Last Updated on 2024年8月6日 by 勝
出張の移動時間は労働時間か
通常勤務している時間帯に出張のために移動している時間は労働時間です。居眠りしていることがあるかもしれませんが、休憩時間という扱いで賃金を控除することはできません。
移動時間が休日や夜間の勤務時間外にかかったときは、原則として、労働時間にあたりません。つまり、時間外勤務手当を払う必要がありません。厚生労働省の通達があります。
厚生労働省の通達
出張中の休日はその日に旅行する等の場合であっても,旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取り扱わなくても差し支えない」(昭和23年3月17基発461号,昭和33年2月13日基発90号)
つまり、「旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合」は労働時間になります。その分の時間外賃金を払わなければなりません。
単なる異動であれば、列車の中で仮眠をとることもできるので、通常であれば勤務が終わっている時間であったとしても労働時間としてカウントされません。
ただし、労働時間としては通達にもあるように、商品などを携帯し、それらに始終気を配らなければならない状況(一つのたとえとしては、居眠りなど許されない状況)であれば労働時間として扱わなければなりません。
監視、つまり、その物品に相当の注意を向けていなければならない状態であれば、仕事をしていると同じですから労働時間になるのです。
客先訪問の移動時間
出張でなくても外回りには移動がつきものです。典型的に問題になるのは、訪問介護のための移動時間です。
・事業所から利用者宅までの移動時間
・利用者宅から次の利用者宅までの移動時間
・利用者宅から事業所までの移動時間
これらは、介護等の仕事をしている時間ではありませんが、全て労働時間です。移動時間についても給料を支払う必要があります。
ただし、一軒の利用者宅でのサービス提供が終わって、次の利用者との約束時間までに、時間が空いている場合は、その時間を買い物に行ったりして自由に過ごすことができるのであれば、休憩に相当するので、労働時間にカウントされません。
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この場合、時間が細切れで実質的に休憩にならない場合、書類整理等をしている場合、不便な場所でどこに行くこともできず、実質的に自由に過ごすことができない状態、などの場合は労働時間と認めるのが妥当でしょう。
時給額については、一般的にはどの時間も同じに設定されていることが多いのですが、「訪問介護に従事した時間に対して支払う賃金額」と「移動時間に対して支払う賃金額」の時給を分けることは、合意により、雇用契約で、決定することができます。ただし、最低賃金を下回らないことが前提です。
移動に係る賃金を定額制にすることも可能ですが、実際の移動時間に満たない場合は、差額を支払わなければなりません。
出勤や退勤・直行や直帰
通勤時間は、まだ使用者の指揮命令下に入っていないので労働時間ではありません。
直行や直帰というのは、会社を経由することによる時間的無駄を省くため、直接自宅から目的地に移動する、または、目的地から直接自宅に移動することです。
仕事をするのは目的地ですから、自宅から目的地、目的地から自宅への移動は、通勤時間と同様に考えて労働時間になりません。