カテゴリー: 労使協定

  • 三六協定の素朴な疑問にQ&Aで答えます|「毎年提出?」「残業は無制限?」

    目次
    1. 三六協定Q&A
      1. Q1. 三六協定は毎年提出が必要ですか?
      2. Q2. 労働者代表はどのように選出すればいいですか?
      3. Q3. 三六協定を結んでいれば、残業に上限はありませんか?
      4. Q4. 従業員が勝手に残業をした場合、協定違反になりますか?
      5. Q5. 三六協定を締結しなかった場合、どうなりますか?
      6. Q6. 特別条項付の場合、残業時間が45時間を超えた月が年に6回までなら大丈夫ですか?
      7. Q7. 従業員が有給休暇を取得した場合、その日は法定労働時間に含まれますか?
      8. Q8. 労働者代表の選出方法で、社内で多数決をとれば問題ないですね?
      9. Q9. 新しい従業員が入社した場合、三六協定の再締結は必要ですか?
      10. Q10. 会社が協定の内容を一方的に変更できますか?
      11. Q11. フレックスタイム制を導入している場合でも、三六協定は必要ですか?
      12. Q12. 三六協定の協定書には、具体的にどのような項目を記載する必要がありますか?
      13. Q13. 労働基準監督署への届け出は、オンラインでも可能ですか?
      14. Q14. 三六協定が締結することで、残業代を支払わなくてもよいケースはありますか?
      15. Q15. 従業員が三六協定の内容を知らない場合、協定は有効ですか?
      16. Q16. 三六協定は何部作成し、どこに保管するのですか?
      17. Q17. 管理監督者やパート・アルバイトにも適用されますか?
      18. Q18. 三六協定の特別条項には、発動要件の記載が必要ですか?
      19. Q19. 三六協定を届け出ずに締結のみした場合はどうなりますか?

    三六協定Q&A

    「時間外・休日労働に関する協定」、通称、三六協定、36協定、サブロク協定。

    労働基準法に定められたルールで、時間外労働や休日労働を適法に行うために、会社と従業員代表の間で締結する協定です。

    正しく運用することで、企業は従業員に安心して働いてもらえる環境を提供でき、労働生産性の向上にも繋がります。

    しかし、その内容は難解な部分を含むため、「これで本当に大丈夫?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。

    この記事では、三六協定に関するよくある疑問をQ&A形式で整理しました。三六協定の適切な運用にお役立てください。

    Q1. 三六協定は毎年提出が必要ですか?

    A. はい、原則として毎年提出が必要です。

    三六協定には有効期間が定めらることになっていて、通常は1年間とすることが一般的です。1年超の有効期間を記載して届け出すれば受理されない可能性があります。

    有効期間が満了する前に、協定の更新手続きを行い、労働基準監督署に届け出る必要があります。

    更新手続きを忘れてしまうと、協定の効力がなくなり、違法な時間外労働になってしまうため、注意が必要です。

    Q2. 労働者代表はどのように選出すればいいですか?

    A. 労働者代表は、労働者の過半数で組織された労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は、労働者の過半数を代表する人を選出する必要があります。

    この選出方法には注意が必要です。

    会社側から指名したり、一部の従業員だけで決めたりすることはできません。

    投票や挙手、話し合いなど、民主的な方法で労働者全体が納得する形で選出しましょう。

    また、管理監督者は労働者代表になることができませんので、ご注意ください。

    Q3. 三六協定を結んでいれば、残業に上限はありませんか?

    A. いいえ、三六協定を結んでいても、残業時間には上限があります。

    原則として、「月45時間、年360時間」が上限です。

    ただし、臨時的な特別な事情がある場合には、労使間で特別条項付き三六協定を締結することで、上限時間を延長することができます。

    それでも、年720時間、複数月平均80時間以内、単月100時間未満といった上限が課せられています。

    これらの上限を超えて労働させることは、労働基準法違反となります。

    Q4. 従業員が勝手に残業をした場合、協定違反になりますか?

    A. 従業員が会社の命令なく勝手に残業をした場合は、原則として時間外労働とはみなされません。

    しかし、会社が黙認していたり、業務の性質上、残業せざるを得ない状況であったりする場合には、会社の指揮命令下にあったと判断される可能性があります。

    従業員に時間外労働をさせる際は、事前の申請・許可を徹底するなど、会社として時間管理をしっかり行うことが重要です。

    Q5. 三六協定を締結しなかった場合、どうなりますか?

