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安全衛生管理

産業医の職務と権限

Last Updated on 2024年10月30日 by

産業医とは

産業医とは、事業場において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師をいいます。常時使用する労働者数が50人以上の事業場では産業医を選任しなけれなりません。

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産業医の職務は労働安全衛生法に定められており、その職務を遂行するための権限を与えられています。

産業医の職務

産業医の職務は労働安全衛生規則第14条第1項に規定されています。

(産業医及び産業歯科医の職務等)
第十四条 法第十三条第一項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
二 面接指導並びに必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。(抜粋)
三 心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。(抜粋)
四 作業環境の維持管理に関すること。
五 作業の管理に関すること。
六 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
七 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
八 衛生教育に関すること。
九 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。

具体的な活動で整理すると次のようになります。

衛生委員会に出席する

従業員50人以上の事業場は衛生委員会を設置し、毎月1回以上開催する義務があります。また、特定の業種では安全衛生委員会を設置します。

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産業医は、衛生委員会または安全衛生委員会の構成員となり、(毎回出席する義務はありませんが)出席して意見を述べます。

職場を巡視する

産業医は少なくとも毎月1回(条件付きで2ヶ月に1回以上)職場を巡視し、職場環境の確認を行います。

関連記事:産業医の職場巡視回数

職場の整理、整頓、清掃、清潔の状態、職場の照明、温度などが適正であるか、休養・休憩の設備の状態などを実際に巡回して自ら確認します。

衛生教育を実施する

衛生教育は、従業員の心身の健康維持・増進のために行います。産業医は衛生委員会等の場において、健康管理や衛生管理についての講話をします。

健康診断結果を確認する

産業医は、健康診断の結果について報告を受け、異常の所見があると診断された従業員について就業判定を行い、就業制限や休職が必要と判断した従業員について意見書を作成します。

事業主は、健康診断結果報告書に産業医の押印をもらい、労働基準監督署に報告します。

健康相談などを行う

健康相談を希望する従業員の相談を受け、また、従業員に対する健康指導を行うことがあります。

事業主には、産業医が健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、その他の必要な措置を講じる努力義務があります。(安衛法第13条の3)

長時間労働者に面接指導を実施する

月あたり100時間超の時間外労働を行い、疲労蓄積があって面接を申し出た従業員、月あたり80時間超の時間外労働を行い、健康上の不安があるとして面接を申し出た従業員等に対して、長時間労働者面接指導を行います。

関連記事:長時間労働者への医師による面接指導制度

ストレスチェックに関与する

産業医は、ストレスチェックの実施者としてストレスチェックの全般に関わります。

ストレスチェックの結果、高ストレスであり、面接指導が必要であると判断された者を対象とする面接指導を行います。

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休職者に関与する

事業場によっては、産業医が休職希望の従業員との面談等を行うことがあります。また、休職者の職場復帰にあたって面談を行い、職場復帰の可否を判断し、職場復帰後の労働条件について事業主に対して意見を出します。

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産業医の権限

直接行動する権限

産業医は、事業主の指示や許可がなくても、労働者の健康管理を実施するために必要な情報を、労働者から直接収集できます。

産業医は、事業主の指示や許可がなくても、労働者の健康を確保するために緊急の必要があるときは、労働者に対して直接必要な措置をとるように示すことができます。

情報収集をする権限

産業医は事業主から、健康診断結果や長時間労働を行っている労働者の情報等、産業保健業務を適切に行うために必要な情報を受ける権限があります。

具体的には、行政通達で次のとおり示されています。(基発0907第2号、基発1228第16号)

□ 異常の所見のある者への健康診断実施後の措置
□ 長時間労働者に対する面接指導実施後の措置
□ 高ストレス者の面接指導実施後の措置
□ またはこれらに対して予定する措置の内容、措置を講じない場合の理由(提供時期:医師等からの意見聴取を行った後、遅滞なく)
□ 週40時間を超える労働時間があり、その超えた時間が月80時間超となった労働者の氏名・超えた時間に関する情報(該当者がいない場合も「該当者なし」の情報提供が必要)
□ 労働者の業務に関する情報であって、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報(作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数・時間数等)

意見を述べる権限

産業医は、事業主や総括安全衛生管理者に対して意見を述べることができます。

衛生委員会に審議を求める権限

産業医は、衛生委員会等に対して、必要な調査審議を求めることができます。

緊急措置の指示をする権限

労働者の健康を守るために緊急な措置が必要となる場合には、産業医から指示をおこなうことができます。

保護具等を着用していないなど労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれます。

勧告する権限

産業医は、労働安全衛生法13条にもとづいて「勧告」することができます。

労働安全衛生法13条
5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
6 事業者は、前項の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

勧告は、助言や指導とは違います。勧告のときは、産業医から「これは助言ではなく安衛法13条に基づく勧告です」と伝えられます。はっきりしないときは確認してください。

事業者が正しく理解することが必要であるため、勧告しようとするときはあらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求めることも規定されています。(安衛則第14条の3第1項)

勧告を受けた事業者は、勧告内容、措置内容、措置を講じない場合の理由について、速やかに衛生委員会等に報告しなければなりません。衛生委員会等は、委員会の意見および意見を踏まえた措置内容を議事録に記録しなければなりません。

勧告の内容や、勧告を受けて講じた措置の内容、措置を講じない場合の理由を記録し、記録し3年間保存しなければなりません。


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