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労働基準法

労働基準監督署から送られてくる労働条件自主点検表

Last Updated on 2023年10月9日 by

自主点検表とは

労働基準監督署から「自主点検表」(労働条件自主点検表)という書類が送付されてくることがあります。

案内文書には「依頼」とあるので、強制力が無さそうにみえますが、無視してよいとは言えません。自主点検表は期日を指定して返送するように求められているので、実質は任意と言えるものではありません。

回答は郵送で返しますが、FAXで回答できる場合もあり、Webサイトでも、ID及びパスワードを入力することにより自主点検結果の報告ができるようになっています。

点検項目

労働条件自主点検表で点検を求められる項目の代表例を示します。地域や年度によって項目が少し変わるようです。なお、下記の質問例はこの通りの質問があったわけではありません。

労働条件の明示

労働条件の明示を適正におこなっていますか?

労働者を採用するときは、労働時間、賃金、退職(解雇の事由を含む)、安全衛生等の労働条件を労働者に対し明示することになっています。重要部分は文書で交付しなければなりません。

就業規則

就業規則を作成していますか?監督署に提出していますか?就業規則を周知していますか?

常時使用する労働者数がが10人以上の会社は、就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

もちろん、作りっぱなしでなく、法律の改正等にあわせて適宜改定していなければなりません。近年、法改正が頻繁なのでよほど注意していなければ見落としが生じてしまいます。また、就業規則だけきれいに改定しても、実際にやっていなければ意味がありません。

三六協定

36協定を締結して届出していますか?36協定を周知していますか?特別条項つきの36協定を適切に運用していますか?

時間外労働、休日労働に関する協定届、いわゆる三六協定についての質問です。

法定の労働時間を超える時間外労働、あるいは休日労働を行わせる場合は、従業員数に関係なく、「時間外労働の限度に関する基準」に適合した36協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。

36協定を締結届出周知しないで時間外労働等を行わせた場合は、たとえ1分でも労働基準法違反です。

就業規則や36協定等の周知

就業規則、時間外労働協定等法令で定めているものを、常時各作業場の見やすいところに掲示するなどにより、労働者に周知していますか?

就業規則や36協定等の労使協定は、職場に備え付けるなどして、従業員が見たいときにいつでも見られる状態にしておかないといけません。主要な法令(労働基準法など)も周知の対象なので、小型の法令集を常備するようにしましょう。

労働者代表の選出方法

労働者の過半数を代表する者の選出はどのようにしていますか?

従業員の過半数代表者は、目的を明らかにして実施される投票、挙手、話し合い、回覧等の方法により選出することになっています。会社が一方的に指名したり、親睦会等の代表者が自動的に兼任するような方法は認められません。

36協定を提出していないのは大きな問題ですが、期限切れのまま放置している場合も同様に問題になります。毎年届出しなければならないので忘れないように注意しましょう。

所定労働時間

1週の所定労働時間は何時間に定めていますか?

ほとんどの事業場の所定労働時間は週40時間以下にするのが義務です。ただし、特例措置として、常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画演劇業、保健衛生業、接客娯楽業については週44時間以下となっています。

まず、就業規則で所定労働時間を定めているかチェックが必要です。上記の時間を上回っていれば違法です。

所定休日

所定休日を適切に与えていますか?

少なくとも毎週1日、又は、4週間に4日の休日を与えないといけません。4週間に4日の休日を与えることとする場合は、就業規則に4週間の起算日を規定する必要があります。

月に8日などという決め方は間違いです。毎週1回が保証されないからです。

休憩時間

休憩時間をどのように定めていますか?

労働時間が、6時間を超えるときは少なくとも45分、8時間を超えるときは少なくとも60分の休憩時間を与えなることになっています。

割増賃金

時間外労働、休日労働又は深夜労働を行わせた場合に、その時間に対する割増賃金は、どのように支払っていますか?

