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労働時間

労働時間に含まれる時間と含まれない時間

Last Updated on 2021年8月17日 by

労働時間とは

「労働時間は労働時間。字のとおり、働いている時間に決まっている」

まあ、そうなんですが、そんなに簡単ではありません。

ここで労働時間の定義です。

平12.3.9 〇〇重工事件 最高裁
労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない。

つまり、労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。

例で説明します。

勤務時間が午前9時からの会社があるとします。

この会社では、従業員は何時に出社するでしょうか?

午前9時ちょうどに入る人はあまりいないと思います。10分前、20分前というのが普通でしょう。遅刻にならないようにゆとりをもって出勤するからです。

そして、10分前に職場の自分の持ち場、例えばデスクに到着すれば、何をするでしょうか?

普通は、引き出しを開けて書類を取り出したり、パソコンのスイッチを入れたりすると思います。

そういう動作は仕事そのものですから、厳密に言えばその時点で労働を開始したことになります。

この場合、従業員は会社に対して、多く働いた10分の賃金を請求できるのでしょうか?

できるのです。

10分といえども、年間200日働くとすると、2000分、時間にすると33時間強です。もし、その人が時給1000円であれば、33000円、時間外労働ですから2.5割増をつけると41250円です。くれるなら欲しいですよね。

ただし、単に会社にいるだけで働いていなけれ労働時間ではありません。

10分前に出社しても、仕事の準備をするわけでなく、途中で買ってきたコーヒーを飲んでいたり、スマホをいじっていたら労働時間ではありません。

しかし、定時の前に出社した人が、すぐに仕事を始めたか、仕事をしなかったか、会社は把握していますか?

あるとき、「私は毎日1時間早く出社し仕事をしていた。さかのぼって払ってもらわなければならない。」と主張してきたらどうなるでしょうか?

これは労働時間になるの?

時間管理について、一度しっかり考えてみる必要があります。

試験会場のように、チャイムがなるまで机に手をふれるな、終了のチャイムがなったら机から手を離せ、というやり方ができれば良いのですが・・・・、現実の仕事はそういうものではありませんから・・・・。

ケース別に検討してみましょう。

黙示の指示

はっきり指示したわけではないけれど、態度や雰囲気でやらせるような場合です。基本的には労働時間です。

黙示の指示

手待ち時間

勤務時間中ではあるけれど、特に仕事がなくて待機していたような時間です。基本的には労働時間です。

手待ち時間

自宅待機

連絡があれば仕事をしなければならない状態にいることです。

自宅待機

持ち帰り残業

仕事を家に持ち帰って家で仕事をすることです。

持ち帰り残業

忘年会への出席

会社や取引先との親睦のための忘年会やゴルフは労働時間になるのでしょうか。

忘年会やゴルフ

研修への参加

研修に参加している時間は労働時間になるのでしょうか。

研修時間

仮眠時間

夜間の勤務で仮眠をとれるとして、仮眠している時間に給料はでるでしょうか。

仮眠時間

移動時間

客先への移動時間は労働時間になるのでしょうか。

移動時間

労働時間に該当するものまとめ

□ 所定の時間に出社したが特に仕事を与えられなかった時間
□ 休憩時間中の来客当番や電話番
□ 当番制ではないが、休憩中に来客や着信があった場合は対応しなければならない場合(休憩時間全部が労働時間になります)
□ 上司からの指示による残業
□ 上司からの明確な指示はなかったが、時間外に働かなければこなせないので行った残業
□ 仕事を自宅に持ち帰って仕事した時間
□ 会社からの指示により参加した研修(強制ではなく、自由参加のものであれば、労働時間には該当しない可能性が高い)
□ 作業服などに着替える時間(指定の作業服がない会社では、労働時間には該当しない可能性が高い)
□ 仮眠時間(休憩中の来客や着信への対応と同じです)

労働時間に該当しないものまとめ

□ 通勤時間
□ 出張先への移動時間(物品の運搬自体を目的とする業務の移動時間は労働時間に該当する)
□ 緊急時の呼び出される可能性がある時間(労働時間ではありませんが、そのような負荷に対する対価が必要です)
□ 会社の忘年会などに出ている時間(参加強制があれば労働時間です)
□ 接待ゴルフなどの時間(参加強制があれば労働時間です)

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