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労働基準法

労働基準法による労使委員会

Last Updated on 2023年9月14日 by

労使委員会とは

労働基準法第38条の4に「委員会」についての定めがあります。

労働基準法第38条の4(抜粋)
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)

同41条の2にも同じ文言があります。

労働基準法第41条の2(抜粋)
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)

つまり、

・当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議する
・事業主に対し当該事項について意見を述べる
・使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とする

委員会についての定めです。この委員会を、一般に「労使委員会」といいます。

企画業務型裁量労働制と高度プロフェッショナル制度を導入する場合は、労働基準法に基づくこの委員会を設置しなければなりません。この二つの制度をいずれも導入しないのであれば、義務にはなりませんが任意に設置することはできます。

企画業務型裁量労働制

労働基準法第38条の4第1項は、企画業務型裁量労働制についての規定です。

企画業務型裁量労働制を導入する場合には、労働基準法第38条の4による労使委員会の設置が義務になります。

関連記事:企画業務型裁量労働制導入のポイント

高度プロフェッショナル制度

労働基準法第41条の2は、高度プロフェッショナル制度についての規定です。

高度プロフェッショナル制度を導入する場合には労働基準法第41条の2による労使委員会の設置が義務になります。

関連記事:高度プロフェッショナル制度

労使委員会の決議による労使協定代替

労働基準法第38条の4第5項に労使委員会の5分の4以上の決議が労使協定の締結届出に代わる旨の定めがあります。

委員会の5分の4以上の多数による決議により労使協定を代替できるのは次の事項です。

・時間外労働休日労働に関する労使協定
・変形労働時間制に関する労使協定
・事業場外労働に関する労使協定
・専門業務型裁量労働制に関する労使協定
・フレックスタイム制に関する労使協定
・一斉休憩の原則の例外に関する労使協定
・年次有給休暇の計画的付与や時間単位取得に関する労使協定

このうち、変形労働時間制、事業場外労働、専門業務型裁量労働制については、労使委員会での決議が行われれば、所轄労働基準監督署長への労使協定届出が免除されます。

関連記事:労使協定とはなにか

労使委員会を設置する手順

労使委員会の要件

労働基準法第38条の4、第41条の2による労使委員会は以下の要件を満たされなければなりません。

1.賃金、労働時間その他の当該事業所の労働条件に関する事項を調査審議し、事業者に対し当該事項について意見を述べることを目的としていること

2.使用者及び当該事業場の労働者を代表する者が構成員になっていること

3.委員の半数については、労働組合(当該事業場で労働者の過半数で組織されている労働組合がある場合)、または労働者の過半数を代表する者(労働者の過半数で組織される労働組合がない場合)に任期を定めて指名されていること

4.当該委員会の議事録を作成し3年以上保存し、当該事業場の労働者に周知されていること

5.労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項を規定として定められていること

委員の選任

労使委員会は、労働者を代表する委員と使用者を代表する委員で構成します。

人数については、特に規定はありませんが、労働者側委員は半数を占めていなければなりません。ただし、労使各1名の2名からなるものは「労使委員会」として認められません。

使用者代表委員は、使用者側の指名により選出されますが、労働者代表委員は、対象事業場の過半数労働組合又は過半数労働組合がない事業場においては過半数代表者から、任期を定めて指名を受けなければなりません。

過半数労働組合が存在しない事業場においては、まず、労使委員会の委員を指名する過半数代表者を36協定の過半数代表者等の選出方法と同様に投票、挙手等の方法により選出します。

過半数労働組合、過半数代表者は、管理監督者以外の者の中から労働者を代表する委員を任期を定めて指名します

運営規程を定める

委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項を規定する運営規程を策定します。策定に当たっては、労使委員会の同意が必要です。

運営規程で規定すべき項目は次のとおりです。

1.労使委員会の招集に関する事項
① 定例として予定されている委員会の開催に関すること
② 必要に応じて開催される委員会の開催に関すること

2.労使委員会の定足数に関する事項
① 全委員に係る定足数
② 労使各側を代表する委員ごとに一定割合又は一定数以上の出席を必要とすること

3.議事に関する事項
① 議長の選出に関すること
② 決議の方法に関すること

4.その他労使委員会の運営について必要な事項
① 使用者が労使委員会に対し開示すべき情報の範囲、開示手続及び開示が行われる労使委員会の開催時期
② 労働組合や労働条件に関する事項を調査審議する労使協議機関がある場合には、それらと協議の上、労使委員会の調査審議事項の範囲についての定め

5.労使委員会が労使協定に代えて決議を行うことができる規定の範囲についての定め

関連記事:労使委員会規程のサンプル

令和6年4月1日改正施行

労使委員会に賃金・評価制度を説明する

対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対する説明に関する事項(説明を事前に行うことや説明項目など)を労使委員会の運営規程に定める必要があります。

対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める必要があります。

労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う

制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)を労使委員会の運営規程に定める必要があります。

労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する

労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定める必要があります。

設置義務がない事業場

企画業務型裁量労働制や高度プロフェッショナル制度を導入していない事業場は労使委員会を設置する義務がありません。

専門業務型裁量労働制を実施している場合も労使委員会を設置する義務はありませんが、厚生労働省の「これからの労働時間制度に関する検討会」は専門業務型裁量労働制においても労使委員会を活用することを提言しています。

関連記事:専門業務型裁量労働制導入のポイント

なお、企画業務型裁量労働制度、高度プロフェッショナル制度、労使協定に代わる労使委員会として運用せず、一般的な労使協議の場として「労使委員会」を設置する場合は、当然ながら厚生労働省の通達等に制約されない運用をすることができます。


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