    A. 三六協定を締結せずに法定労働時間を超えて時間外労働や休日労働をさせた場合、労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    また、従業員との間でトラブルが発生する原因にもなります。

    企業の信用を失わないためにも、三六協定は必ず締結し、適切に運用しましょう。

    Q6. 特別条項付の場合、残業時間が45時間を超えた月が年に6回までなら大丈夫ですか?

    A. はい、特別条項付き三六協定を締結している場合でも、時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6回までと定められています。

    これを超えて労働させた場合、労働基準法違反となるので注意が必要です。

    この回数制限は、労働者の健康を確保するための重要なルールです。

    特別条項を適用する際も、この回数制限を常に意識する必要があります。

    Q7. 従業員が有給休暇を取得した場合、その日は法定労働時間に含まれますか?

    A. いいえ、含まれません。

    有給休暇は、労働義務が免除される日であり、実際に労働した日ではありません。

    したがって、有給休暇を取得した日は、時間外労働の上限時間を計算する際の法定労働時間には含まれません。

    三六協定における時間外労働の上限は、あくまで「実際に働いた時間」を基準に計算されます。

    Q8. 労働者代表の選出方法で、社内で多数決をとれば問題ないですね?

    A. 多数決で選出する場合でも、民主的な方法でなければなりません。

    例えば、全従業員に候補者を募り、投票や挙手などで公平に選出する必要があります。

    選出にあたっては、従業員への周知を徹底し、参加の機会をすべての従業員に与えることが重要です。

    また、選出された人が本当に過半数を代表しているか確認するため、投票結果や選出過程を記録として残しておくことをお勧めします。

    Q9. 新しい従業員が入社した場合、三六協定の再締結は必要ですか?

    A. いいえ、再締結の必要はありません。

    三六協定は「事業所単位」で締結されるものであり、個々の従業員と結ぶものではありません。

    したがって、新しい従業員が入社した場合でも、協定の有効期間内であれば、既存の協定がそのまま適用されます。

    ただし、協定の内容は周知徹底する必要があるため、入社時に説明するなど、協定の存在と内容を知らせるようにしましょう。

    Q10. 会社が協定の内容を一方的に変更できますか?

    A. いいえ、できません。

    三六協定は、会社と労働者代表が合意して締結するものです。

    そのため、協定の内容を変更する場合は、再度、労働者代表と協議し、合意を得る必要があります。

    労働基準監督署への届け出内容も変更する必要があるため、必ず労使双方の合意のもとで手続きを進めるようにしてください。

    Q11. フレックスタイム制を導入している場合でも、三六協定は必要ですか?

    A. はい、必要です。

    フレックスタイム制は、労働者が日々の労働時間を自分で調整できる制度ですが、清算期間(最長3ヶ月)を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働させる場合は、三六協定の締結と届け出が必要です。

    フレックスタイム制だからといって、三六協定が不要になるわけではありません。

    Q12. 三六協定の協定書には、具体的にどのような項目を記載する必要がありますか?

    A. 主な記載項目は以下の通りです。

    時間外労働・休日労働をさせる必要のある具体的な理由(例:繁忙期対応、緊急対応など)

    対象となる業務の種類

    対象となる労働者の範囲

    時間外労働の上限時間(1日、1ヶ月、1年あたりの時間数)

    休日労働の回数

    協定の有効期間

    これらの項目を明確に記載し、労使双方で合意した上で、労働基準監督署に届け出る必要があります。

    Q13. 労働基準監督署への届け出は、オンラインでも可能ですか?

    A. はい、可能です。

    e-Gov(イーガブ)という行政手続きの総合窓口を利用することで、三六協定の電子申請を行うことができます。

    オンラインでの届け出は、事業所まで足を運ぶ手間が省け、書類の管理も容易になるため、ぜひご活用ください。

    ただし、初めて利用する場合は事前登録が必要となります。

    Q14. 三六協定が締結することで、残業代を支払わなくてもよいケースはありますか?

    A. いいえ、ありません。

    三六協定は、あくまで法定労働時間を超える労働を「させること」を適法にするためのルールです。

    時間外労働や休日労働をさせた場合は、労働基準法に基づいて割増賃金を支払う義務があります。

    三六協定を結んでいるという理由で、残業代の支払いが免除されることはありません。

    Q15. 従業員が三六協定の内容を知らない場合、協定は有効ですか?

