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災害

店に強盗がくるかもしれない!店としてどう対策するか考えてみた

Last Updated on 2025年8月16日 by

①従業員が強盗被害で怪我をした場合の労災適用、②経営者の法的責任、③予防的対策や保険、④従業員への事前教育、などの観点から解説します。

一般的なこと

労災適用

従業員が怪我などをした場合に、店内あるいは配達途中などの被災であれば労災保険が適用されます。

業務中・勤務中に第三者(強盗)から受けた暴行や負傷も、業務災害として労災認定されます。

治療費に関しては健康保険ではなく労災でカバーされるので、従業員本人に金銭的負担は生じません。

経営者の法的責任

経営者も被害者であることは確かですが、従業員に対する「安全配慮義務」(労働契約法)があります。

強盗が予見できないレベルの突発的事件なら責任追及は限定的ですが、「従業員の安全確保に全く無関心で、鍵や防犯設備を怠っていた」といった場合には、損害賠償責任を問われる余地もあります。

見舞金の取扱い

労災保険で補償されるので、原則として会社が治療費等を負担する必要はありません。

会社から「見舞金」や「休業中の賃金補填」を行うことはよくあります。これは法的義務ではなく任意ですが、一般的に行われています。

会社にも落ち度があった場合は、被災した従業員から損害賠償を請求される可能性があります。

予防的な防犯対策

防犯カメラ・警備会社との契約・強盗対策マニュアル作成などは安全配慮義務の一環ともいえます。

従業員の安全意識を高めるために「レジに大金を置かない」「非常ボタンの設置」「防犯ブザーの所持」などを検討するとよいでしょう。

活用できる保険

業務災害補償保険(任意保険)
労災の上乗せで慰謝料や休業補償をカバーできます。

店舗総合保険
強盗による現金・商品盗難、什器破損などに対応できる保険があります。

傷害保険(従業員対象)
労災でカバーしきれない部分が補償可能になる保険です。

従業員に対する事前教育

強盗など不測の事態に備えたマニュアルを準備しましょう

緊急時の通報手順(110番、警備会社への連絡)を店内に掲示しましょう。

防犯機器の使い方(非常ベル、通報装置など)はときどき訓練が必要です。

とても大事なポイントですね。
結論から言うと――「戦ってほしい」と明示するのは避けるべきです。

もしものときは

安全優先

従業員の生命・身体の安全が最優先です。強盗は刃物や銃などを持っている可能性があり、不用意に抵抗すれば怪我や死亡のリスクが高まります。

可能であれば、非常ボタンや警察への通報を最優先します。

同時に、お客様を安全な場所へ誘導します。

金品は犯人の要求に従うのを原則とします。

防犯訓練について

店舗等で刺股を用いた訓練を行うことがあります。防犯意識を高めることには大変有効ですが、「刺股訓練」と「実戦での使用」は、目的や法的な扱いが少し異なることに留意が必要です。

刺股訓練の意味

主目的は 「職員の防犯意識を高める」「非常時の行動を事前に考える」 ことです。

特に学校の場合は、児童・生徒の避難誘導までの時間を稼ぐ「防御手段」として位置づけられています。

銀行なども、警備会社や警察到着までの時間稼ぎを想定しているケースが多いです。

実際の場面では

日本の刑法では「正当防衛」「緊急避難」が認められているので、 他者や自分の生命・身体が危険にさらされている場面では、刺股を用いた制止行為は違法ではありません。

不適切な使い方で逆に被害が拡大する可能性があるので、誰もが刺股を扱ってよいというわけではありません。

また、犯人が無抵抗になった後も攻撃を続けると「過剰防衛」になり得るので注意が必要です。

刺股などの防犯具使用は、「犯人制圧を目的」とするよりも、従業員や顧客が逃げる時間を稼ぐ距離を取って身を守る
という位置づけにしましょう。

店舗用防犯マニュアル(従業員向け)

1. 基本方針

  • 最優先は命の安全(従業員・お客様とも)。
  • 犯人には抵抗せず、金品は要求に従ってよい。
  • 犯人を制圧することは目的としない。

2. 事件発生時の行動フロー

  1. 危険を察知したら
    • 落ち着いて状況を把握。
    • 可能であれば非常ボタン・防犯ベルを作動させる。
  2. 犯人が侵入したら
    • 現金・商品は要求に応じ、命を守ることを最優先とする。
    • 可能であれば、非常ベル操作と警察へ110番通報。
  3. お客様がいる場合
    • 無理のない範囲で、静かに避難を誘導。
  4. 刺股・防犯具の使用について
    • 退避や時間稼ぎのために距離を取る手段として使用する。
    • 無理に取り押さえようとしない。
  5. 犯人が去ったら
    • 直ちに警察へ通報し、追跡は方向確認等にとどめ無理に追いかけない。
    • 負傷者がいれば直ちに救急搬送を手配する
    • 店舗の被害状況をメモ・撮影する。

3. 発生後の対応

  • 従業員の怪我等については労災保険を申請する
  • 必要に応じて従業員に見舞金や休業補填を行う。
  • 速やかに保険会社へ連絡する(店舗総合保険、業務災害補償保険など)。

4. 予防的な対策

  • 防犯カメラ・録画装置の設置と定期点検。
  • レジに多額の現金を置かない(釣銭管理を徹底)。
  • 警備会社との契約、非常ボタン・防犯ブザーの設置。
  • 閉店・開店時の複数人対応、夜間は特に注意。

5. 従業員への事前教育

  • 強盗発生時の行動フローを共有し、定期的に行う訓練に参加する。
  • 「命を最優先に、抵抗しない」という基本を徹底する。
  • 防犯具(刺股・防犯スプレー等)がある場合は、使い方=退避のためのツールであることを伝える。

6. 心理的ケア

  • 事件後は休養の確保や必要に応じて専門機関によるカウンセリングを手配する。

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