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休憩時間のルール

Last Updated on 2024年11月4日 by

休憩の時間

労働時間が6時間を超えたら45分、8時間を超えたら1時間与えなければなりません。

労働基準法第34条 使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

労働時間が8時間ちょうどであれば、法律上必要な休憩は45分です。この場合、1分でも残業になれば、8時間を超えるので休憩時間は1時間必要になります。

したがって、8時間労働で昼の休憩45分の会社は、定時後の残業を始める前に15分以上の休憩をとらせないと、労働基準法の休憩に関する規定に違反することになってしまいます。

なお、トイレに行く、水を飲みに行くなどの、生理的欲求に基づく作業離脱は労働基準法に定められた「休憩」ではありません。休憩時間でなくても、いつでも、とることができます。

労働時間6時間以内のとき

労働時間が6時間を超えなければ、法律上は休憩を与えなくても問題ありません。

しかし、例えば、朝の9時から午後の3時までのパートさんに、法律上は問題ないからといってお昼を食べる時間も与えずに働かせるのは無茶です。実務上は、休憩を与えているのが普通です。

この場合、労働基準法上の休憩ではないので、45分とか1時間ではなく、例えば15分でも30分でも問題ありません。常識の範囲で決めれば良いことです。また、休憩時間は労働時間ではないので無給にすることができます。

休憩付与の例外

労働基準法第40条に「公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で(中略)休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。とあります。

これを受けて、労働基準法施行規則第32条に休憩時間を与えないことができる業種及び職種が指定されています。

旅客又は貨物の運送の事業、郵便の事業に使用される労働者のうち、機関手、運転手、操縦士、車掌等で、長距離にわたり継続して乗務する者が対象です。

乗務員で前項に該当しないものであっても、その者の従事する業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合においては、その勤務中における停車時間、折返しによる待合せ時間その他の時間の合計が休憩時間に相当するときは、休憩時間を与えないことができます。(労働基準法施行規則第32条2)

屋内勤務者30人未満の郵便局において郵便の業務に従事するものにも与えないことができます。

休憩時間の3原則

休憩時間の原則は次の3つです。
□ 労働時間の途中に与えなければならない
□ 一斉に与えなければならない
□ 自由に利用させなければならない

労働時間の途中に与えなければならない

休憩は労働時間の途中にあたえなければなりません。「途中」について細かい規定はありませんが、労働時間の中間に近い時間帯というのが常識的なところでしょう。

なお、労働基準法では、休憩時間を「連続した時間」とまでは規定していません。そこで、昼40分、午前10時に10分、午後3時に10分も違法ではないとされています。だだし、「昼の休憩時間を削って終業時間の直前に入れれば早く帰れるのではないか」というのはだめです。労働時間の途中に休憩させなければなりません。

一斉に与えなければならない

原則としては、休憩は一斉にとらせなければなりません。

労働基準法第34条2 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。

一斉休憩の除外業種

労働基準法第40条の規定を受けて一斉休憩が除外されるのは以下の業種です。(労働基準法施行規則第31条)

別表第一第四号 道路、鉄道、軌道、索道、船舶又は航空機による旅客又は貨物の運送の事業
第八号 物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業
第九号 金融、保険、媒介、周旋、集金、案内又は広告の事業
第十号 映画の製作又は映写、演劇その他興行の事業
第十一号 郵便、信書便又は電気通信の事業
第十三号 病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業
第十四号 旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業
官公署の事業

商店や病院、介護施設など、けっこう範囲が広いです。これらの業種では、労使協定がなくても一斉休憩の適用をしないことができます。

ただし、交替制など、どのようにして法定の休憩時間を取らせるかは就業規則等に定める必要があります。

労使協定による適用除外

上記以外の業種で、一斉休憩を与えない事情がある場合には労使協定が必要です。

休憩時間が1時間であれば、第1班が11時半から12時半まで、第二班が12時半から13時半まで、などのシフトを組むのが一般的です。

関連記事:一斉休憩の適用除外に関する労使協定のサンプル

この労使協定は労働基準監督署に届け出る必要はありません。従業員に周知するとともに、労働基準監督官の調査等の際にすぐに取り出せるようにしておきましょう。

従業員が一人の事業場では交替ができません。そのような小規模事業場は、その時間店舗等を閉じるか、使用者自身が受付や電話当番をするか、電話の転送サービスを利用するなどの工夫をする必要があります。

