女性労働基準規則の定め
女性労働基準規則に定められた重量物の取扱いの制限は、年齢と作業の態様(断続作業か継続作業か)によって異なります。
これは、女性の健康保護を目的として、労働基準法第64条の3および女性労働基準規則第2条に規定されています。
年齢 | 断続作業での上限 (kg) | 継続作業での上限 (kg) |
満16歳未満の女性 | 12 kg まで | 8 kg まで |
満16歳以上18歳未満の女性 | 25 kg まで | 15 kg まで |
満18歳以上の女性 | 30 kg まで | 20 kg まで |
- 断続作業:荷物の積み下ろしなどの間に、運搬しない時間が長く取れる作業。
- 継続作業:仕分け作業のように、重量物の取扱いが連続して続く作業。
特に注意が必要なケース
- 妊産婦の制限:妊娠中および産後1年を経過しない女性(妊産婦)は、重量物を取り扱う業務全般に就かせることは原則として禁止されています(具体的には、継続的に5kg以上の重量物を取り扱う業務など)。
- 腰痛予防の指針:法令上の上限とは別に、厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、18歳以上の女性が一人で人力のみで取り扱う重量については、男性の制限の60%程度(目安として体重の約24%以下)に留めることが望ましいとされています。
年少者労働基準規則の定め
年少者労働基準規則(年少則)に定められた重量物の取扱いの制限は、18歳未満の男女の健康を保護するためのものです。性別、年齢、および作業の態様(断続作業か継続作業か)によって、以下のように上限が定められています。
これは、年少者労働基準規則第7条に基づくものです。(この表は、女性労働基準規則と一部重複しています)
性別 | 年齢 | 断続作業での上限 (kg) | 継続作業での上限 (kg) |
男性 | 満16歳未満 | 15 kg まで | 10 kg まで |
満16歳以上 満18歳未満 | 30 kg まで | 20 kg まで | |
女性 | 満16歳未満 | 12 kg まで | 8 kg まで |
満16歳以上 満18歳未満 | 25 kg まで | 15 kg まで |
- 断続作業:荷物の積み下ろしなどの間に、重量物を持たない時間が長く入る作業。
- 継続作業:仕分け作業のように、重量物の取扱いが連続して続く作業。
満18歳以上の扱い
なお、満18歳以上の女性については、「女性労働基準規則」により、断続作業で30kg未満、継続作業で20kg未満の上限が別に定められています。
また、満18歳以上の男性については、法令上の明確な上限はありませんが、腰痛予防対策指針において「体重のおおむね40%以下」を目安にすることが推奨されています。
腰痛予防対策指針
厚生労働省が定める「職場における腰痛予防対策指針」は、法令上の制限(年少者労働基準規則や女性労働基準規則)とは別に、腰痛を予防するための作業管理上の努力目標・目安を定めています。
その中で、人力のみにより重量物を取り扱う場合の目安は以下の通りです。
人力で取り扱う重量の目安
対象者 | 目安となる重量(努力目標) | 備考 |
満18歳以上の男子労働者 | 体重のおおむね40%以下となるよう努める | 法令上の明確な上限はないが、腰痛予防の目安 |
満18歳以上の女子労働者 | 男子が取り扱える重量の60%程度(目安として体重の概ね24%以下)となるよう努める | 法令(女性労働基準規則)上の上限(断続30kg/継続20kg)とは別に、腰部負担軽減の目安 |
【注意】以前の厚生労働省の通達には、18歳以上の男子労働者が人力のみにより取り扱う物の重量の上限について、「55kg以下にすること」という規定が含まれていました。この規定は、平成25年(2013年)6月18日に改訂された「職場における腰痛予防対策指針」において削除され、代わりに「体重のおおむね40%以下」という、より個人の身体能力に応じた目安(努力目標)が重視されることになりました。
その他の重量物取扱いに関する規定
指針では、重量制限の目安だけでなく、腰痛予防のための様々な作業管理や作業指導についても定めています。
作業管理(設備の導入や作業方法の改善)
- 機械化・省力化の推進:常時行う重量物取扱い作業は、リフター、コンベア、台車などの使用により自動化・省力化を図ること。
- 二人作業の実施:上記の重量制限を超える物を取り扱う場合は、身長差の少ない2人以上で作業を行い、そのうち1人を指揮者とし、合図・掛け声で調子を合わせるよう努めること。
- 重量の明示:取り扱う重量物の重量をあらかじめ明示すること。
作業指導(労働者への教育)
- 正しい姿勢と動作:
- できるだけ重量物に身体を近づけ、重心を低くする姿勢をとる。
- 床面から持ち上げる際は、膝を曲げて腰を十分に下ろし、膝の力で立ち上がる。
- 背を伸ばした状態での腰部のひねりを少なくする。
- 休息:労働者にとって過度の負担とならないように、適度な間隔で小休止や休息を設けること。
詳細は、各規則、指針を参照してください。