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労働基準法

公民権行使または公の職務執行の休暇を拒むことはできない

Last Updated on 2024年10月24日 by

公民権休暇とは

労働基準法には、公民権を行使するため、または公の職務を執行するための休暇を請求できることが定められています。これを公民権休暇といいます。

労働基準法第7条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

公民としての権利

公民としての権利には次のものがあります。

1 選挙権及び被選挙権
2 最高裁判所の国民審査
3 特別法による住民投票
4 憲法改正の国民投票
5 地方自治法による住民の直接請求権
6 選挙権及び住民としての直接請求権の行使等の要件となる選挙人名簿の登録の申出
7 行政事件訴訟法に規定する民衆訴訟
8 公職選挙法に規定する選挙人名簿に関する訴訟及び選挙又は当選に関する訴訟など

次のものは公民としての権利に入りません。

1 応援のための選挙活動
2 個人としての訴訟

公の職務

公の職務には次のものがあります。

1 議員の職務
2 労働委員会の委員の職務
3 陪審員の職務
4 検察審査員の職務
5 法令に基づいて設置される審議会の委員等の職務
6 民事訴訟法による証人の職務
7 労働委員会の証人等の職務
8 公職選挙法の規定による選挙立会人等の職務など

従業員が議員に立候補することについて会社の承諾はいりません。当選したときは、従業員の身分のまま議員としての職務を行うことが認められています。

事業に与える影響が大きいとして退職を求めて認められた裁判例もありますが、大きく括ると公の職務に就くのは国民の権利です。

ただし、欠勤が多く職務に支障をきたす状態であれば、会社としては支障をきたしていることを理由として休職を命じ、あるいは解雇することも必ずしも違法ではありませんが、通常の休職命令や解雇と同様に紛争になる可能性もあります。

次のものは公の職務に入りません。

1 労務の提供を主たる目的とする職務

例えば、予備自衛官の招集、非常勤の消防団員の職務等に応ずる場合があります。休暇を与えなくてもよいということではなく、労働基準法第7条の「公の職務を執行」に含まれないという意味なので、会社としての扱いを就業規則に定めておく必要があります。社会的要請を考慮すると認める規定が望ましいでしょう。

運用の注意点

与える時間

この休暇は一日単位ではありません。「(公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために)必要な時間」ですから、基本的には時間単位と解されます。ただし、投票所までの距離その他の事情によるし、なにより法に認められた権利ですから、多少多すぎるのではないかと思っても申し出があった時間を認めるのが通常の措置でしょう。

時刻の変更

労働基準法には、ただし書きで、時刻を変更させることができると規定していますが、よほどの事情がなければ請求した時間に行かせるべきでしょう。

欠勤扱い

有給休暇の出勤率や、精勤手当等において欠勤日数に数えることはできないという解釈が一般的です。欠勤扱いにすると、実質的に休暇の取得を抑制してしまうからです。

有給にするか無給にするかは就業規則で定めることができます。無給が多いです。

期日前投票をしてもらえばよいのでは

投票権については、現実には期日前投票があるので、投票日当日に出勤する予定でも、当日の出勤によって選挙権を行使できないというケースは稀だと思います。したがって、従業員が自主的に期日前投票をしてくれればよいのですが強要あるいは誘導はできません。法律にある権利なので、公民権として投票日の休暇を求めてきたときは応じなければなりません。

裁判員

裁判員、もしくは裁判員候補としての職務も、労働基準法第7条に該当します。

就業規則への記載

公民権行使|就業規則


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