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株式会社と合同会社の違いは?会社設立時に知っておきたいことを解説

Last Updated on 2025年7月16日 by

会社の設立において、合同会社を選ぶメリットは多岐にわたります。また、一般的な会社形態である株式会社を選ばない理由も、それらのメリットと表裏一体の関係にあります。

合同会社を選択するメリット

合同会社は、特に小規模な事業や個人事業主からの法人化、家族経営などに適した会社形態と言えます。主なメリットは以下の通りです。

設立費用が安い

登録免許税: 株式会社の最低15万円に対し、合同会社は最低6万円と安価です。

定款認証不要: 株式会社では公証役場での定款認証が義務付けられており、約5万円の手数料と手間がかかりますが、合同会社はこれが不要です。

これらの費用を合わせると、合同会社は株式会社よりも10万円以上設立費用を抑えられます。

設立手続きが簡便

定款認証が不要なため、公証役場に出向く手間が省け、設立までの期間も短縮できます。

経営の自由度が高い

所有と経営の一致: 合同会社では出資者(社員)がそのまま経営者となります(「所有と経営の分離」がない)。これにより、意思決定が迅速に行え、経営の自由度が高まります。

機関設計の柔軟性: 株式会社のような株主総会や取締役会といった機関設計が義務付けられておらず、定款で会社の運営ルールを自由に定めることができます。

利益配分を自由に決められる

株式会社では出資比率に応じて利益を配分するのが原則ですが、合同会社では定款で定めることで、出資比率に関わらず、貢献度や役割などに応じて利益配分を自由に設定できます。

ランニングコストが低い

役員の任期がない: 株式会社では役員の任期があり、通常2年(最長10年)ごとに役員変更登記(重任登記)が必要で、その都度登録免許税(1万円または3万円)がかかります。合同会社には役員の任期がないため、この費用と手間が不要です。

決算公告義務がない: 株式会社は毎年決算公告を行う義務がありますが、合同会社にはこれがありません。官報掲載などにかかる費用(約7万円~)を節約できます。

有限責任である

株式会社と同様に、出資した金額以上の責任を負う必要がないため、万が一会社が倒産しても、個人の財産が守られます。

株式会社を選ばない理由(合同会社を選ぶ理由の裏返し)

上記の合同会社のメリットが、そのまま株式会社を選ばない理由となることが多いです。具体的には以下の点が挙げられます。

設立・維持コストを抑えたい: 創業資金が限られている場合や、できるだけ費用をかけずに法人化したい場合に、株式会社の設立・維持コストは負担となることがあります。

迅速な意思決定をしたい: 少人数で経営する場合、株式会社の株主総会や取締役会といった意思決定プロセスは、煩雑に感じられることがあります。合同会社であれば、出資者全員の合意(または定款で定めた方法)で迅速に意思決定が可能です。

経営の自由度を重視したい: 外部からの出資を想定せず、少数の社員で自由に会社を運営していきたい場合に、株式会社のルールは柔軟性に欠けると感じることがあります。

資金調達の必要性が低い: 株式の発行による大規模な資金調達を考えていない場合、株式会社の資金調達メリットは活かせません。

実際の登記数の割合

東京商工リサーチのデータ(2023年)によると、新設法人の法人格は、株式会社と合同会社に偏っており、両者で全体の92.6%を占めています。

株式会社: 66.1% (10万社超)

合同会社: 26.5% (初の4万社超)

このように、依然として株式会社が過半数を占めていますが、近年合同会社の割合は着実に増加傾向にあります。2018年には22.2%だったものが、2023年には26.5%にまで高まっており、合同会社の存在感が増していることがわかります。特に、設立費用や運営の簡便さ、柔軟な経営体制が評価され、スタートアップや小規模事業者を中心に選択されるケースが増えています。

大手外資系企業の日本法人(例:Apple Japan、Google Japan、Amazon Japanなど)も合同会社を選択している事例があり、これは必ずしも合同会社の「社会的信用度が低い」という認識が当てはまらないケースも存在することを示しています。

最終的にどちらの会社形態を選択するかは、事業の規模、資金調達の予定、経営のスタイル、将来の展望などを総合的に考慮して決定することが重要です。


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