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安全衛生管理

産業医が「意見」を述べるのはどういうときですか?

Last Updated on 2025年8月13日 by

産業医が意見を述べる場面は多岐にわたります。その意見は主に事業者に述べられ、その強制力は状況によって異なります。

意見を述べる主な場面

産業医が意見を述べる場面は、労働安全衛生法や関連法令に基づき、主に以下のものが挙げられます。

健康診断の結果に基づく意見: 健康診断で異常の所見があった労働者について、就業上の措置(就業場所の変更、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少など)に関する意見を事業者に述べます。

長時間労働者への面接指導後の意見: 長時間労働者に対する面接指導の結果、その労働者の健康を確保するために必要な措置について意見を述べます。

ストレスチェック後の高ストレス者への面接指導後の意見: ストレスチェックで高ストレスと判定され、面接指導を受けた労働者について、就業上の措置に関する意見を述べます。

職場巡視後の意見: 月1回(特定の要件を満たす場合は2か月に1回)の職場巡視を行い、作業方法や衛生状態に問題がある場合に改善を求める意見を述べます。

衛生委員会での意見: 衛生委員会に出席し、職場の衛生管理や労働者の健康確保に関する事項について、医学的な専門家としての意見を述べます。

休職・復職判定に関する意見: 傷病により休職していた労働者の復職の可否や、復職後の就業上の配慮(短時間勤務、業務内容の制限など)に関する意見を述べます。

意見を述べる相手

産業医が意見を述べる相手は、原則として事業者(会社)です。具体的には、労働者の健康管理を統括する人事担当者や、事業場の責任者である事業場長などに対して意見が伝えられます。

意見の強制力

産業医の意見には、法的な強制力はありません。しかし、多くの場面で事業者はその意見を尊重し、必要な措置を講じる義務があります。

労働安全衛生法上の義務: 健康診断や面接指導後の意見に関して、労働安全衛生法では「事業者は、医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講ずること」と定められています。これにより、事業者は産業医の意見を軽視することはできません。

安全配慮義務: 企業には、労働者が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります。産業医の意見を無視して労働者の健康が損なわれた場合、この義務違反として、損害賠償責任などを問われる可能性があります。

したがって、産業医の意見は直接的に「〇〇しなければならない」という強制力を持つわけではありませんが、事業者が意見を無視することは、法律上の義務違反や安全配慮義務違反につながるリスクが高いため、実質的には強い影響力を持つと言えます。


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