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従業員を社外ボランティア活動に参加させる際の注意点

Last Updated on 2025年8月14日 by

社員の方々に休日を利用して、地域の清掃や、お祭りなどに地域貢献活動として参加してもらう場合には、いくつか注意すべき点があります。社員の方々が気持ちよく参加できるよう、以下のポイントを参考にしてください。

強制参加にしない

休日は社員にも予定があります。参加を強制しないことが大事です。給与を支給するかしないかにかかわらず、社員の自主的な意志に基づく参加である必要があります。

参加は任意であることを明確に伝えましょう。「参加は自由です」「参加を強制するものではありません」といった言葉を、募集の際に必ず記載しましょう。

不参加者への配慮参加しないことで、評価に影響したり、職場で居心地が悪くなったりしないよう、社内全体で理解を深める必要があります。上司から参加を促すようなことも避けましょう。

休日出勤の扱いを明確にする

一般的には、休日に行う活動であれば、基本的には日曜出勤として扱う必要があると思われます。また、参加に際して発生する交通費や、活動に必要な備品(軍手、清掃道具、祭り半纏・浴衣など)については会社負担とするのが妥当でしょう。

賃金や代休の付与があるのか、それともボランティア活動として無報酬なのかを、事前に明確に伝える必要があります。

完全に自主的なボランティア参加であれば、無報酬とする選択肢もあります。その場合でも、会社が参加を呼びかけるのであれば、一定の費用について会社が負担するなど、社員の金銭的負担を軽減する配慮を検討しましょう。

安全面の確保と備品の準備

安心して活動に参加してもらうために、安全対策は欠かせません。

熱中症対策(水分補給の徹底)、怪我の防止、万が一に備えた救護体制など、活動内容に応じた安全対策を講じましょう。

軍手や帽子、ゴミ袋、清掃道具、タオル、飲料水など、活動に必要なものは会社で用意しましょう。

事前告知とスケジュール調整

活動の計画は、できるだけ早めに立て、社員の方々がプライベートの予定を調整できるよう配慮が必要です。活動日の1〜2ヶ月前には告知し、参加者を募るようにしましょう。

「何時から何時まで」と、活動の開始時間と終了時間を明確に伝え、長時間の活動にならないよう配慮しましょう。

これらの注意点を踏まえ、社員の方々が気持ちよく、そして安全に地域貢献活動に参加できるような体制を整えてみてください。

事故があったときの責任

ボランティア活動への参加中の事故等については、「紹介しただけで強制していないので会社の責任はない」「無給のボランティア活動なので会社の責任はない」とは言い切れません。また、状況によっては労災認定される可能性もゼロではありません

以下に、いくつかのケースに分けて、会社の責任や労災の可能性について解説します。

会社の責任について

「強制していない」「ボランティア活動だ」という事実だけでは、会社の責任を免れることは難しいと思われます。

会社の業務の一環とみなされる可能性

参加者名簿を作成したり、参加を促すためのメールを会社名義で送信したりするなど、会社の組織的な関与が認められます。

活動内容が、会社の広報活動イメージアップに繋がる目的であると判断されることがあります。

「会社の業務に関連する活動」だったと判断されると、会社に安全配慮義務違反があったとして、損害賠償責任を問われる可能性があります。

労災の可能性について

労災保険は、「業務上の事由」または「通勤途中の事故」による怪我や病気に適用されます。

「業務上の事由」とみなされる可能性

会社の指示や、直接的に指示していなくても暗に強制性があった場合は、業務として参加していたとみなされる可能性があります。

会社の業務と密接な関連性が認められれば、会社の利益に資する活動として業務関連性が認められる可能性があります。

労災として認められるかどうかは、個別の事案ごとに労働基準監督署が判断します。

結論と対策

「強制していない」「ボランティア活動だ」、だから責任はない、という考えは危険です。万が一の事故に備え、以下の対策を講じることを強くお勧めします。

参加者が個人的に加入するだけでなく、会社として包括的なボランティア保険に加入することを検討してください。これにより、参加者全員の活動中の怪我や、万が一の賠償責任に備えることができます。

何もしなくても事故等があれば結果責任を負うことがあります。であれば、会社が当初から会社活動の一環として、リスクの事前想定、安全対策用品の準備、現場での安全を考慮した指揮命令系統などに、積極的に関与することも選択肢です。

専門的な判断が必要な場合は、社会保険労務士や弁護士に相談することをお勧めします。


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