Last Updated on 2024年11月10日 by 勝
通勤災害とは
通勤災害とは、会社に向かう途中で車にはねられたという場合のように、通勤しているときに、負傷・疾病・障害を負う、または死亡する事をいいます。
通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業場所との間を合理的な経路および方法により往復することをいいます。
つまり、会社に向かっている、あるいは自宅に向かっているだけでは「通勤」の条件を満たさず、合理的な経路と方法という条件にあてはまる場合に、「通勤」と認定され、労災保険の上の通勤災害となるのです。
通勤災害の要点
通勤の起点と終点に決まりがあります
「家をでる」「家に帰る」について、厳密な決まりがあります。
一軒家であれば敷地から出たところから通勤が始まり、敷地に入って通勤が終わります。 アパートであればドアを出たところから通勤が始まり、ドアを入って通勤が終わります。
つまり、一軒家の玄関の段差で転んでも労災になりませんが、アパートの階段を踏み外せば労災になります。
会社でも同様です。会社がビルの一室にある場合は、ドアが起点・終点になります。
合理的な経路及び方法によること
合理的な経路および方法によらなければ通勤災害と認められません。
長時間の残業・早朝出勤・交通ストライキ・自然現象などで、やむを得ずホテルに泊まったり友人宅に泊まった場合は、通常の通勤と異なるところがありますが、通勤災害に該当します。
子どもの保育園への送迎、親族の介護、見舞いなどで遠回りをした場合は、その必要性などの状況にもよりますが、通常は通勤災害と認められます。
次のような場合は、合理的な経路とはいえません。
・理由がつかない遠回り
・危険な近道など一般的ではない通行等
次のような場合は、合理的な方法とはいえません。
・無免許運転または酒酔い運転
・電車通勤と届けながら、通勤費節約のため2駅分を徒歩で通勤していた等
家と会社との往復に限らない
通勤というのは、原則として家と会社との往復のことですが、次のような場合は通勤のための移動だと認定されます。
・直帰と直行の場合は家と用務先の間が通勤(業務災害が適用されることもある)
・単身赴任者のアパートと自宅との往復
・交通ストライキなどに対応して泊まったホテルと会社との往復
・早出や残業の為にホテルから出勤
・業務終了後組合の活動後に帰宅した(おおむね2時間以内)等
次のような場合は、認定されません。
・友人宅でマージャンをして翌朝その場所から出勤
・その他、合理的に説明のつかない場所との往復
逸脱と中断があれば通勤は終わる
通勤を逸脱したり中断すれば、その後は原則として労災保険上の通勤と認められません。
中断とは、通勤を中断して通勤と関係のない行為を行うことです。 逸脱とは、通勤途中で合理的な経路からそれることです。
いったん、中断または逸脱をすれば、本来の経路に復帰しても、中断または逸脱後は、もとの通勤経路に戻っても、その後の移動は通勤とは認められません。
逸脱や中断の例
・帰宅途中に映画を見た
・帰宅途中にパチンコをやった
・居酒屋やスナックでの飲酒等
自宅に帰る途中、いつもの通勤経路上にある居酒屋に寄ったとします。この場合、入ったところで合理的な経路から逸脱したとみなされ、その後に発生した事故は通勤災害にはなりません。しかし、居酒屋に立ち寄った場合でも、ものすごい豪雨なので雨宿りしていたとか、交通機関が事故で動かずに待機のために立ち寄ったようなケースでは、事情をくみ取ってもらえる場合があるようです。また、居酒屋などへの立ち寄りが、上司の提案であったとか、仕事の話をするためだとすれば、仕事との関連性や強制性などの条件を検討して適用の可否が判断されることになります。
日常生活上必要な行為は通勤が再開する
逸脱や中断をすればすべて通勤災害に認定されないわけではありません。その逸脱や中断が、日常生活上必要な行為で最小限度の行為である場合は、その行為中は通勤を中断していることになりますが、通常の経路に戻った時点で「通勤」に戻ったと認められます。
日常生活上、必要最小限度のものとは次のような場合です。
・日用品を購入するためにスーパーやコンビニに立ち寄った
・独身者が食堂で食事をした
・学校や訓練施設等で教育を受けている(趣味の習い事は難しい)
・選挙の投票に行った
・体調が悪くて病院に行った等
もとの経路に戻った時点から通勤になります。例えば、スーパーの中で転んでケガをしても通勤が中断しているので労災にはなりません。
ただし、次の「ささいな行為」に該当すれば、通勤を中断しているときの出来事でも通勤災害になります。
ささいな行為はその行為中も通勤災害
ささいな行為は通勤の逸脱又は中断とみなされないことになっています。例えば、喉の渇きをいやすために駅構内でジュースを立ち飲みする等のことです。
「ささいな行為」と認定される場合は、そもそも通勤の逸脱又は中断とみなされないので、その最中の事故にも労災保険が適用されます。
ささいな行為の例
・公衆トイレの使用
・公園で一休み(経路から離れた公園はだめ)
・タバコや雑誌などを素早く購入する買い物
・駅の構内でジュースを立ち飲みする
・経路上の店で渇きをいやすためにお茶などを飲む(ごく短時間にかぎる)等
犯罪被害も通勤災害になることがある
夜間の通勤中に、ひったくり等に遭うことは、一般的に発生しうる危険とされ、通勤災害とされた例があります。ただし、もっと早く帰れたのにそうしなかったなど、あえて危険な状況を作った場合は認定されない可能性があります。
また、混んだ電車で他の乗客とトラブルになり殴られたような場合も通勤災害です。ただし、トラブルの責任がどっちにあるかで認定が違ってきます。自分からケンカをふっかけた場合は難しいでしょう。
別な事業所へ移動する場合も通勤になることがある
複数の事業所で働いている者が第1の事業所から第2の事業所に自宅を経由しないで直接出勤した際に交通事故にあった場合も通勤災害になります。例えば、工場に勤務している人が自宅に帰宅する事なく飲食店に向う際に起こった被災事故は、後の仕事場である飲食店へ行く途中の通勤災害になります。
単身赴任者の帰省は通勤になる
赴任先住居と帰省先住居との間を移動している途中に災害に遭った場合も通勤災害に該当します。但し、労働者と家族が同居できない具体的な理由などが必要になります。
業務上の移動は通勤ではない
通勤であっても、その移動に業務的な内容があれば通勤災害ではありません。労災が適用されないということではなく、業務上の労災が適用されるのです。
その例
□ 会社がチャーターした通勤バスで移動
□ 突発的な業務で会社に向かう(通常の休日出勤は通勤)
□ 忘れ物を取りに帰るように上司から指示された
上記の忘れ物の場合は、忘れ物を取りに自分の意思で戻った場合は通勤災害です。会社の指示があれば業務災害です。ただし、 個人的な物品で、緊急性がないものの場合に不支給になった例があります。
業務の性質もなく、通勤の性質もないものは認定されません。
・休日に会社の運動施設を利用するために会社に行った
・特段の理由なく休日に出社した
分かりやすくするために事例で説明しましたが、実際の事故がいろいろな事情を含めて事例に完全一致することはないと思います。労災申請をこのような事例だけで判断すると誤る場合があります。ご注意ください。
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