会社から過労死を出さない対策(概要版)

Last Updated on 2025年9月11日 by

1.過労死とは

過労死とは、業務における過重な負荷が原因で、脳心臓疾患精神障害を発症し、死亡に至ることです。日本の過労死等防止対策推進法では、過労死の範囲を「業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原因とする死亡、もしくは、業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」と定義しています。

過労死の主な原因は以下の2つに大別されます。

  • 脳・心臓疾患:長時間労働や不規則な勤務、出張などによる身体的疲労の蓄積が、高血圧や動脈硬化を悪化させ、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こします。
  • 精神障害・自殺:パワハラやセクハラ、仕事の失敗、ハラスメントなどによる精神的ストレスが、うつ病などの精神障害を引き起こし、自殺に至ることがあります。

2.過労が引き起こす健康リスク

脳心臓疾患への影響

過重な労働は、交感神経を優位な状態に保ち、心拍数や血圧を上昇させます。この状態が慢性的に続くと、血管に大きな負担がかかり、動脈硬化が進行しやすくなります。加えて、睡眠不足や不規則な食生活も相まって、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。これらが複合的に作用することで、最終的に脳卒中や心筋梗塞といった、命に関わる重篤な疾患を引き起こすことになります。

精神障害・自殺への影響

過労は精神的なストレスも増大させます。長時間労働や業務上のプレッシャーは、脳内のセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質のバランスを崩し、うつ病や適応障害などの精神障害を発症させるリスクを高めます。精神的な不調は、集中力の低下、食欲不振、不眠といった形で現れ、放置すると状況が悪化し、最悪の場合、正常な判断能力を失い自殺に至ってしまう危険性があります。

3.会社がとるべき具体的な対策

会社は、従業員の健康を守るために、以下の具体的な対策を講じる必要があります。

  • 労働時間管理の徹底: 残業時間の削減目標設定、勤怠管理システムの導入、ノー残業デーの実施など。
  • 産業医・保健師との連携強化: メンタルヘルス相談窓口の設置、定期的な健康診断やストレスチェックの実施、産業医面談の促進など。
  • 労働環境の改善: ハラスメント防止研修の実施、業務量の見直し、適正な人員配置、休暇取得の推奨など。
  • 従業員への教育と啓発: 健康に関する社内セミナーの開催、過労死防止に関するeラーニングの実施、セルフケアの重要性周知など。

4.周囲ができること:管理監督者と従業員

過労死を防ぐためには、会社全体の取り組みだけでなく、現場での日々の配慮が欠かせません。

管理監督者(上司)の役割

管理監督者には、部下の健康状態を把握し、早期に異変を察知する重要な役割があります。

  • 日頃からのコミュニケーション: 部下の表情、言動、業務状況の変化に注意を払う。
  • 業務量の適正化: 特定の部下に業務が集中しないよう、適切にタスクを分散させる。
  • 休暇取得の推奨: 積極的に声をかけ、部下が休暇を取りやすい雰囲気を作る。
  • 産業医面談への誘導: 疲労やストレスの兆候が見られる部下には、産業医への相談を促す。

同僚ができること

同僚同士の助け合いも、過労死防止に繋がります。

  • 声かけと傾聴: 「大丈夫?」と声をかけ、相手の話を丁寧に聞くことで、精神的な孤立を防ぐ。
  • 協力と分担: 業務が集中している同僚がいたら、できる範囲で手伝う。
  • 相談先の共有: 会社の相談窓口や産業医の連絡先など、困った時に頼れる場所を共有する。

これらの対策を組織全体で実行し、従業員一人ひとりが心身ともに健康に働ける環境を築いていくことが、過労死防止には不可欠です。


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