産業医

Last Updated on 2021年9月2日 by

産業医の選任義務

労働安全衛生法の定めにより、一定規模以上の事業場について、一定の医師のうちから「産業医」を選任しなければなりません。

業種による区別は無く、常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任しなければなりません。

選任の手続

産業医を選任するべき事業場になったときから14日以内に選任しなければなりません。

選任したら、所轄の労働基準監督署長に遅延なく選任報告書を提出しなければなりません。

厚生労働省のウェブサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」で作成することができます。統括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任報告は同じ様式を用います。

解任も同じ様式を用います。産業医が離任または解任したときは、労働基準監督署長に届け出るとともに、その理由を衛生委員会に報告しなければなりません。

産業医が不在になったら

衛生管理者の設置義務は労働基準法に定められた義務なので、選任した衛生管理者が退職等でいなくなったときは、衛生管理者不在の状態で放置することはできません。

やむを得ない事由で産業医が不在になり、後任をすぐに見つけることができない場合には、労働基準監督署を通じて都道府県労働局長の特例許可を申請しなけれなりません。

選任すべき産業医の数

産業医は、労働者数が50人以上となれば1人を選任します。ただし、次に該当する事業場にあっては、その産業医は専属の者とする必要があります。
1 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
2 一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場
また、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任することとなっています。

産業医に関する事項を従業員に周知する

産業医を選任した事業者は産業医の業務に関する事項を従業員に周知するしなければなりません。労働者が安心して相談できるようにするための措置です。(安衛法第101条第1項)

周知する方法

1.各作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける
2.書面を従業員に交付する
3.磁気テープ、磁気デスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ各作業場の従業は記録の内容を常時確認できる機器を設置する

周知すべきこと

1.事業場における産業医の業務の具体的な内容
2.産業医に対する健康相談の申出の方法
3.産業医による労働者の心身の状態に関する情報等の取扱い方法
4.労働者の心身の状態に関する情報の取扱い

産業医の職務

産業医の具体的な職務は次のようなものです。

衛生委員会へ出席する

従業員50人以上の事業場は衛生委員会を設置する必要があります。また、特定の業種では安全衛生委員会を設置します。

衛生委員会

産業医は、衛生委員会・安全衛生委員会の構成員となり、(毎回出席する義務はありませんが)出席して意見を述べます。

定期的に職場を巡視する

産業医は少なくとも毎月1回(条件付きで2ヶ月に1回以上)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。

産業医の職場巡視回数

職場の整理、整頓、清掃、清潔の状態、職場の照明、温度などが適正であるか、休養・休憩の設備の状態などを実際に巡回して自ら確認します。

事業者へ勧告する

産業医は、労働安全衛生法13条にもとづいて「勧告」することができます。

労働安全衛生法13条
5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
6 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

勧告は、産業医から都度行われる助言や指導とは違います。勧告のときは、産業医から「これは助言ではなく安衛法13条に基づく勧告です」と伝えられます。はっきりしないときは確認してください。

事業者が正しく理解することが必要であるため、勧告しようとするときはあらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求めることも規定されています。(安衛則第14条の3第1項)

勧告を受けたときは、勧告内容、措置内容、措置を講じない場合の理由に関して、速やかに衛生委員会等に報告しなければなりません。衛生委員会等は、委員会の意見および意見を踏まえた措置内容を議事録に記録しなければなりません。

勧告の内容や、勧告を受けて講じた措置の内容、措置を講じない場合の理由を記録し、記録し3年間保存しなければなりません。

健康診断結果をチェックする

産業医は、健康診断の結果について報告を受け、異常の所見があると診断された従業員について就業判定を行い、就業制限や休職が必要と判断した従業員について意見書を作成します。

事業主は、健康診断結果報告書に産業医の押印をもらい、労働基準監督署に報告する義務があります。

ストレスチェックを実施する

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの全般に関わります。

ストレスチェックの結果、高ストレスであり、面接指導が必要であると判断された者を対象とする面接指導を行います。

関連記事:ストレスチェックのあらまし

長時間労働者への面接指導を実施する

月あたり100時間超の時間外労働を行い、疲労蓄積があって面接を申し出た従業員、月あたり80時間超の時間外労働を行い、健康上の不安があるとして面接を申し出た従業員に対して、長時間労働者面接指導を行います。

長時間労働者への面接指導

休職者に関与する

事業場によっては、産業医が休職希望の従業員との面談等を行うことがあります。また、休職者の職場復帰にあたって面談を行い、職場復帰の可否を判断し、職場復帰後の労働条件について事業主に対して意見を出します。

メンタル不調者への職場復帰支援

健康相談などを行う

事業場によっては、健康相談を希望する従業員の相談を受け、また、従業員に対する健康講話を行うことがあります。

事業主には、産業医が健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の必要な措置を講じる努力義務があります。(安衛法第13条の3)

産業医の権限

産業医は、事業主の指示や許可がなくても、労働者の健康管理を実施するために必要な情報を、労働者から直接収集できます。

産業医は、事業主の指示や許可がなくても、労働者の健康を確保するために緊急の必要があるときは、労働者に対して直接必要な措置をとるように示すことができます。

産業医は、事業主や総括安全衛生管理者に対して意見を述べることができます。

産業医は、衛生委員会等に対して、必要な調査審議を求めることができます。

産業医に対する情報の提供

事業者は、産業医が適切に職務を遂行できるように、産業医に情報を提供する義務があります。

具体的には、行政通達で次のとおり示されています。(基発0907第2号、基発1228第16号)
■異常の所見のある者への健康診断実施後の措置
■長時間労働者に対する面接指導実施後の措置
■高ストレス者の面接指導実施後の措置
■またはこれらに対して予定する措置の内容、措置を講じない場合の理由(提供時期:医師等からの意見聴取を行った後、遅滞なく)
■週40時間を超える労働時間があり、その超えた時間が月80時間超となった労働者の氏名・超えた時間に関する情報(該当者がいない場合も「該当者なし」の情報提供が必要)
■労働者の業務に関する情報であって、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報(作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数等)

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