    A. 見解が分かれるところですが、周知を欠いた三六協定は無効とされる可能性が高いです。

    労働基準法では、締結した三六協定の内容を、いつでも労働者が確認できるように周知することが義務付けられています。

    具体的には、

    ・職場の見やすい場所に掲示する
    ・書面で交付する
    ・社内ネットワーク上で閲覧できるようにする

    などの方法で、協定の内容を従業員に知らせる必要があります。

    協定の有効性とは別に、周知しないこと自体が、労働基準法違反になるので注意が必要です。

    Q16. 三六協定は何部作成し、どこに保管するのですか?

    A. 協定書(届出書)は、労使双方が1部ずつ保管し、1部を労働基準監督署に提出するため、最低3部作成します。会社側では、従業員が内容を確認できるよう、職場に掲示またはイントラネットでの公開など周知も行いましょう。

    Q17. 管理監督者やパート・アルバイトにも適用されますか?

    A. 原則として、労働時間の規制はすべての労働者に適用されます。ただし、労働基準法に定める「管理監督者」や一部の業務(例:監視・断続的労働)には適用除外があります。パート・アルバイトであっても法定労働時間を超える場合は三六協定の対象となるため、対象範囲は協定書に明記しましょう。

    Q18. 三六協定の特別条項には、発動要件の記載が必要ですか?

    A. はい、必要です。特別条項を設ける場合は、どのような事情が発生した場合に時間外労働を延長するのか、その「限度時間を超えて労働させる特別の事情と期間」を協定書に具体的に記載する必要があります(例:年末繁忙期、システム障害等の緊急対応など)。

    Q19. 三六協定を届け出ずに締結のみした場合はどうなりますか?

    A. 三六協定を締結していても、労働基準監督署に届け出なければ、法的効力は生じません。そのため、時間外・休日労働をさせた場合は労働基準法違反になります。締結後は必ず届け出を行いましょう。


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  • 三六協定と割増賃金、正しく説明できますか?――人事担当者のための実務ガイド

    三六協定と割増賃金に関する記事をまとめました。人事担当者が最低限押さえるべきポイントを俯瞰できます。

    三六協定

    法定労働時間(一日8時間、週40時間)を超えて働かせることは労働基準法で原則禁止になっています。ただし、労使協定を結ぶことで一定時間の範囲で時間外労働をさせることができます。三六協定は労働基準法第36条に基づく時間外労働に関する労使協定です。

    これだけ知っていれば大丈夫!「三六協定」の超基礎知識

    三六協定って何ですか?課長に聞いてみた

    三六協定の素朴な疑問にQ&Aで答えます|「毎年提出?」「残業は無制限?」

    36協定の「特別条項」を正しく理解する:残業の上限規制と注意点

    36協定書に押印は必要?」――協定届を兼ねる協定書とその実務上のポイント

    残業がまったくない事業場でも就業規則の定めと三六協定はしておくべき

    従業員が一人の会社でも残業をさせるには労使協定が必要か

    割増賃金

    三六協定を締結して、就業規則の規定を整備すれば時間外労働をさせることができますが、時間外労働をした時間に対して、割増した賃金を払わなければなりません。

    時間外労働等に対する割増賃金

    時間外割増賃金の計算方法

    時間外割増賃金の基礎単価について

    徹夜になった場合の残業代はどうなるか

    割増賃金|就業規則


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  • これだけ知っていれば大丈夫!「三六協定」の超基礎知識

    「三六協定」という言葉、なんとなく聞いたことはあるけれど、詳しくは知らない…。

    そう思っている人は多いのではないでしょうか。

    「残業させるには三六協定が必要」というフレーズは知っていても、なぜ必要なのか、どんな内容なのか、いざ説明しようと思うと難しいですよね。

    この記事では、そんな三六協定について、誰にでもわかるように超やさしく解説します。

    そもそも「三六協定」って、何?

    まず、「三六協定」とは、労働基準法という法律で定められたルールの一つです。

    労働基準法では、原則として労働時間を1日8時間、1週間に40時間までと定めています。これがいわゆる法定労働時間です。

    この法定労働時間を超えて従業員に残業や休日労働をさせるためには、会社と従業員の間で特別な約束を交わす必要があります。

    その約束事をまとめたものが、「三六協定」です。

    「三六協定」の名前の由来は?

