カテゴリー
安全衛生管理

常時使用と常時雇用と常用

Last Updated on 2023年10月10日 by

常時使用する

労働基準法

労働基準法第89条に次のようにあります。

「常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。」

「常時十人以上の労働者を使用する」となっています。これが「常時使用」です。

常時というのは、「いつも」という意味ですが、分かりにくいので事例で説明します。

基本的には、ある日に出勤している従業員数ではなく、その事業場に雇われている従業員数で数えます。

従業員が辞めたり休んだりして一時的に労働者の数が10人未満になることがあっても、補充などですぐに元に戻るのであれば「常時10人以上」に含めます。

通常は10人未満の現場で、新規の採用者と退職予定者が同時に在籍しているために一時的に10人に達しているような場合は「常時10人以上」ではありません。

ただし、「一時的」という部分を労働基準監督官に厳し目に解釈されることもあります。雇用する労働者数が10人に達することがあったら「常時10人以上」だととらえる方が無難です。

そして、労働者の範囲が重要です。

労働基準法の常時使用する労働者の数は、アルバイト、パートタイマー等の臨時的労働者の数を含めて数えます。

労働安全衛生規則

健康診断を受けさせなければならないのは、労働安全衛生規則によると「常時使用する労働者」です。

平成19年10月1日基発第1001016号通達は、一般健康診断を実施すべき「常時使用する短時間労働者」とは、次の(1)と(2)のいずれの要件をも満たす場合としています。

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。
(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。

つまり、この場合の「常時使用する労働者」は雇用期間によって区分されます。

常時雇用する

次世代育成支援対策法

第十二条 国及び地方公共団体以外の事業主(以下「一般事業主」という。)であって、常時雇用する労働者の数が百人を超えるものは・・・

ここでの「常時雇用する労働者」は、正社員、パート、アルバイトなどの名称にかかわらず、以下の①または②のいずれかに該当する従業員を指します。

① 期間の定めなく雇用されている者
② 過去 1 年以上の期間について引き続き雇用されている者または雇い入れ時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者(一定の期間を定めて雇用されている者または日々雇用される者であってその雇用契約期間が反復更新されて、事実上①と同等と認められる者)

障害者雇用促進法

第四十三条 事業主(常時雇用する労働者(以下単に「労働者」という。)を雇用する事業主をいい・・・

この常時雇用する労働者は、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年を超えて雇用される人(見込みを含む)が対象となります。

労働者派遣法

厚生労働省作成の労働者派遣事業関係業務取扱要領では、「常時雇用される労働者」とは、労働契約の形式の如何を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者のことをいう。 具体的には、次のいずれかに該当する場合に限り「常時雇用される労働者」に該当するとしています。

1.期間の定めなく雇用されている者
2.一定の期間(例えば、2か月、6か等)を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されて事実上1と同等と認められる者。すなわち、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者
3.日日雇用される者であって、雇用契約が日日更新されて事実上1と同等と認められる者。すなわち、2の場合と同じく、過去1年を超える期間について引き続き雇用されている者又は採用の時から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる者

なお、雇用保険の被保険者とは判断されないパートタイム労働者であっても、1から3までのいずれかに該当すれば「常時雇用される」と判断するものであるので留意すること。

常用労働者

賃金構造基本統計調査

賃金構造基本統計調査のパンフレットには「常用労働者」の定義が次のように記載されています。

次の各号のいずれかに該当する労働者をいう。
1 期間を定めずに雇われている労働者
2 1か月を超える期間を定めて雇われている労働者
3 日々又は1か月以内の期間を定めて雇われている労働者のうち、4月及び5月に、それぞれ18日以上雇われた労働者

なお、厚生労働省作成の労働者派遣事業関係業務取扱要領では、常用労働者については、いわゆる「正社員」と括弧書きを入れています。

常時従事する

特定化学物質では「常時従事する」という表現がでてきます。

独立行政法人労働健康安全機構茨城県産業保健総合支援センターのホームページから引用します。

特化則第39条では、「常時従事する労働者」に特殊健康診断を実施するとされていますが、どの程度が該当しますか?

特定化学物質障害予防規則第39条の「常時従事する労働者」とは、「継続して当該業務に従事する労働者」のほか、 「一定期間ごとに継続的に行われる業務であってもそれが定期的に反復される場合には該当する」とされています。 したがって、当該業務に従事する時間や頻度が少なくても、定期的に反復される作業であれば、特殊健診の対象になります。 なお、有機溶剤の特殊健診における「常時従事する労働者」も同様に考えることになります。
←引用ここまで

まとめ

似たような用語でも法律では厳密に使い分けられています。ただし、同じ用語が、法律によって定義が違っている場合があるので注意が必要です。

例えば、同じ「常時使用」でも就業規則の届け出義務に関してはアルバイト等を含むで雇用期間は問題になりませんが、健康診断の対象者になれば雇用期間が重要になります。

常時雇用の方は、基本的には期間の定めがない労働者を対象にしていますが、こまかいところが法律によって違っています。

その都度調べるしかありません。


会社事務入門安全衛生管理体制>このページ