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労働時間

黙示の指示があれば労働時間になる

Last Updated on 2025年7月13日 by

黙示の指示とは

黙示(もくし)の指示とは、口に出して明確に言わないけれど、やらざるを得ないように仕向けることを言います。

黙示の指示は明示的な指示と同じ扱いになります。

職場の掃除

事例:うちの課では、いつのころからか分かりませんが、女性だけ早めに出勤して始業前に事務室の掃除を終えることになっています。

いつのころからか分からない、ということですから、今の上司が始めたことではないのでしょう。しかし、今の上司もこの状態が都合がよいと思って口を出さずに、結果的に続けさせているのでしょう。これも黙示の指示にあたります。労働時間にカウントしなければなりません。

是非やらせてくださいと言うのであれば労働時間にならないかもしれませんが、それでもあとになって、空気に逆らえなくてやむを得ずやっていたと言われれば、いわゆるサービス残業と認定されることになるでしょう。

事務所の机をふくだけの簡易な掃除でも人を雇えばお金を払わなけれなりません。掃除をやってほしいのであれば、始業チャイムが鳴ってからの時間にお願いしましょう。

サービス残業

終業時間のあとに仕事を継続しているにもかかわらず、時間外労働として扱わず、割増賃金を支給しないことをサービス残業をさせている、といいます。

時間内で終われない量の仕事を与えているのに時間外労働を許可しない。上司が帰った後に仕事を継続しているのが明らかなのに時間外労働として扱わない。このようなケースでは、文書や口頭による明らかな指示でないとしてもサービス残業をしなければならない状態に仕向けているので黙示の指示にあたります。

早出出勤

早出出勤とは、通常の始業時刻よりも早く職場に到着し、業務を開始することを指します。

これは、業務終了後の残業と同様に、時間外労働であって割増賃金の対象であることは明らかです。

まれに、この早出出勤を自ら進んでやる者がいます。早い時間の方が電車が空いている、職場が静かなので仕事に集中できる。本来の業務開始までにあらかた準備を終えることで一日の仕事の流れがスムーズになる。などの理由から、依頼されたわけでもないのに習慣的に早出するのです。

自主的な行動だということで黙認されることが多いのですが、「黙認」すなわち、黙示の指示になるので労働時間にカウントしなければなりません。未払い残業代の問題もさることながら、結果的に長時間労働になるので、疲労の蓄積から健康を害するようなことがあれば、使用者は安全配慮義務を怠ったといわれるリスクがあります。


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