    「三六協定」という不思議な名前は、労働基準法第36条にその根拠があることから、「36(サブロク)協定」と呼ばれています。

    決して「3月6日」に交わす協定、というわけではありません。

    三六協定を結ぶための具体的なステップ

    三六協定を結ぶには、以下のステップを踏む必要があります。

    使用者と労働者代表が協定を結ぶ会社と、労働者の過半数を代表する人(労働組合がある場合はその組合、ない場合は従業員の中から選出された代表者)が、協定の内容について話し合い、合意します。

    労働基準監督署に届け出る協定書を作成したら、会社の所在地を管轄する労働基準監督署に提出します。この届け出が受理されて、はじめて協定が有効になります。

    これら2つのステップを経ることで、会社は合法的に従業員に時間外労働や休日労働をさせられるようになるのです。

    三六協定に定められる「残業時間の上限」とは?

    三六協定を結べば、いくらでも残業させられる、というわけではありません。

    原則として、以下のように残業時間の上限が定められています。

    1ヶ月:45時間

    1年間:360時間

    この時間には、災害などの臨時的な特別な事情がない限り、必ず従わなければなりません。

    「特別条項」って何?

    通常予見できないような特別な事情(例:大規模なプロジェクトの納期が迫っている、クレーム対応など)がある場合は、上記の上限時間を超えて労働させることができます。

    そのための特別なルールを定めたものが「特別条項付き三六協定」です。

    ただし、特別条項を定めても、無制限に残業させられるわけではありません。

    時間外労働の上限は、年720時間以内

    時間外労働と休日労働の合計は、複数月平均で80時間以内、かつ1ヶ月100時間未満

    これらのルールを守る必要があります。

    もし会社がこれらの上限を超えて労働させた場合、労働基準法違反となり、罰則の対象になります。

    まとめ

    「三六協定」とは、法定労働時間を超えて残業や休日出勤をさせるために必要な、会社と従業員の約束事。

    労働基準法第36条に根拠があるため「三六協定」と呼ばれる。

    会社は、三六協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければならない。

    残業時間には原則として上限(月45時間、年360時間)がある。

    特別条項を結んでも、残業時間にはさらに厳しい上限(年720時間、複数月平均80時間以内など)がある。

    三六協定は、労働者の健康を守るための大切なルールです。自分の働き方を守るためにも、ぜひこの内容を覚えておいてください。


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  • 「36協定書に押印は必要?」――協定届を兼ねる協定書とその実務上のポイント

    36協定書と協定届の違いとは?

    労働基準法第36条に基づく「36協定」は、時間外労働や休日労働に関する労使間の合意を示す文書です。この協定には、労使双方の合意を明確にするために、署名や押印が求められます

    ただし、この36協定を労働基準監督署に届出する「協定届」には署名や押印の必要がありません。2021年4月以降、協定届の様式に押印欄が削除されています。

    実務上、36協定届は「協定書を兼ねる形」で使われることが多く、届出と同時に協定内容の合意を示すための文書として機能します。

    協定届に押印は不要でも、協定書に押印は必要?

    2021年4月の法改正により、36協定届において使用者や過半数代表の押印・署名は不要となりました。つまり、労働基準監督署に提出する届出書においては、押印は省略可能ということです。

    では、協定書自体についてはどうでしょうか?
    実務上、協定届が協定書を兼ねる場合でも、実際には署名や押印を行うのが一般的です。理由は以下の通りです。

    なぜ協定書に押印が必要なのか?

    法的証拠としての効力

    協定書は労使間の合意を示す重要な文書です。万が一、協定の内容が争われた場合、署名や押印が証拠として有効に働きます。
    単に書面を交わすだけでなく、合意の証拠を明確に残すことが求められます

    選出された過半数代表の確認

    協定書には過半数代表の選出が重要です。過半数代表の署名や押印は、代表者が適法に選出された証明にもなります。
    これがないと、協定自体が無効になるリスクも考えられるため、署名や記名押印を行うことが望ましいのです。

    実務慣行としての対応

    たとえ届出書が押印不要でも、社内で署名や押印を加えた協定書を保管することが通常の運用です。これにより、万一のトラブルが発生した際に、法的にも証拠力の高い形で協定内容を提示することができます。

    実務上の対応として推奨されること

    では、現場での対応はどうすれば良いのでしょうか?以下のポイントに従って、適切に対応することをおすすめします。

    対応項目内容
    協定届提出用押印不要(様式に押印欄がなく、記名のみで十分)
    社内保管用(協定書を兼ねる届)使用者と過半数代表の署名または記名押印を加えることが望ましい
    合意の確認選出手続きや同意取得のプロセスを書面や議事録で残すことが重要

