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安全衛生管理

スムーズな健康診断実施のために:健康診断担当者が押さえるべきポイント

Last Updated on 2025年8月3日 by

健康診断は、従業員の健康管理と企業の安全配慮義務を果たす上で非常に重要な業務です。しかし、多岐にわたる法令や細かな事務手続きに戸惑う担当者も少なくありません。この記事では、健康診断担当者が押さえておくべきポイントを解説します。

健康診断実施までの一般的な流れ

スムーズな健康診断を実施するためには、計画的な準備が不可欠です。以下に、一般的な流れを示します。

1. 計画・予算策定

対象者の確認: 定期健康診断、雇入れ時健康診断、特殊健康診断など、対象となる従業員を正確に把握します。

実施方法の決定: 巡回健診(会社で実施)か施設健診(医療機関で実施)かを検討します。

予算の確保: 費用を概算し、社内稟議を通して予算を確保します。

2. 医療機関の選定・予約

実施希望日、検査項目を決めます。

複数の医療機関から見積もりを取り、サービス内容や費用を比較検討します。

企業規模や希望する健診内容(オプション検査など)に合わせて、最適な医療機関を選定し、予約を行います。

予約後、医療機関側からの質問や要望への窓口対応をします。

3. 従業員への通知・案内

健診の実施日時、場所、受診方法などを記載した案内を、従業員に通知します。

必要に応じて、受診票や問診票を事前に配布します。

健康診断の通知・案内

従業員への通知は、健康診断を円滑に進める上で非常に重要です。以下のサンプルを参考に、会社の状況に合わせて内容を調整してください。

定期健康診断の通知(サンプル)

件名:〇〇年度 定期健康診断のご案内

社員各位

日頃より業務お疲れ様です。
この度、労働安全衛生法に基づき、下記のとおり〇〇年度の定期健康診断を実施いたします。

健康診断は、皆さんの健康維持・管理のために非常に重要なものです。
ご自身の健康状態を把握するためにも、必ず受診してください。

実施期間
〇〇年〇月〇日(〇)~ 〇〇年〇月〇日(〇)

実施場所
[会社名] 〇〇健診センター
〒XXX-XXXX 東京都〇〇区〇〇1-2-3

受診方法
健診は事前予約制となります。
以下のURLより、希望日時をご予約ください。
[予約用URL]
予約締切:〇〇年〇月〇日(〇)

健診内容
法定の定期健康診断項目に加え、以下の項目を会社負担で実施します。
〇〇検査
〇〇検診

受診にあたっての注意事項
・受診前日の午後〇時以降は飲食を控えてください。
・服用中のお薬がある方は、事前に問診票にご記入ください。

その他
・健診に要する時間は、業務時間として扱います。
・何らかの事情により期間内の受診が難しい場合は、[担当者氏名]までご相談ください。

不明な点がありましたら、人事部 [担当者氏名](内線:XXXX)までお問い合わせください。

以上

雇入れ時健康診断の通知(サンプル)

新しく入社する方への案内は、会社への期待感を損なわないよう、丁寧かつ簡潔な内容を心がけましょう。

件名:雇入れ時健康診断のご案内

〇〇 様

この度は、[会社名]へのご入社おめでとうございます。
[入社日]より共に働けることを心より楽しみにしております。

さて、労働安全衛生法に基づき、ご入社にあたりまして、下記のとおり雇入れ時健康診断を受診していただくことになりました。
ご自身の健康状態を把握するためにも、必ず受診してください。

実施期間
[入社日]までにご受診ください。

実施場所
[会社名] 〇〇健診センター
〒XXX-XXXX 東京都〇〇区〇〇1-2-3
会社指定の医療機関でご受診される場合は窓口での負担はございません。なお、ご希望の医療機関でご受診いただくこともできますが、その際は、一時的にご本人様でお立て替えいただき、領収書を添付のうえ、ご入社後に経費精算をお願いいたします。
※健診内容については後述の項目をご確認ください。

健診内容
労働安全衛生規則に定められた法定項目

既往歴及び業務歴の調査

自覚症状及び他覚症状の有無の検査

身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

胸部エックス線検査及び喀痰検査

血圧の測定

貧血検査(血色素量、赤血球数)

肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)

血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

血糖検査

尿検査(尿中の糖、蛋白の有無の検査)

心電図検査

過去の健康診断結果について
入社前3ヶ月以内に上記項目をすべて含む健康診断を受診されている場合、その結果をご提出いただくことで、今回の健康診断を省略することができます。該当される方は、[担当者氏名]までご相談ください。

提出書類
健康診断の結果通知はご本人様に送付されます。内容をご覧になったうえで、健康診断の結果報告書(原本)をご提出ください。

その他
ご不明な点がございましたら、人事部 [担当者氏名](電話番号:XXX-XXXX-XXXX)までお気軽にお問い合わせください。

以上

4. 健診の実施日

健診機関に委託している場合でも、担当者として把握・対応すべき業務があります。特にイレギュラー対応(遅刻・欠勤、事故など)への備えが重要です。

欠席者・遅刻者への対応:

欠席理由の確認(体調不良、業務都合など)

健診機関と連携し、再受診の手配

無断欠席の場合、本人と上司への確認・報告

体調不良者が出た場合:

軽度の場合:健診機関スタッフと連携し、安静場所の確保

重度の場合:救急対応(救急車の手配、家族・上司への連絡)

検査上の手違いに対応:

開始時間の違い、検査項目違いなどについて本人からの申告に対応し、健診機関と協議対応

5. 事後措置・データ管理

健診結果を医療機関から受け取ります。

産業医と連携し、有所見者への再検査勧奨や、就業上の措置が必要な従業員への対応を行います。

健診結果を安全に管理し、法令に基づき保存します。

全体の振り返り(次年度への改善点)

労働安全衛生法との関係

健康診断は、単なる福利厚生ではなく、労働安全衛生法に基づき事業者に実施義務が課せられています。担当者は以下の点を押さえておく必要があります。

実施義務: 事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、従業員に健康診断を受けさせる義務があります。

費用負担: 健康診断の実施義務は事業者に課せられているため、その費用は事業者が負担すべきものとされています。

就業時間中の受診: 労働安全衛生法に定めがある健康診断については、その受診を就業時間中に行うことが望ましく、その時間に対する賃金は支払われるべきとされています。

労働安全衛生法および関連規則には、様々な健康診断が定められています。それぞれの特徴と注意点を理解し、適切な対応を心がけましょう。

まとめ

健康診断は、従業員の健康を守るだけでなく、企業のリスク管理としても非常に重要です。法令を遵守し、計画的かつスムーズに実施するとともに、産業医と密に連携することで、従業員と企業の双方にとって有益な結果をもたらすことができます。この記事が、健康診断担当者の皆様の一助となれば幸いです。


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