Last Updated on 2025年8月30日 by 勝
地震や台風などで、当方の敷地内にあるものが隣地に流出して被害を与えてしまった場合、通常であれば賠償責任が生じますが、不可抗力の場合は、損害賠償責任は無いと聞きましたが。そのことについて解説してください。
一般的に、地震や台風のような自然災害が原因で隣地に損害を与えた場合、それが不可抗力によるものであれば、損害賠償責任は生じない可能性が高いです。しかし、どのような場合でも責任を免れるわけではなく、状況によって判断が分かれます。
不法行為責任と不可抗力
損害賠償責任は、民法上の不法行為責任に基づいて問われるのが一般的です。不法行為責任が成立するには、加害者に故意または過失があったこと、そして損害との間に因果関係があることが必要です。
地震や台風は通常、人の力では予見したり防いだりすることができないため、「過失」がないと判断されることが多く、過失がないと判断された場合は不法行為責任は成立しません。これが「不可抗力の場合は賠償責任がない」とされる主な理由です。
土地工作物責任
しかし、民法には土地工作物責任という特別な規定があります。これは、土地上の建物や塀などの工作物に設置または保存の瑕疵(欠陥)があったために他人に損害を与えた場合、その工作物の占有者や所有者が賠償責任を負うというものです。
例えば、以下のようなケースでは、不可抗力とは認められず、賠償責任が生じる可能性があります。
- 老朽化していた塀や屋根: 台風で飛んでいった屋根や、地震で崩れた塀が、そもそも適切な管理がされておらず、老朽化していた場合。
- 点検を怠っていた看板: 強い風が予想される状況で、ぐらつきがある看板を放置していた場合。
- 十分な耐震補強がされていなかった建物: 地震で倒壊した建物が、耐震基準を満たしていなかった場合。
このような場合、自然災害が直接の原因であっても、工作物の管理に不備があったとみなされ、責任を問われる可能性があります。
災害への備えと責任
最終的に、不可抗力と認められるかどうかは、予見可能性や回避可能性があったかどうかで判断されます。
- 予見可能性: 過去の気象データや地域の特性から、同程度の災害が起こる可能性があったか。
- 回避可能性: 予見できた事態に対して、損害の発生を防ぐための適切な措置(補修、補強、点検など)を講じていたか。
これらの点を総合的に考慮し、所有者や占有者が通常想定される事態に対応できる程度の必要な措置を講じていたと認められれば、不可抗力として責任を免れる可能性が高まります。しかし、管理に不備があったと判断されれば、賠償責任を負うリスクがあります。そのため、日頃から建物の点検や補修を適切に行うことが非常に重要となります。
賠償責任保険
このようなリスクに備える保険として、個人の場合には「個人賠償責任保険」があります。
法人の場合、個人の「個人賠償責任保険」に相当する保険は、事業活動の種類やリスクに応じてさまざまな種類があり、総称して「事業者向け賠償責任保険」と呼ばれます。
ご質問のケース(地震や台風で、敷地内のものが隣地に流出して被害を与えた)に直接関係するのは、主に、「施設賠償責任保険」と「請負業者賠償責任保険」です。
法人の場合、「個人賠償責任保険」のように一括でカバーするのではなく、「施設」「請負業務」「生産物」といった、事業活動に伴う個別のリスクごとに賠償責任保険を検討する必要があります。ご質問の災害時のケースでは、「施設賠償責任保険」が最も関連性が高い保険となります。
これらの保険は、単独で加入することもできますが、複数の補償を組み合わせて加入できる「総合賠償責任保険」が提供されています。法人の場合は、自社の事業内容とリスクを洗い出し、それに合った保険に加入しておくことが、予期せぬ高額な賠償リスクに備える上で非常に重要です。
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