法律に定められた割増率を守って支払っていなければなりません。特に、深夜割増、休日労働の扱いに注意が必要です。

実際に時間外労働等を行わせたにもかかわらず、一部または全部の時間について割増賃金を支給していない場合は、大きな問題になります。

計算の上では、割増賃金の基礎となる賃金から除外できる手当等が限定されていることに注意が必要です。手当の名称でなく内容がで判断します。間違いに気づかずに長い間間違いを続けている場合があるので点検が必要です。

変形労働時間制

1か月単位の変形労働時間制を採用していますか?1年単位の変形労働時間制を採用していますか?

1か月単位の変形労働時間制を採用する場合は、一定の事項が就業規則に記載されていなければなりません。

1年単位の変形労働時間制を採用する場合は、労使協定を締結して、労働基準監督署に届け出なければなりません。

年次有給休暇

勤続年数に応じて、法律で定めた日数の年次有給休暇を与えていますか?

年次有給休暇についてはどのように取り扱っていますか?

起算日の扱いに注意しましょう。また。パートタイム労働者の比例付与について適切に扱っているか点検しましょう。

時間単位の年次有給休暇の制度を設ける場合は、労使協定を締結しないといけません。

賃金控除

賃金の一部を控除しているものは、法令に定めのあるもののみですか?

税金と社会保険料以外の、例えば社宅、従業員共済会などの費目を賃金から控除して支払う場合は、労使協定を締結しなければなりません。この労使協定の届出は不要です。

健康診断

定期健康診断を実施していますか?

毎年1回定期に健康診断を行うことが義務付けられています。なお、深夜業等の有害業務に従事する従業員に対しては、6ヶ月以内ごとに1回定期に健康診断を行わないといけません。

健康診断個人票を作成して、保存しないといけません。常時使用する労働者数が50人以上の事業場は労働基準監督署に結果報告が必要です。

最低賃金

最低賃金額以上の賃金を支払っていますか?

最低賃金額以上の賃金を支払わないといけません。なお、最低賃金には、都道府県内の全労働者に適用される地域別最低賃金と都道府県内の特定産業の労働者に適用される特定最低賃金があります。

最低賃金に含まれない賃金があるので注意しましょう。

事業場で最も低い者の賃金が1時間あたりに換算していくらになっているか、毎年一回の最低賃金改定時に点検しましょう。

有期労働契約

有期契約労働者に対して、当該契約の期間の満了時における当該契約に係る更新の有無、更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示していますか?

期間を定めて雇用する場合は、有期労働契約を締結(更新)する際に、①更新の有無、②更新する場合又はしない場合の判断の基準、を明示することになっています。

点検表に記入するときの注意点

労働条件自主点検表に虚偽の回答をしてはいけません。調査が入ればすぐにわかることです。

もし、虚偽の回答が発覚すると、悪質な会社と判断されて、より本格的な調査を受けることになりかねません。

また、期限までに回答しましょう。

労働基準監督署の調査について

自主点検表を提出すれば、労働基準監督署から相談指導の案内がくることがあります。指示された書類を持参して時間を守って出かけましょう。この相談指導は集団で行われることもあります。

指導相談に出向けば、回答のうち違法状態の部分に対して、その場で是正勧告書が交付されることが多いようです。この場合、会社は指定された是正期日までに是正をして、労働基準監督署に報告することになります。

相談指導に出席するのではなく、会社が自主点検に基づいて自主的に改善をして、その結果報告書を労働基準監督署に提出するように求められることもあります。

相談指導や自主報告でなく、所轄の労働基準監督署から立入調査(臨検監督)が入ることもあります。この場合も、違法状態の部分について是正勧告書が交付されます。

相談指導あるいは立ち入り調査は、回答送付後一定の期間を経過してから行われます。

違法状態が含まれる回答になった場合は、できるだけ、この期間内に自主的に改善するようにしましょう。自主点検表で問題を自ら発見したということになるので、指導が入るまで放置するのは不自然です。何か言ってくる前に可能な限り速やかに改善し、相談指導、立入調査に際しては、改善済みの事項と改善できていない事項を整理して説明できるようにしておきましょう。


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