Last Updated on 2025年8月4日 by 勝
法定労働時間とは
会社で働く皆さんにとって、「労働時間」は最も基本的なルールですが、この労働時間の上限のことを「法定労働時間(ほうていろうどうじかん)」といいます。
これは、労働基準法という法律で定めています。会社は、原則としてこの時間を超えて労働者を働かせてはいけません。
法定労働時間の具体的なルール
労働基準法第32条で、以下のように定められています。
原則:1日8時間、1週40時間
休憩時間を除いて、1日に働かせられるのは最大8時間まで。
1週間に働かせられるのは最大40時間まで。
これが、日本における労働時間の基本中の基本ルールです。
特例措置対象事業場(特定の業種・規模の事業場)
一部の業種や、常時10人未満の労働者を使用する小規模な事業場については、特例として「週44時間」まで労働させることが認められています。
これに該当するのは、商業(小売業、飲食業など)、映画・演劇業(映画の製作事業を除く)、保健衛生業(病院、診療所など)、接客娯楽業(旅館、ホテル、ゴルフ場など)です。
ただし、この場合でも「1日8時間」の上限は変わりません。
なぜ「法定労働時間」があるの?
「法定労働時間」は、労働者の健康と生活を守るために非常に重要な役割を果たしています。
過労死や健康障害の防止:長時間労働は、心身の健康を害し、過労死や精神疾患のリスクを高めます。法定労働時間は、これを防ぐための最低限の歯止めです。
生活と仕事のバランス(ワークライフバランス):労働者が仕事以外の時間も確保し、家族との時間、趣味、学習、休養などに充てられるようにすることで、人間らしい生活を送れるようにします。
「法定労働時間」を超えたらどうなる?
会社が、労働基準法で定められた「法定労働時間」を超えて労働者と働かせた場合、原則としてそれは「時間外労働(または法定外残業)」となります。
そして、この「時間外労働」をさせるには、以下の2つの条件をクリアしなければなりません。
36協定(サブロク協定)の締結と届け出
労働者と使用者(会社)の間で、「時間外労働や休日労働をさせることがありますよ」という内容の協定を結び、これを労働基準監督署に届け出る必要があります。
関連記事:労働時間延長の手続き
36協定がなければ、法定労働時間を超えて働かせることはできません。厳密に言えば、災害等の労働基準監督署長の許可を得たときは法定労働時間を超えて働かせることができますが、それは極めて例外的な場合です。
割増賃金の支払い
法定労働時間を超えて働かせた時間については、通常の賃金に25%以上の割増し(1.25倍以上)をして支払う義務があります(深夜労働や休日労働などの場合には、さらに高い割増率が適用されます)。
「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い
「所定労働時間」と混同しやすいので、ここでもう一度整理しておきましょう。
法定労働時間:法律で決められた「労働時間の上限」(原則1日8時間、1週40時間)。
所定労働時間:会社が就業規則などで独自に定めた「この時間働いてくださいね」という時間。
関連記事:所定労働時間とは何か?法定労働時間との違いを中心に詳細解説
まとめ
「法定労働時間」は、法律で定められた最も基本的な労働時間の上限です。原則1日8時間、1週40時間を超える労働は「時間外労働」となり、36協定の締結と割増賃金の支払いが必要となります。
この法定労働時間を正しく理解し、会社がこれを遵守することは、健全な労使関係を築き、労働災害を防止する上で極めて重要です。
法定労働時間を超えるときの手続き
法定労働時間を超えて働かせるには、法律に定められた手続きをとらなければなりません。
また、超えた時間については、割増賃金を払わなければなりません。数分、数十分の残業代を、わずかのことだから誰も文句を言ってこない。だから、これくらいいいだろう。というやり方はよろしくありません。たとえ1日1分でも、年間にすれば数時間になり、数千円のお金をごまかしていることになるからです。
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