記載し、労使双方で合意した上で、労働基準監督署に届け出る必要があります。
Q13. 労働基準監督署への届け出は、オンラインでも可能ですか?
A. はい、可能です。
e-Gov(イーガブ)という行政手続きの総合窓口を利用することで、三六協定の電子申請を行うことができます。
オンラインでの届け出は、事業所まで足を運ぶ手間が省け、書類の管理も容易になるため、ぜひご活用ください。
ただし、初めて利用する場合は事前登録が必要となります。
Q14. 三六協定が締結することで、残業代を支払わなくてもよいケースはありますか?
A. いいえ、ありません。
三六協定は、あくまで法定労働時間を超える労働を「させること」を適法にするためのルールです。
時間外労働や休日労働をさせた場合は、労働基準法に基づいて割増賃金を支払う義務があります。
三六協定を結んでいるという理由で、残業代の支払いが免除されることはありません。
Q15. 従業員が三六協定の内容を知らない場合、協定は有効ですか?
A. 見解が分かれるところですが、周知を欠いた三六協定は無効とされる可能性が高いです。
労働基準法では、締結した三六協定の内容を、いつでも労働者が確認できるように周知することが義務付けられています。
具体的には、
・職場の見やすい場所に掲示する
・書面で交付する
・社内ネットワーク上で閲覧できるようにする
などの方法で、協定の内容を従業員に知らせる必要があります。
協定の有効性とは別に、周知しないこと自体が、労働基準法違反になるので注意が必要です。
Q16. 三六協定は何部作成し、どこに保管するのですか?
A. 協定書(届出書)は、労使双方が1部ずつ保管し、1部を労働基準監督署に提出するため、最低3部作成します。会社側では、従業員が内容を確認できるよう、職場に掲示またはイントラネットでの公開など周知も行いましょう。
Q17. 管理監督者やパート・アルバイトにも適用されますか?
A. 原則として、労働時間の規制はすべての労働者に適用されます。ただし、労働基準法に定める「管理監督者」や一部の業務(例:監視・断続的労働)には適用除外があります。パート・アルバイトであっても法定労働時間を超える場合は三六協定の対象となるため、対象範囲は協定書に明記しましょう。
Q18. 三六協定の特別条項には、発動要件の記載が必要ですか?
A. はい、必要です。特別条項を設ける場合は、どのような事情が発生した場合に時間外労働を延長するのか、その「限度時間を超えて労働させる特別の事情と期間」を協定書に具体的に記載する必要があります(例:年末繁忙期、システム障害等の緊急対応など)。
Q19. 三六協定を届け出ずに締結のみした場合はどうなりますか?
A. 三六協定を締結していても、労働基準監督署に届け出なければ、法的効力は生じません。そのため、時間外・休日労働をさせた場合は労働基準法違反になります。締結後は必ず届け出を行いましょう。