Last Updated on 2024年11月2日 by 勝
産業医とは
産業医とは、事業場における労働者の健康管理や安全確保について、専門的な立場から指導・助言を行う医師を言います。なお、医師であれば誰でもよいということではなく、専門の研修を終了した医師等の条件があります。
労働安全衛生法により、常時使用する労働者数が50人以上になった事業場は産業医を選任しなければなりません。もっと大規模になれば専属の産業医や、複数の選任が求められます。
選任すべき産業医の数など
選任すべき人数
産業医は、労働者数が50人以上になれば1人を選任しなければなりません。
次に該当する事業場は、その産業医は専属の者とする必要があります。
1 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場
2 一定の有害な業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場
また、常時3,000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任しなければなりません。
専属とは
専属というのは、その事業場において常勤の産業医として勤務するということですが、どのくらい居れば常勤になるかというのは若干わかりにくいところもあります。
フルタイム勤務であれば、直接雇用はもちろん、業務委託契約であっても疑義は生じないでしょう。
週に4日とか、週に3日だったらどうか、あるいは、毎日出勤するとしても6時間勤務ならどうか、4時間勤務ならどうか、ということになると、この辺を明示した通達は無いようです。契約内容によっては労働基準監督官の指導対象になるかもしれません。
専属産業医の兼務
専属の産業医に他の非専属事業場の産業医を兼務させることができる場合があります。
関連記事:専属産業医の兼務について
選任の手続き
産業医を選任するべき事業場になったときから14日以内に選任しなければなりません。
選任したら、所轄の労働基準監督署長に遅延なく選任報告書を提出しなければなりません。
産業医が離任または解任したときは、労働基準監督署長に届け出るとともに、その理由を衛生委員会に報告しなければなりません。
産業医の選任報告は、令和7年1月1日より電子申請による提出が義務づけられています。
関連記事:労働者死傷病報告の電子申請について
産業医が不在になったら
衛生管理者の設置義務は労働基準法に定められた義務なので、選任した産業医がいなくなったときは、直ちに後任を選任しなければなりません。
やむを得ない事由で産業医が不在になり、後任をすぐに見つけることができない場合には、労働基準監督署を通じて都道府県労働局長の特例許可を申請しなけれなりません。
産業医に関する事項を従業員に周知する
産業医を選任した事業者は産業医の業務に関する事項を従業員に周知(知らせること)しなければなりません(安衛法第101条第1項)。周知の方法等も定められています。
周知する方法
1.各作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける
2.書面を従業員に交付する
3.磁気テープ、磁気デスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ各作業場の従業は記録の内容を常時確認できる機器を設置する(具体的には、パソコン等の機器を用いて、常時確認できることを意味しています。)
周知すべきこと
1.事業場における産業医の業務の具体的な内容
2.産業医に対する健康相談の申出の方法
3.産業医による労働者の心身の状態に関する情報等の取扱い方法
4.労働者の心身の状態に関する情報の取扱い
周知文書の例
産業医の業務についてお知らせします
総務部
1 健康上の相談
当社の従業員は、健康診断後に気になること、普段の体調で気になること、メンタル面で気になることを産業医に相談することができます。
2 残業時間が超過している従業員への面談
産業医は時間外労働が1か月あたり80時間を超えている従業員に対する面談を担当します。面談終了後、必要に応じてご本人の同意を得て、会社へ意見を述べます。
3 ストレスチェックの実施と高ストレス者への対応
産業医はストレスチェックの実施、およびストレスチェックの全体分析結果について助言を行います。
また、高ストレス者のうち、面談を希望する従業員に対して面談を行い、面談結果について会社に報告をします。
4 就業制限や休職、及び復職に関する事
産業医は、従業員の就業制限や休職、及び復職について、会社に意見を述べます。
5 健康診断結果のチェックと就業判定
産業医は、健康診断結果について確認を行います。異常の所見があると診断された従業員については医療機関への受診を促したり、保健指導等を行います。
6 職場巡視
産業医は、少なくとも2か月に 1 回職場を巡視をし健康管理や安全確保について点検を行っています。職場巡視の際に質問をすることがあったらご協力をお願いします。点検の結果は衛生委員会など報告します。
7 衛生委員会出席
産業医は、月に一度開催されている衛生委員会に出席して、講話や助言等を行います。
8 その他
産業医は法律により守秘義務が課せられています。安心して相談してください。
ただし、労働者に健康上安全上の問題がある場合には、会社に安全配慮義務を適切に果たしてもらう観点から、会社に報告をすることが必要となる場合もあることをご承知ください。そのような必要があると認めたときは産業医から事前にご本人に説明があります。
当社には産業医が常駐していないので、相談や面談はあらかじめ日時を設定させていたくので希望日等を総務部(担当◯◯)に申し出てください。相談の内容を具体的に申し出る必要はありません。
産業医は、疾患によっては専門医ではないこともあるので、専門的対応が必要な場合は産業医から別の医療機関をご紹介します。その場合、紹介された医療機関以外で受診しても構いません。
以上の内容について分からないことがあるときは遠慮なく総務部◯◯まで申し出てください。
産業医の職務と権限
産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に規定されています。また、産業医の職務を遂行するための権限が与えられています。
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