    まとめ

    協定届の押印欄が削除されたことで、労基署への提出は押印不要となった。

    しかし、協定書(労使間で交わす合意書)には署名または押印を加えておくべき

    署名や押印は、協定内容の合意を証明する法的な証拠となるため、万が一のトラブルを防ぐために重要です。

    最終的には、労使の合意を明確にし、適切に記録として残すことが、労働契約の運営を円滑に進めるために欠かせません。行政手続きの簡素化が進んでいるとはいえ、実務上のリスク管理はしっかり行うことが大切です。


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  • 従業員が一人の会社でも残業をさせるには労使協定が必要か

    労使協定がない残業は違法です

    たとえ従業員が一人の会社でも、労働基準法で原則禁止されている時間外労働をさせるのであれば労使協定(三六協定)が必要です。三六協定を結ばないまま残業をさせれば労働基準法違反になります。

    就業規則は10人に満たない場合は作成義務がありませんが、それは労働基準法に「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」という人数規定があるからです。労使協定には人数に関する規定がないので、従業員が1人でもいれば締結しなければなりません。

    労働者代表の選出方法

    少人数であっても複数の従業員がいる場合は、その従業員たち(パート等も含みます)に話し合いで代表者を選出してもらいます。

    基本的には決をとって、多数の賛成を得た人が代表になります。

    この場合は、通常の代表選出と変わりありません。

    関連記事:労働組合または労働者代表

    従業員が1人の場合は話し合いができないので、その1人に対して労使協定について説明して、労使協定に記名捺印をしてもらうことになります。

    三六協定の届出に選出方法を記載する欄には、「従業員一人のため選出手続きなし」と記載して提出します。


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  • 賃金デジタル払い労使協定のサンプル

    通達サンプル

    賃金デジタル払いに関する労使協定

    株式会社○○(以下「会社」という)と従業員代表○○○○は、賃金を資金移動業者の口座に支払う(社内では「給与のデジタル払い」と呼ぶ)ことについて、以下の通り協定する。

    (従業員の同意)
    第1条 会社は、個々の従業員が同意する場合に限り、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座に賃金を支払う。

    (対象従業員の範囲)
    第2条 本協定に基づく資金移動業者の口座への賃金振込は、すべての従業員に適用します。

    (対象となる賃金の範囲及びその金額)
    第3条 資金移動業者の口座への支払対象となる賃金は毎月支給している給与とし、その全額又は従業員が申し出た金額とする。

    (取扱資金移動業者)
    第4条 従業員は、会社が指定する以下の資金移動業者うちの一社を指定する。なお、指定資金移動業者を変更する場合は給与支払予定日の○日前までに会社に申し出るものとする。
    1.○○株式会社(サービス名:○○○○)
    2.○○株式会社(サービス名:○○○○)
    3.○○株式会社(サービス名:○○○○)

    (実施開始時期)
    第5条 資金移動業者の口座への賃金支払いは、令和○○年○月○日より実施する。

    (有効期限)
    第6条 本協定の有効期間は○○年〇月〇日から○○年〇月〇日までの1年とする。ただし、この協定の有効期間満了の1か月前までに、双方のいずれからも異議の申し出がないときは、この協定はさらに1年間有効期間を延長するものとし、以降も同様とする。

    令和○年○月○日

    株式会社○○ 代表取締役社長 ○○○○印
    株式会社○○   労働者代表 ○○○○印

    参考

    上記のサンプルは、以下の通達を参考に作成しました。

    基発1128第4号令和4年11月28日厚生労働省労働基準局長
    賃金の口座振込み等について(抜粋)

    口座振込み等を行う事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合と、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者と、次に掲げる事項を記載した書面又は電磁的記録による協定を締結すること。
    (1)口座振込み等の対象となる労働者の範囲
    (2)口座振込み等の対象となる賃金の範囲及びその金額
    (3)取扱金融機関、取扱証券会社及び取扱指定資金移動業者の範囲
    (4)口座振込み等の実施開始時期

    補足

    対象となる労働者の範囲を制限するとすれば、正社員、パートタイマーなどの雇用区分別にすることが考えられます。事業場毎に給与事務を行っている場合は事業場で区分することも考えられます。このサンプルでは全ての従業員としました。

    対象となる賃金の範囲は、賞与その他を加えるかどうかを検討します。このサンプルでは毎月の給与のみとしました。


    関連記事:給与のデジタル払い

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