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労使協定の基礎知識

Last Updated on 2024年10月31日 by

労使協定とは

労使協定とは、労働者の代表と使用者がある事柄について合意して、双方が記名捺印した文書のことです。

労使協定は労働基準法に定めがあります。その労働基準法は違反した場合には罰則が科せられる強行的法規です。

そのため、労働基準法が定める基準を下回る就業規則や労働契約は無効になります。

ただし、一部の規制については、労使協定を締結することで、強行的な規制を解除することができます。

例えば、労働基準法により、労働時間は週40時間、1日8時間を超えてはならないと規制されています。この時間を(1分でも)超えて働かせると(いわゆる残業をさせると)は労働基準法違反になります。違反した使用者には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

このように、労働基準法では(原則として)時間外労働を禁止していますが、但し書きの部分で、労使協定(この場合は三六協定)を締結することで、協定の定める時間まで時間外労働が可能になると書いてあります。

つまり、三六協定を締結していない状態で時間外労働をさせれば罰せられるが、三六協定を締結していれば、協定に定める時間内であれば罰せられないということになります。

関連記事:残業や休日出勤をさせるには三六協定が絶対に必要です

また、就業規則は10人以上になったときに作成義務がありますが、労使協定に人数の規定はありません。

関連記事:従業員が一人の会社でも残業をさせるには労使協定が必要か

これまで従業員に残業をさせたことがない事業場でも、今後のもしもの場合に備えて、三六協定を締結しておきましょう。

関連記事:残業がまったくない事業場でも就業規則の定めと三六協定はしておくべき

就業規則との関係

以上のように、三六協定を締結していれば、協定で定めた範囲内であれば使用者が労働基準法違反に問われることはないのですが、それはあくまでも労働基準法違反を免れるという効果しかありません。

個々の労働者に時間外労働を命じるためには、就業規則に「時間外労働をさせることがある」旨の記載をする必要があります。

就業規則に記載してあれば、使用者に時間外労働を命じる権利が生じ、労働者は、正当な拒否理由がある場合は別として基本的にはその命令に服する義務が生じるのです。

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使用者と労働者代表

労使協定は、使用者(会社等)と個々の労働者が協定するものではありません。使用者と労働者の代表が協定を結びます。

使用者とは

使用者とは労働基準法の用語で、事業主、雇い主、会社の社長や工場長などのことです。

使用者の記名捺印は、社長名で行うのが一般的ですが、労働基準法でいう「使用者」というのは、労働基準法第10条で「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定義されています。

従って、社長でなくても、事業場の責任者であれば36協定の協定当事者となることができます。ただし、実質的な権限があることが前提です。通達でも「単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は使用者とみなされない」とされています。人事部長、工場長、支店長などは締結当事者として問題ないと思われます。

労働者代表とは

労働組合

過半数で組織する労働組合がある場合は、その組合の代表者(委員長等)が労働者代表になります。

過半数の要件に注意しましょう。

事業場に使用されているすべての労働者の過半数で組織する労働組合である必要があります。すべての労働者というのは、正社員だけでなくパートやアルバイトも含みます。

労働組合員数÷パートなどを含むすべての労働者>0.5

を満たしているかチェックしましょう。

労働組合が労働者の過半数を代表する組合であれば、組合員以外の者にも効力が及びます。

過半数を制する組合がない場合には、複数の少数組合を足して過半数になるのであれば、それらの組合と協定を結ぶことができます。ただし、個別に協定するのではなく、組合代表者に連署してもらって、一つの協定を締結する必要があります。

労働組合がない場合の労働者代表

労働組合がない職場の場合は、労働者の過半数を代表するものを選出しなければなりません。

この代表者がわりといい加減になりがちなので注意しましょう。

関連記事:労働者の過半数代表者とは

協定に署名した者が退社したとしても、協定の効力には影響ありません。有効期間中はそのままにしておいて、次回締結のときに、新しい労働者代表、または使用者代表が締結することで問題ありません。

労使協定のサンプル

労使協定のサンプルは次のページに記載しています。

関連記事:労使協定のサンプル

労使委員会の協定代替決議

労使委員会で5分の4以上の賛成で決議したときは、労使協定は不要になります。また、協定代替決議の場合は労使協定に係る届出義務は、原則として免除されます。ただし、この労使委員会は、労働基準法第38条の4に適合する労使委員会でなければなりません。

関連記事:労働基準法による労使委員会

次の労使協定が対象になります。

第32条の2第1項 1か月単位の変形労働時間制
第32条の3第1項 フレックスタイム制
第32条の4第1項と第2項 1年単位の変形労働時間制
法第32条の5第1項 1週間単位の変形労働時間制
法第34条第2項ただし書 一斉休憩
法第36条第1項、第2項、第5項 36協定
法第37条第3項 代替休暇
法第38条の2第2項 事業場外労働(労使協定)
法第38条の3第1項 専門業務型裁量労働制
法第39条第4項 時間単位の有給休暇
法第39条第6項 有給休暇の計画付与
法第39条第9項ただし書 有給休暇中の賃金
(ほとんどの労使協定が「決議」によることができますが、強制貯金の労使協定と賃金控除の労使協定は含まれていません。)


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