Last Updated on 2025年9月8日 by 勝
施設内禁煙の法的根拠
会社は施設内での喫煙を全面的に禁止することができます。
健康増進法
- 事業者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じる努力義務があると規定されています。
- 学校・病院・行政機関などは原則敷地内禁煙、事業所や飲食店も原則屋内禁煙となりました。→ つまり「受動喫煙防止」の観点から、事業者は施設内禁煙を実施する法的義務や責任があるのです。
労働契約法
- 会社は、従業員の安全と健康を確保する安全配慮義務を負っています。喫煙による健康被害から非喫煙者を守ることは、この義務を果たすためにも重要です。
施設管理権と企業秩序維持件
- 施設管理権・企業秩序維持権: 会社は、その施設を管理する権限(施設管理権)と、会社の円滑な運営を維持する権限(企業秩序維持権)を持っています。受動喫煙による非喫煙者への健康被害を防止したり、会社全体の健康経営を推進したりすることは、この権限に基づく正当な目的とみなされます。
喫煙の権利は?
- 憲法上は「幸福追求権」の一部として、一定の自己決定の自由(喫煙を含む)が尊重されます。ただしこれは絶対的な権利ではなく、他者の権利(健康を守る権利)や公共の福祉によって制限されます。
休憩時間中の施設内での喫煙
休憩時間においても会社は施設内の喫煙を禁止することができます。
労働基準法では、休憩時間は「労働者が労働から離れることを保障された時間」とされており、自由に利用できるのが原則です。しかし、昭和22年の通達(昭和22年9月13日発基第17号)により、「休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加へることは休憩の目的を害さない限り差し支へないこと。」とされています。
休憩時間中も含めて禁煙にする処置は、受動喫煙防止、他の労働者への安全配慮の観点から、会社が施設管理権・企業秩序維持権を行使するものであり、「事業場の規律保持上必要な制限」の範囲内とみなされています。
休憩時間中の敷地外での喫煙
会社の門付近など、敷地の外での喫煙を禁止することも、状況によっては可能です。
- 社会的な評価の低下: 会社の門付近での喫煙は、通行人や近隣住民に不快感を与え、会社の社会的評価や信用を損なう可能性があります。特に、清掃やポイ捨ての問題も発生しやすくなります。
- 労働契約上の義務: 会社は、企業秩序維持の一環として、従業員に対して会社の信用を失墜させるような行為をしないよう命じることができます。
- 健康増進法による配慮義務: 健康増進法では、喫煙をする際は、周囲の状況に配慮し、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう努めることが義務付けられています。会社の門付近での喫煙は、この配慮義務に違反する可能性が高いです。
会社の門前など、会社の事業活動と密接に関連し、その評判に直接影響を与える場所での喫煙は、企業秩序維持の観点から禁止できると解釈されます。
私生活も含めて禁煙させることは?
一般的に、プライベートな時間や場所での喫煙まで全面的に禁止することは、従業員の私生活上の自由を過度に制限するため、原則として認められません。
労働契約関係は「職場における労務提供」と「その対価」である賃金を中心とするものです。私生活における喫煙習慣は、業務に直接関係がなければ、会社が介入できる範囲を超えています。
ただし、勧奨(推奨・サポート)は可能であり、一般的にも広く行われています。
健康増進法の趣旨(受動喫煙防止・健康づくり推進)に沿う取り組みとして、禁煙外来の費用補助、禁煙キャンペーン、健康診断後の指導などは広く導入されています。
これは「命令」ではなく、あくまで本人の自主性を尊重した「推奨」なので問題ありません。
また、職務上の特殊性から必要性が認められる場合は、合理的制限として許される可能性があります。
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