Last Updated on 2023年9月14日 by 勝
専門業務型裁量労働制とは
専門業務型裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。
裁量労働制には、ほかに企画業務型裁量労働制があります。
関連記事:企画業務型裁量労働制導入のポイント
専門業務型裁量労働制の対象業種
デザイナー、システムエンジニアなど専門的な19種類(令和6年4月1日から20種類)の業務に就く者が対象です。
専門業務型裁量労働制の対象業務等については、厚生労働省ホームページを参照してください。
制度導入のための手続
労使協定の締結
次の事項について労使協定を結び、労働基準監督署に届けなければなりません(or労使委員会の設置・決議・届出)。
(1)制度の対象とする業務
(2)対象となる業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと
(3)労働時間としてみなす時間
(4)対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容
(5)対象となる労働者からの苦情の処理のため実施する措置の具体的内容
(6)協定の有効期間(※3年以内とすることが望ましい。)
(7)労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処置措置の実施状況の記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
令和6年4月1日改正施行
2024年4月1日より、専門業務型裁量労働制を導入または継続する場合の労使協定には次の項目を追加する必要があります。
(6)制度の適用にあたって労働者本人の同意を得ること
(7)制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと
(8)制度の適用に関する同意の撤回の手続き
(9)労使協定の有効期間
(10)労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処置措置の実施状況、同意および同意の撤回の労働者ごとの記録を協定の有効期間中およびその期間満了後3年間保存すること
労使委員会について
専門業務型裁量労働制の場合は労使委員会の設置義務はありませんが、厚生労働省のこれからの労働時間制度に関する検討会は労使委員会を活用することを推奨しています。
労使委員会は、労働基準法第38条の4や第41条の2で規定されており、労使協定に代わる決議を行うことができます。
労使委員会は企画業務型裁量労働制においては設置義務があるのでその例にならって設置運営することになります。労使委員会は運営規程を定めなければならず、運営規程に定めるべき事項については厚生労働省から通達が出ています。
関連記事:労働基準法による労使委員会
就業規則への記載と届け出
専門業務型裁量労働制について就業規則に追加して、労働基準監督署に就業規則変更届を出す必要があります。
就業規則規定例:専門業務型裁量労働制|就業規則
健康福祉確保措置
上記の労使協定の「(4)対象となる労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉を確保するための措置の具体的内容」は、まさに具体的に記載する必要があります。
以下は、企画型の適用で定められている健康・福祉確保措置ですが、厚生労働省は専門型についても同じように対応することが望ましいとしています。
健康・福祉確保措置は、(イ)から(二)までの措置、(ホ)から(ヌ)までの措置から、それぞれ1つずつ以上実施することが望ましいとされています。特に(ハ)を選択することが望ましいとされています。
なお、(イ)(ロ)(ハ)(ホ)は、令和6年4月1日改正実施から追加されるものです。(改正後の「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」)
事業場の対象労働者全員を対象とする措置
(イ)勤務間インターバルの確保
(ロ)深夜労働の回数制限
(ハ)労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除
(ニ)年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めたその取得促進
個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置
(ホ)一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
(ヘ)代償休日又は特別な休暇の付与
(ト)健康診断の実施
(チ)心とからだの健康問題についての相談窓口設置
(リ)適切な部署への配置転換
(ヌ)産業医等による助言・指導又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること
導入の注意
制度上のみなし労働時間と実際の労働時間が乖離してはいけません。
委ねるというのは、その業務を遂行する方法や時間の配分の決定等について、その業務にあたる労働者に会社が具体的な指示をしないことです。
具体的な指示をしないということは、ある業務をいつから始めていつ終わらせるかを本人にまかせるという定めなので、例えば、きびしい納期を課すなどの制約があれば、実態として裁量が乏しいとして裁量労働の適用が否定される可能性があります。
また、会社にはその業務にあたる労働者の労働時間を把握し、把握した労働時間の状況に応じて健康及び福祉を確保する為の措置を実施する義務があります。特に深夜勤務や休日労働は、割増賃金の支払い義務があるので、具体的な労働時間を把握しなければなりません。
しかし、裁量労働制において正確に労働時間を把握するのは難しいのが実態です。委ねるというところが裏目に出て長時間労働が常態化する危険があるので注意深い運用が必要です。
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