Last Updated on 2023年7月9日 by 勝
棚卸とは
棚卸(たなおろし)とは、簡単に言えば、決算に際して商品などの在庫数と状態を確認し記録する作業です。
棚卸の目的は、①売上原価を把握するため ②在庫品の状態を確認するため ③紛失や記帳漏れを見つけるためなどです。
売上原価を把握する
決算では売上原価を求めなければなりません。売上原価は次の式で求めます。
売上原価=期首棚卸高−当期仕入高−期末棚卸高
期首と期末の棚卸高が分からなければ売上原価を求めることができません。そのため、決算においては棚卸をやらなければなりません。
在庫品の状態を確認する
商品の価値は時間とともに劣化するのが一般的です。定められた有効期限などが過ぎれば商品価値はゼロになります。品質が変わらなくても包装が破れて商品価値が失われることもあります。帳簿上に存在しても、実際には価値が減少してしまっている商品を見つけ出すことも棚卸の目的の一つです。
紛失や記帳漏れを見つける
帳簿上はあることになっていても実際には商品が見当たらないこともあります。逆に、帳簿上にない商品が倉庫に存在していることもあります。こうしたことは、ほとんどの場合は事務的なミスによって生じます。
ミス以外では顧客や従業員による窃盗などの不正も考えられます。数が合わない場合に安易に帳尻合わせをしてはいけません。可能な限り食い違いが生じた時期や原因を追求して再発防止に取り組みましょう
棚卸の対象
棚卸とは会社の棚卸資産を対象にして行います。
棚卸資産とは主に①商品・製品 ②仕掛品 ③原材料 ④貯蔵中の消耗品です。
商品・製品
商品や製品とは、販売することを目的として保有している物品のことです。
仕掛品
仕掛品とは、販売することを目的として製造中の未完成の物品です。
原材料
原材料とは、製品を生産するための材料などです。
消耗品
消耗品とは、販売および一般管理活動において消費される物品です。梱包材料、事務用品などが該当します。一般的には購入した時点で経費処理しますが、決算に際しては、使わずに残っている消耗品は「貯蔵品」として棚卸資産に計上しなければなりません。
棚卸の時期
棚卸は決算に伴う作業なので、一般的には年に1回の決算月に行います。半期ごとの決算を行っている会社であれば年2回、四半期決算を行っている会社であれば年4回、月次決算を行っている会社であれば年12回になります。
帳簿棚卸と実地棚卸
棚卸には、帳簿棚卸と実地棚卸があります。帳簿棚卸とは、帳簿で在庫数を把握する棚卸です。実地棚卸は、実際に商品を目で見て確認しながら行う棚卸です。決算に伴う棚卸は実地棚卸が必要です。
例えば月次決算のように法的なものでなく経営上の都合で行う決算であれば、帳簿棚卸だけで行う場合もあります。
棚卸の手順
準備
棚卸の実施日時を決めて関係者に通知します。実地棚卸は商品の動きを止めた方が効率的なので休日や夜間に行なっている会社が多いようです。
棚卸に必要な用品を準備します。一般的には、商品の数や状態を書き込む用紙(棚卸原票)やバーコードリーダーなどを用意します。
棚卸原票はできれば複写式の個票が望ましい。
担当者と担当エリアを指定します。エリアごとに2名1組とします。その商品を熟知している方がスムーズに作業ができるので、日常の担当者に棚卸も担当させがちですが、内部牽制が機能しないので避けましょう。
開始
検査
1人が商品名、数量、商品状態などを目視でチェックして読み上げます。もう1人が聞き取って棚卸原票にボールペンで記載またはデジタルツールに入力をします。
商品に棚卸原票の一票を貼付します。
担当エリアの全ての商品の棚卸が終わったら、数え漏れがないか点検して棚卸原票の一票をまとめて、集計担当者に回付します。このとき、商品に添付した棚卸原票の一票は最終的に棚卸作業が終了するまでそのままにしておきます。
集計
回収された棚卸原票に記載されている数量を集計表(予め帳簿に基づいて商品名や数量が記載されている)に転記します。
実地棚卸数と帳簿残高とに差異がある場合には、もう一度現品を調査します。再調査は最初に棚卸原票を提出した担当者ではなく、別の2人1組にやってもらいます。
棚卸に間違いがない場合は、過去の売上記録や商品受払記録により差異の原因を追求します。
結果に基づいて過不足数を商品受払台帳に記載、または入力して帳簿を修正します。摘要は「商品過不足」と記載します。
修正承認は、通常は棚卸責任者の判断で行いますが、厳密な管理を要する商品等の場合は、より上位の管理者の承認を要する仕組みにしましょう。有害物質の場合には保健所等への届け出が必要な場合もあります。
評価損の計上
棚卸において、商品価値が低下した商品や無価値になった商品が見つかることがあります。これらの商品を従来の価格にしておくことは実態を反映していないことになります。
商品価値が低下している場合は適正な価格に修正します。まったく商品価値が無くなった商品については在庫から除外します。
これらの処分はその妥当性が証明できなければ、後日の税務調査で否認されて修正申告や重加算税の対象になることがあります。一点ごとに、商品の写真付きで評価減や廃棄に至った検討の経緯を残しておきましょう。また、廃棄の事実も証明できなければなりません。廃棄業者に依頼する場合は商品明細付きの処分引受書類を残しましょう。
監査
内部監査担当者が、棚卸実施場所を偏りないよう巡回し、実施状況を検査、指導することがのぞましい。内部監査担当者は、一部の商品についてランダムにテストカウントを実施することが望ましい。
以上が一般的な棚卸の手順です。
保存期間
棚卸表は7年間の保存が義務付けられています。棚卸表の正確性を担保するために棚卸原票も保管しましょう。