自由に利用させなければならない

休憩時間中は、近くの食堂に行くのも、どこかで昼寝をするのも、忘れ物をとりに自宅に行くのも自由です。

しかし、休憩時間が終わっても戻ってこない人がいるときに、どこに行ったのか分かっている方が便利です。そうした仕事上の理由から、食事に行くとか、散歩に行くとかの断りを入れさせることは違法とは言えないでしょう。裁判例でも、合理的な範囲での使用者の管理権は認めています。

外出の届出制は問題がないと思われます。ただし、実質的に休憩が取りにくくならないように気をつけなければなりません。外出を許可しないというのは違法の可能性が髙いです。

休憩自由利用の例外

一部の事業・業種で自由利用の例外が認められています。(労働基準法施行規則第33条)

一 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者

二 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者

三 児童福祉法第六条の三第十一項に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者

ただし、二号に掲げる労働者を使用する使用者は、その員数、収容する児童数及び勤務の態様について、様式第十三号の五によって、予め所轄労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。

休憩自由利用除外許可申請の様式は厚生労働省ホームページに掲載されています。

その他の注意点

一切の労働をさせてはならない

休憩時間は完全に労働から解放されなければなりません。

労働基準法第34条3 使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。

例えば、電話が鳴ったら出なければならない仕組みになっていれば休憩時間とは言えません。労働基準法第34条第3項に違反する状態です。

当番には別途休憩を与えなければならない

多くの会社では、昼休みであっても電話が来たり来客があったりします。昼休みだから受け付けませんとは言いにくいものです。

そこで、順番制などで電話当番を決めたり、受付当番を決めることがあります。

この当番制は、たとえその昼休み中に1人の来客も1本も電話がなかったとしても、完全に労働から解放されているとは言えないので、休憩を与えられなかったことになります。つまり、休憩時間中の当番制は、労働基準法に違反することになるので、当番に別な休憩時間を与えるなどの措置をとらなければなりません。

なお、一部の人に異なる時間に休憩をとらせる場合は、上述した一斉休憩の適用除外に関する労使協定を締結しなければなりません。

労働者が自ら休憩をとらない場合は

正午から午後1時を休憩時間としている会社で、ある従業員が仕事の区切りがつかず12時30分まで労働したとします。その従業員は12時30分から休憩に入るので、1時30分まで休むべきですが、自主的に午後1時から労働を再開するかもしれません。

なかには昼休みはデスクでパンを食べるなどしながら仕事を継続して、満足に休憩を取らない従業員もいるかもしれません。

いずれの場合も、法律で定められている休憩時間を会社が与えていないということになり、また、代わりの休憩を与えないのであれば賃金未払いということになります。いずれも労働基準法違反です。

休憩時間を与える義務が使用者に課せられている以上、従業員が自主的にやったとか、会社は知らなかったとかいうことは理由になりません。労働基準法に則った働き方をするように、管理職が指導しなければなりません。

終業と残業開始の間の休憩時間

勤務時間が終わった後、残業(時間外勤務)を始めるまでの間に30分とか45分とかの休憩時間を設定している会社があります。

これは、終業後すぐに残業を始めると長時間の連続勤務になってしまうので、残業に備えてリフレッシュする時間として設定されたものです。労働基準法上の義務ではありません。

ところが、残業は多くが忙しいからするのであって、ゆっくり休んでいると帰りが遅くなるだけなので、規定の休憩をとらずにそのまま働き続けるケースが珍しくありません。その場合は、就業規則で休憩時間とされているので自動的に賃金控除されてしまい、実質的にサービス残業になってしまいます。

このような休憩設定をしている会社は、一度従業員のニーズを把握してみましょう。このような休憩に対するニーズが少ないのであれば、廃止して、残業中に業務に大きな支障が出ない範囲であれば水分補給をしたり軽食を取ったりすることをトイレ休憩等に準じて許容する運営に変えることを検討しましょう。

フレックスタイム制や時差出勤制度を導入している場合は一律で残業前の休憩を設定するのは不自然でもあります。


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