Last Updated on 2023年10月9日 by 勝
営業手当とは
営業手当は、営業担当者に対して支給する手当です。
支給事由は会社によって異なりますが、次のようなことが考えられます。
1.営業という顧客に振り回される仕事の大変さに対する補償的な給付が必要である。
2.会社の外に出ることが多いので、会社内にいればかからない出費が必要になることがあるので補償的な給付が必要である。
3.顧客対応のために労働時間が長くなる傾向にあるのでその部分に対する補償的な給付が必要である。
時間外手当等に充当する場合
営業手当を払っている会社では、営業手当を払っているから残業代を支給しないという運用が多いと言われています。
確かに、労働時間が長くなる傾向があるということで支給するのであれば時間外賃金に相当すると言えます。
そうなのであれば、就業規則等で、営業手当は時間外手当に相当することを定めて、その営業手当が何時間何分の時間外手当に相当するか明確にしておかなければなりません。
そして、実際に計算した時間外手当が営業手当の額を上回る場合は、差額を支給する必要があります。
営業手当規定例
賃金規程第○条 営業職の従業員に対して、月額◯万円の営業手当を支給する。
2 前項の営業手当は時間外手当、休日出勤手当、深夜勤務手当に対する概算支給である。
3 第1項に定める営業手当の額を超えて時間外労働等を行った場合は別途その差額を支給する。時間外労働等が第1項に定める営業手当の額に満たなかった場合はその差額について返却を要しない。
社会保険等の扱い
営業手当は、所得税では非課税ではありません。「給与所得」の一部として源泉徴収税の対象になります。
営業手当は、社会保険料の計算における標準報酬月額の対象になる賃金等に含まれます。
営業手当は、労働保険料の計算における賃金総額に含まれます。
営業手当は、基本給とともに割増賃金の基礎にしなければなりません。
営業手当の検討事項
営業手当と時間外手当の関係が明記されていない場合
就業規則において営業手当と時間外手当等の関係が明記されていない場合は、営業手当の金額にかかわらず、営業手当と別に、時間外手当等を全額払わなければなりません。
事業場外のみなし労働時間制を適用する場合
営業手当を支給しつつ、時間外労働等には「事業場外のみなし労働時間制」を適用して時間外労働等が発生しないとする会社もあるようです。これについては注意が必要です。
ルートセールスであらかじめ訪問先や訪問時間が決まっている場合、当日上司から訪問先の指示を受けて営業している場合、携帯電話等で常時上司と連絡がとれる状態にある場合などは「労働時間を算定しがたいとき」とは認められないので「事業場外のみなし労働時間制」を適用することができません。
サービス残業問題に発展しやすい
就業規則の整備を怠り、労働時間管理を適切に行っていない会社が、営業担当者には営業手当を支給しているから残業手当はつけないという運用をしていると、後日、実際の労働時間との差分についてサービス残業をさせられたとして、さかのぼって残業代の支払請求をされる可能性があります。