Last Updated on 2025年8月14日 by 勝
課長が新人に与信管理を教える会話形式で与信管理を説明します。
与信管理についての会話
【登場人物】
- 課長(営業部/経験20年、与信管理に詳しい)
- 新人(営業配属1か月目)
与信管理とはなにか
新人
課長、ちょっと質問いいですか?「与信管理」って社内の書類に出てきたんですけど、正直よく分からなくて…。
課長
与信管理っていうのは、簡単に言うと「取引先にどこまで掛売りしていいかを決めて、その範囲内で取引を管理すること」だ。
新人
掛売りって、商品やサービスを先に渡して、お金はあとで払ってもらうやつですよね?
課長
そうそう。それ自体は普通の商習慣だけど、もし相手が倒産したり支払いが滞ったら、こっちの売掛金は回収できなくなる。これを「貸倒れ」っていうんだ。貸倒れは会社にとって大きな損失だから、事前にリスクを見極めて取引できる限度を決めるのが与信管理なんだよ。
新人
なるほど…。じゃあ「与信を設定する」っていうのは、その限度額を決めるってことですか?
課長
その通り。たとえば調査して「この会社なら月に500万円まで掛売りしても大丈夫」と判断したら、その500万円が与信限度額だ。もし与信限度額を超えた注文が来たら、前金をもらうとか、納期を分けるとか、取引を断るとか、条件を工夫しなければならない。
調査はどうするのか
新人
取引先の信用って、どうやって調べるんですか?
課長
主な方法はこんな感じだ。
- 信用調査会社の報告書(帝国データバンクや東京商工リサーチ)
- 決算書を提出してもらって分析
- 登記情報などで担保情報をチェック
- 実際に訪問して現場の様子を見る
- 支払状況を継続的にチェックする
新人
決算書って…中小企業相手だと失礼じゃないんですか?
課長
そんなことはないよ。ある程度の掛取引をするなら、決算書提出はごく一般的だ。依頼するときは「社内規定で一定額以上の掛取引は財務状況の確認をお願いしています」と理由を添えれば、ほとんどの会社は応じてくれる。応じてくれないような会社は、何か後ろめたいこと隠れていると思って、取引を見送った方が良いくらいだ。
新人
なるほど…。つまり与信管理って、取引開始前に相手先を調査したうえで限度額を決めて、その後も定期的にチェックすることなんですね。
限度額はどう決める
新人
ところで、課長、さっきの限度額って、私が決めても良いんですか?
課長
いや、担当者が独断で決めることはないよ。ウチの会社ではこうだ。
課長
まず①担当者が事前調査をする。信用調査会社のレポートを取ったり、決算書をもらって財務分析をする。あと、支払実績や業界の状況もチェックだ。
次に②与信案を作成する。たとえば「この会社は自己資本比率が高くて利益も安定しているから、月500万円まで掛売り可能」といった形で、根拠をまとめるんだ。
その案を③上司が審査する。課長や部長が「妥当だな」と思えば次のステップに進む。
次のステップというのは④決裁権限者が承認する段階だ。会社の規程で金額ごとに決裁者が決まっていて、たとえば500万円までは部長、2,000万円までは役員、それ以上は社長決裁…みたいな感じだ。大きな金額や特殊な案件なら、会議を開く場合もある。
最後に⑤社内システムに登録して、営業や経理で共有する。これで「この取引先はどこまで掛売りOKか」が社内で統一されるんだ。
社内システムに登録されれば、与信限度を超えた納品書は発行されない仕組みになっている。
新人
なるほど…。じゃあ営業は、まず信用調査をして与信案を作るところまでが役割なんですね。
課長
そうだな。しかも限度額は一度決めたら終わりじゃない。⑥定期的な見直しも大事だ。年1回は見直すし、もし支払い遅延や業績悪化の兆候があれば、すぐに再調査しなければならない。
新人
分かりました!つまり、与信管理は売る前にリスクを見極めて限度を設定し、承認フローを通して会社としての判断を固める手続きですね。しかも、決まったからと安心しないで、継続して取引先を観察する必要があるってことですね。
課長
その通り。営業は売上を作るだけじゃなく、会社の資金を守る責任もあるからな。与信管理を軽く見ると、一回の貸倒れで利益が吹っ飛ぶこともある。しっかり覚えてほしいですね。
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