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「36協定書に押印は必要?」――協定届を兼ねる協定書とその実務上のポイント

Last Updated on 2025年8月3日 by

36協定書と協定届の違いとは?

労働基準法第36条に基づく「36協定」は、時間外労働や休日労働に関する労使間の合意を示す文書です。この協定には、労使双方の合意を明確にするために、署名や押印が求められます

ただし、この36協定を労働基準監督署に届出する「協定届」には署名や押印の必要がありません。2021年4月以降、協定届の様式に押印欄が削除されています。

実務上、36協定届は「協定書を兼ねる形」で使われることが多く、届出と同時に協定内容の合意を示すための文書として機能します。

協定届に押印は不要でも、協定書に押印は必要?

2021年4月の法改正により、36協定届において使用者や過半数代表の押印・署名は不要となりました。つまり、労働基準監督署に提出する届出書においては、押印は省略可能ということです。

では、協定書自体についてはどうでしょうか?
実務上、協定届が協定書を兼ねる場合でも、実際には署名や押印を行うのが一般的です。理由は以下の通りです。

なぜ協定書に押印が必要なのか?

法的証拠としての効力

協定書は労使間の合意を示す重要な文書です。万が一、協定の内容が争われた場合、署名や押印が証拠として有効に働きます。
単に書面を交わすだけでなく、合意の証拠を明確に残すことが求められます

選出された過半数代表の確認

協定書には過半数代表の選出が重要です。過半数代表の署名や押印は、代表者が適法に選出された証明にもなります。
これがないと、協定自体が無効になるリスクも考えられるため、署名や記名押印を行うことが望ましいのです。

実務慣行としての対応

たとえ届出書が押印不要でも、社内で署名や押印を加えた協定書を保管することが通常の運用です。これにより、万一のトラブルが発生した際に、法的にも証拠力の高い形で協定内容を提示することができます。

実務上の対応として推奨されること

では、現場での対応はどうすれば良いのでしょうか?以下のポイントに従って、適切に対応することをおすすめします。

対応項目内容
協定届提出用押印不要(様式に押印欄がなく、記名のみで十分)
社内保管用(協定書を兼ねる届)使用者と過半数代表の署名または記名押印を加えることが望ましい
合意の確認選出手続きや同意取得のプロセスを書面や議事録で残すことが重要

まとめ

協定届の押印欄が削除されたことで、労基署への提出は押印不要となった。

しかし、協定書(労使間で交わす合意書)には署名または押印を加えておくべき

署名や押印は、協定内容の合意を証明する法的な証拠となるため、万が一のトラブルを防ぐために重要です。

最終的には、労使の合意を明確にし、適切に記録として残すことが、労働契約の運営を円滑に進めるために欠かせません。行政手続きの簡素化が進んでいるとはいえ、実務上のリスク管理はしっかり行うことが大切です。


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